今回解説していく通貨はトルコリラ円です。5月末に実施されたトルコ大統領選挙の決選投票では現職のエルドアン大統領が勝利。エルドアン大統領の施政下で「インフレ状況での利下げ」状態が続くと思われていましたが、大統領は6月に入って金融政策の方針転換を容認しました。
新たにトルコ中央銀行総裁に就任したエルカン氏は6月会合で政策金利を8.50%から15.00%へと引き上げました。トルコの金融政策を巡る情勢は目まぐるしく変化しましたが、チャート上でもトルコリラ円の状況を確認していきましょう。
トルコリラ円の週足分析
下図のチャートはトルコリラ円の週足チャートになります。前回の分析(5月17日)からどのように推移したかを見ていきますと、今年に入ってからサポートとなっていた6.70円付近(チャート上の黄色実線)をブレイクしたことで売りが加速。2021年12月に記録した過去最安値の6.17円を下抜けて、足もとでは5.10円台まで下げ幅を拡大しています(18日執筆時点)。
今回はチャート下部に「DMI」を追加しましたが、DMIで見ても現状では-DIの数値が急上昇。+DIを大幅に上回っている状態です。さらにトレンドの強さを表すADXも急上昇しており、DMIからも「強い下降トレンド」であることがうかがえます。
トルコリラ円の日足分析
今度は日足でも見ていきます(下図のチャート)。現在は5月末からスタートした下落局面にあり、今後はさらに下値を探る展開となる可能性も高そうです。一方で戻りは鈍く、現在の下落基調の調整もしくは反転を迎えるには最低でも6月27日高値の5.61円付近(チャート上の青色点線)、欲を言えば6月20日高値の6.05円付近(チャート上の青色実線)は上回りたいところ。それまでは戻り売り姿勢で臨むべきでしょう。
さて、ここまでは足もとの相場状況に基づいて売り方針の話をしてきましたが、今後のリスクについても触れておきましょう。
対円で年初から下落率が25%近くに達し、アルゼンチン・ペソに次いで主要国の中でも売りが目立つ通貨となっている「トルコリラ」ですが、もちろんいつまでも下落が続くわけではありません。記憶に新しい2021年の急変動時(チャート上の丸で囲った部分)には12月20日に6.17円の過去最安値をつけた後、わずか4日後の23日には一時11.20円付近まで急反発。80%超の急変動(ドル円で言えば110円超の計算)を記録しました。
現在のトルコリラ円の状況を見ると、2021年時のような「セリングクライマックス」が起きているわけではないですが、上記のような急変動が起こり得る通貨ということは常に頭に入れておきたいところです。
今後のイベントは
最後に今後1か月間の重要イベントも確認しておきます。注目は7月20日に予定されているトルコ中銀の金融政策。市場では現行の15.00%から18.00%への利上げが予想されていますが、前回の会合では利上げ幅が期待ほどではなかったとして、利上げ後にトルコリラが売りに押されました。今回も利上げ幅とそれに対する市場の反応に注目です。
また、市場では日銀がイールドカーブ・コントロール(YCC)の修正に動くのではないかとの思惑も根強く残っており、7月27-28日の日銀会合にも注意しておきましょう。その他のイベントは以下の通りとなります。
今後1カ月の重要イベント
7月20日 トルコ トルコ中銀、政策金利発表
7月21日 日本 6月全国消費者物価指数(CPI)
7月27-28日 日本 日銀金融政策決定会合(28日の会合後には植田総裁の記者会見)
8月3日 トルコ 7月CPI
8月18日 日本 7月全国CPI