前回まで非時系のテクニカル指標について解説してきましたが、今回からは趣向を変えて主要国のイベント・経済指標などに目を向けていきたいと思います。チャート分析でイベント・経済指標に触れることは少し趣旨が違うかもしれませんが、把握しているとトレードに役立つことも多いはずです。
知っていれば避けられるリスク
なぜ今回、イベント・経済指標について述べていくかと言いますと、チャート分析を主体にしたトレードにおいて、これらの要素は「邪魔者」だからです。ということであれば無視したくなりますが、残念ながら一部のイベント・経済指標が相場の与える影響力は大きく、初回の内容でも触れたとおり、チャート分析のそれを軽く凌駕します。
テクニカル上では上昇だと予想していても、指標の結果次第で相場が急落・・・といったケースは為替市場でもよくあること。そのため重要なイベント・経済指標については最低限理解しておく必要があります。チャート分析を基にトレードをしていたとしても、重要指標などの前にはしっかりとリスクヘッジをしておきましょう。
米国で重要なイベント・指標とは
最初に解説する国はやはり米国です。ドル絡みの取引には当然大きな影響を与えますし、ドル円などを通じてクロス円にも影響を及ぼすことが多いため、為替取引をする上で米国を無視することはできません。以下、米国の重要なイベントや経済指標について簡単に紹介します。
・米連邦公開市場委員会(FOMC)
米国の中央銀行に当たる米連邦準備理事会(FRB)が開催している金融政策決定会合です。世界経済全体に影響を及ぼすため、市場の注目度も当然ながら特Aクラス。6週間に1回、年8回開催されます。FOMCの結果公表後にはFRB議長の記者会見もあり、こちらにも注意する必要があります。日本時間で深夜3時(米国の冬時間には4時)に結果が出るため、当日はその前にリスク管理を徹底しておきたいところです。
・消費者物価指数(CPI)、雇用統計、個人消費支出(PCE)デフレーター
FRBの責務は「雇用の最大化と物価の安定」となっているため、FRBが注視しているこれらの指標は金融政策に与える影響が大きく、数多くの米経済指標の中でも特に重要視されています。基本的には雇用統計が月の初旬、CPIが中旬、PCEデフレーターが月末に発表されます。
なお、経済指標全般に言えることですが、前回から伸びが加速・減速しているか、市場予想から上・下振れたかなどが注目され、予想との乖離が大きいほど発表後の相場変動も大きくなる傾向があります。
・その他の経済指標やイベント、要人発言など
その他では国内総生産(GDP)やFOMC議事要旨なども注目度の高い指標です。また、他の指標についても注目度が高まるケースがあります。例えば現在ですと、世界的にインフレが高進している影響から通常よりも物価関連統計に注目が集まりやすくなっています。これらはその都度注目度が変化するため一概には言えません。
また、FRB当局者の発言も注目ポイントです。パウエルFRB議長は別格として、FRBを構成する全米12地区の地区連銀総裁の発言に相場が反応することもあります。同じ地区連銀総裁でもその年のFOMCで投票権を有しているかなどで注目度が変わりますが、ここでは割愛します。興味がある方は調べてみて下さい。
がんじがらめにならないように
とはいえ、これらの指標や要人発言などを全て警戒するとほぼ毎日のように注意せざるを得なくなります。それで身動きが取れなくなってしまっては本末転倒というもの。ある程度までの指標やイベント、要人発言などは許容すべきリスク要因として扱う方が無難でしょう。
ただ、前述した「FOMC」「CPI」「雇用統計」「PCEデフレーター」「FRB議長発言」の予定だけは、テクニカル主体のトレードでも常にチェックしておくべきです。