英30年債利回り、27年ぶりの高水準
今週、英30年債利回りは一時5.7%台と1998年以来と27年ぶりの高水準となりました。英財政の継続性に対して市場が警告を発した格好となりました。英債利回りの上昇を急上昇を受けて、ポンドも一時急落しました。
英国の30年債利回りは先進7カ国(G7)の中で最も高いです。これは英国の高いインフレ率や多額の借り入れ、経済成長の鈍化に対する懸念を反映しています。リーブス英財務相は財政目標の達成軌道を維持するために秋の予算で増税を行うと見込まれており、経済成長の加速を一段と難しくする可能性が警戒されています。秋の秋季予算案まで屡々英政府の財政問題が話題に上がりそうです。
英国の財政赤字
英国では膨張する社会保障費が財政を圧迫しています。同国では高齢化のみならず、現役世代の長期療養者の増加も社会問題になっています。財政赤字の抑制に向けて歳出削減が必要であるにもかかわらず、スターマー政権は冬季暖房費と障がい者向けの個別自立給付(PIP)の削減方針を撤回しました。こうした歳出圧力の強まりで、金利高騰リスクが警戒されています。
7月初旬にも財政規律派のリーブス財務相の辞任観測が浮上すると、英国の長期金利は急騰しました。政府の利払い負担は22年以降高水準で推移しており、金利の高騰が利払い費の増加を通じ、さらなる財政悪化につながるリスクがあります。
リーブス財務相、鎮静図る
英国市場を財政問題が再び揺るがしている中、リーブス財務相は自ら設定した財政規則を守ると強調し、市場の鎮静を図りました。同氏は「財政規則に交渉の余地はない。これを通じて日々の支出を厳しく管理し、インフレと借り入れコストを抑制する必要がある」と主張しました。
国債利回りの上昇は政府の国債の利払いにかかる費用がいっそう膨らみ、リーブス財務相の限られた財政余地を一段と圧迫し、政治的に厳しい判断をさらに困難にすることを意味します。利払い費用だけでも、前回の財政発表があった3月以降で80億ポンドの追加負担が生じています。
英財務省は3日、11月26日にリーブス財務相が来年度予算を明らかにすると発表しました。リーブス氏は最大510億ポンドの財政不足を埋め合わせ、100億ポンド弱でしかない財政的な余裕を回復するため、増税か支出削減を迫られると見込まれています。
英国市場には、2022年に当時のトラス首相が打ち出した「ミニ予算」をきっかけに発生した危機の記憶がなお強く残っています。これ以降、金融市場は財政政策に強力な拒否権を持つようになりました。
リーブス氏にとってのリスクは、市場の信頼を維持するための行動が英国を財政の悪循環に陥らせる可能性が警戒されていることです。増税が需要と成長を抑制し、それによって税収が減り市場の不安が強まって、一段と厳しい財政引き締めを強いられる可能性があります。市場が懸念しているのは、財政不足を埋められるかだけではなく、それが成長を犠牲にして達成され、悪循環に陥る恐れがあることです。
ベイリーBOE総裁
秋季財政報告を控え英国の財政状態に厳しい視線が注がれる中、英長期債が「やや注目され過ぎている危険」があると述べました。また、年内の追加利下げには疑いを投げ掛け、今後数回の会合での追加利下げをほとんど見込んでいない市場の見方に事実上賛同しました。「追加的な措置をとり得る正確な時期とペースを巡り、今や疑いがかなり強まった」と同氏は述べ、追加利下げを急ぐことに慎重な姿勢を示唆しました。