FRBは利下げ再開
今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で米連邦準備理事会(FRB)は利下げサイクルを再開し、政策金利を0.25%引き下げ4.00-4.25%にしました。利下げは昨年12月以来となります。インフレよりも労働市場の弱さへの懸念を強めた結果となりました。
政策スタンスと予測の修正
FOMCの声明文では「雇用への下振れリスクが高まっている」と強調され、インフレについては「やや高水準」との表現にとどまりました。こうした労働市場への懸念が9月の利下げを促しただけでなく、FRBの政策見通しにも影響を与えました。
FRBの中央値予測では、2025年末までに今回を含め合計0.75%の利下げが見込まれており、10月12月にそれぞれ0.25%の追加利下げが示唆されています。中央値はわずかに下方修正されましたが、9人のFRB関係者は今年の利下げ幅が0.75%未満であることを支持しています。このような金利経路の下方修正は、FRBが労働市場リスクを中立金利への迅速な回帰を正当化する要因と見なしている一方で、経済状況はまだ緩和的な政策スタンスへの移行を必要とするほどには悪化していないことを示唆しています。
パウエル議長は慎重な姿勢
パウエルFRB議長はFOMC後の会見で、利下げは「リスク管理」の一環であり、0.50%の利下げについては本格的な議論は行わなかったと述べました。同時に、FRBが背負う2つの責務(雇用の最大化と物価の安定)へのコミットメントを強調し、労働市場の下振れリスクが高まっていることを認めました。今回の利下げは「中立への一歩」と位置づけし、労働市場の活動が縮小し始めた場合にはFRBには対応余地が十分にあると述べました。
市場とFRB、見通しにかい離
今回のFOMCでの利下げ決定は市場予想通りであり、市場の反応は当初穏やかでしたが、米長期金利は徐々に上昇しました。会合前から先物市場では年内に2回の0.25%利下げが高い確率で織り込まれていました。FRBの中立金利への長期的な道筋もすでに市場に織り込まれており、投資家は労働市場の悪化に対する政策対応を予想していました。
FRBは2026年・2027年はそれぞれ0.25%ずつの利下げ予想を示しています。2026年以降の利下げペースが緩やかである背景には、2026年を中心とした景気・雇用見通しの改善方向への修正に加え、2026年のインフレ率の上方修正にあります。FOMCとしては、足元の雇用環境の下振れリスクを考慮して当面は利下げを実施するが、関税によるインフレ率への影響が後ずれし得ることを意識しながら、2026年は漸進的なペースで利下げを行うとしています。
市場は2025年の利下げ幅はFOMC参加者と一致しているが、2026年は合計0.75%とかい離しています。この背景には、2026年のFOMC参加者の構成がより利下げに親和的なメンバーへと変化することを想定している可能性があります。利下げを要求するトランプ米大統領の圧力が増す中で、市場としては2026年以降も複数回の利下げを織り込まざるを得ないとも考えられます。
また、FOMC 参加者のインフレに対する警戒感の根強さが挙げられます。今回の FOMC 参加者のインフレ見通しで、2026 年の PCE 価格指数およびコア PCE 価格指数が前回(6 月)から上方修正されました。FOMC としては、足元の雇用環境の下振れリスクを考慮し、当面は利下げを実施するが、関税によるインフレ率への影響が後ずれし得ることを意識しながら2026 年は漸進的なペースでの利下げが妥当と予想しています。
市場と FOMC 参加者の間の想定の乖離は、「FRB と闘うな」という格言にもあるように、一般的には市場の想定が FOMC の見通しに収斂することが多いです。ただ、トランプリスクを背景に市場は依然として2026 年以降も複数回の利下げを見込んでいます。