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第196回 日銀6月会合、利上げ実施か

日銀の6月利上げ織り込みは7割超

6月15-16日に予定されている日銀の金融政策決定会合で0.25%の利上げを行うとの見方は依然として7割を超えています。ただ、中東情勢や景気下振れリスクから「7月以降に先送り」の見方も残っています。

 

日銀6月会合、過半数が利上げ支持か

日銀4月会合では、政策金利の据え置きが決定されたが、中川氏と高田氏、田村氏の3人の審議委員が政策金利を現行の0.75%程度から1.0%程度へ引き上げることを主張しました。6月会合ではこの3人が引き続き利上げを主張し、増氏と小枝氏が利上げ支持に回り、政策委員9名のうち、5名が利上げを支持する「5対4」の構図が成立する可能性があります。

 

増審議委員は5月14日に景気の下振れの兆しが表れなければ「できる限り早い段階での利上げが望ましい」と述べ、小枝審議委員は5月21日に「適切なペースで引き上げ、物価高に対応することが適切だ」と発言しています。

 

ただ、必ずしも6月利上げが「既定路線」とは言い難く、政策判断を見極めるうえでは6月3日の植田総裁による共同通信主催イベントでの講演が最初の試金石となりそうです。

 

植田日銀総裁は利上げになお慎重

植田日銀総裁は最近の発言でも、日銀が利上げを急がなくても基調的な物価上昇率はなお安定した状況にあることから、物価上昇率の過度な上振れを容認してしまうことにはならないとの見解を示しています。また、原油価格の高騰のみを受けて利上げを判断してはいけないとの考えも明らかにしました。原油価格高騰などの供給ショックに対して様子見が妥当との考えを持っているようです。

 

植田日銀総裁が6月会合で「利上げ見送り」の議長案を提出しても、9人の政策委員のうち5人の審議委員が利上げに賛成した場合、その見送り案への賛成は総裁、副総裁などの執行部と他の1人の審議委員にとどまり、多数決で利上げが決まり、初めて非執行部主導で利上げが決まる可能性もあります。

 

米財務長官と高市首相

ベッセント米財務長官は5月19日のG7財務相会議の場で植田日銀総裁と会談した後、「必要なことを行う余地が与えられれば、植田総裁は優れた金融政策を実現できると確信する」と述べ、「日本経済ファンダメンタルズは強固、過度な通貨変動は望ましくない」と、従来通り日銀に利上げを促す見解を表明しました。

 

一方、「追加利上げに難色」との見方が強い高市首相は円安が進む状況の中で考えを変えたかは定かではありません。高市政権は3.1兆円規模の補正予算の編成を進めており、市場はこれをインフレ悪化につながる財政拡張と捉えているかのように、国債利回りが急伸しました。金利上昇のスピードをこれ以上加速させたくないという思いも強い高市首相が日銀の利上げ姿勢を黙認するかどうかもポイントとなります。

 

日銀が利上げに踏み切っても、ドル円の下押しは限定か

4月の米消費者物価指数(CPI)は前年比+3.8%と2023年5月以来の強い伸びとなり、同コアCPIは+2.8%と前月から伸びが加速しました。また、4月卸売物価指数(PPI)は前年比+6.0%と2022年12月以来の高い伸びを記録し、4月のPCEデフレーターも前年比+3.8%と前月の+3.5%から伸びが加速しています。

 

物価上振れを受け、ウォーシュ新FRB議長は就任宣誓でインフレ抑制への強い意欲を明示し、トランプ大統領自身も「利下げ圧力はかけない」と発言しました。米利上げ観測が台頭し、日銀が6月会合で利上げに踏み切っても日米の金利差縮小期待は高まらず、ドル円の底堅い動きが続きそうです。

この連載の一覧
第196回 日銀6月会合、利上げ実施か
第195回 ドルの基軸通貨の地位、揺るがないか
第194回 米中首脳会談、無難で終了
第193回 円買い介入も円売りポジションの解消進まず
第192回 加ドル、USMCAの見直しも重要なイベント
第191回 弱いのは日本、それとも円?
第190回 原油高・ユーロ安
第189回 ドル円は160円台回復、今後は?
第188回 イラン戦争、中国への影響
第187回 スイスフラン、なぜ強い
第186回 中東情勢に主要通貨の反応
第185回 経常収支の黒字は過去最大も、円安続く
第184回 中国・全人代、3月5日に開幕
第183回 ドル円、ドルの信認低下も重し
第182回 トランプ関税圧力と加ドル
第181回 円相場のカギは日本国債
第180回 2026年世界10大リスク-米調査会社
第179回 25年の中国貿易黒字、初の1兆ドル超え
第178回 金の台頭、ドルの支配に影響
第177回 人民元は堅調
第176回 FRB、来年の政策運営はなお不透明
第175回 円安、結局は再び介入との勝負か
第174回 円安、メリットとデメリット
第173回 実質為替レート 1ドル=270円
第172回 インフレと円安
第171回 予算案控え、慌ただしい英政府
第170回 トランプ氏、米中をG2と表現
第169回 ヘッジファンド資産、過去最高
第168回 通貨スワップ協定
第167回 カナダ経済は厳しい
第166回 自動売買のメリット・デメリット
第165回 FX活用の為替ヘッジ
第164回 利下げ再開、米経済は?
第163回 市場とFRB、来年以降の見通しにかい離
第162回 自民党総裁選と金融市場
第161回 英国の財政懸念
第160回 FRB理事の解任騒動
第159回 11人の次期FRB議長候補
第158回 「基調的な物価上昇率」
第157回 中国の政策金利
第156回 今年後半の米経済
第155回 日米合意、今後のドル円は?
第154回 トランプ氏、人民元の影響拡大の引き立て役になるか
第153回 香港ドル、キャリー取引が活発化
第152回 英国でもトリプル安
第151回 中東リスクに円買いではなくドル買い
第150回 悪いドル安
第149回 FX、マイルールを徹底
第148回 FX詐欺の手口
第147回 信認低下のドル、売り圧力が継続
第146回 半導体を制するものが世界を制する
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第144回 加ドル、米加首脳会談に注目
第143回 日米協議、円安是正に一安心も警戒残る
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第141回 トランプ氏の脅かし、中国には通用しない
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第139回 RBA、追加利下げは5月か
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第137回 ドイツの大規模な財政拡大策
第136回 中国、今年GDP成長目標を5%前後に
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第126回 今年最後の日米金融政策会合
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第118回 元キャリートレードの復活に注意
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第96回 デイトレードの基本は順張り
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第94回 FX、初心者に多い失敗例
第93回 本間宗久が残した相場の極意
第92回 基軸通貨のドル、強い
第91回 外国為替相場制度
第90回 米長期金利とドル円
第89回 RBNZ政策金利とNZドル円
第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
第87回 日本、「金利のある世界」に向かう
第86回 豪中銀と政策金利
第85回 トランプ氏の再選リスク
第84回 加中銀とその金融政策
第83回 英中銀とMPC
第82回 ECBと理事会
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第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
第77回 ドル円 ゆく年くる年(2)
第76回 ドル円 ゆく年くる年(1)
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第74回 ユーロ圏、厳しい財政ルール
第73回 米国の双子の赤字、ドル相場への影響は?
第72回 日本の貿易収支
第71回 国際収支と為替(2)
第70回 国際収支と為替(1)
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第68回 FXにも山・谷がある
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為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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