「グンゼ」と「青山商事」は、高配当で株主優待も充実しています。それにもかかわらず、株価が下落しているのはなぜでしょうか。一見お得に見える高配当銘柄でも、株価の動きには必ず理由があります。
今回は、この2銘柄について、最新の配当・優待状況ご紹介するとともに、株価下落の理由を考察します。
グンゼ(3002)
グンゼは、インナーウェアを始めとしたアパレル用品を製造・販売する企業です。また、プラスチックやフッ素樹脂素材、人工真皮などの医療用品や医療用レーザー機器、スポーツクラブの運営、商業施設運営、不動産賃貸、エンジニアリングサービスなど多岐にわたる事業を展開しています。
2025年度の売上高は約1370億円、経常利益は約82億円でした。2026年度は売上高が約1400億円、経常利益は約83億円の予想で、どちらもやや増収・増益となる見込みです。
グンゼの株価と下落理由
2025年8月時点の株価は約3800円です。比較的株価変動が大きく、2006年に約3600円だった株価が、2012年には約1000円まで下落し、2018年には再び約3700円まで上昇しています。2020年に約1700円まで下落して以降は、株価変動を繰り返しながらも、長い目で見ると上昇傾向が続いています。
2012年の株価下落は、東日本大震災や工場があるタイの洪水被害などから、業績が大幅悪化したことが原因だと考えられます。2026年度は、業績低迷中のアパレル事業から4工場が閉鎖されることが決定しています。今後の業績次第では、再び株価下落の可能性も考えられるかもしれません。
株主優待はいつもらえる?
グンゼの株主優待は、毎年3月末と9月末の権利確定日に、100株以上の株式を保有する株主に対して、株式の保有数および保有年数に応じて贈呈されます。贈呈される株主優待の内容は、30%割引カタログおよび希望の製品もしくは各種サービスです。
3月末の権利確定日にもらえる株主優待は、5月下旬頃に30%割引カタログが送付されます。9月末の権利確定日にもらえる株主優待は、11月中旬頃に30%割引カタログと希望の製品もしくはサービスを選択する申し込み案内が送付されます。
株式の保有数および保有年数に応じて贈呈される株主優待の内容は、下記の一覧表をご確認ください。
配当金は連続増配中
2026年度の配当金は、3月末の期末配当にて、年間1株当たり216円となる予想です。この金額は、2021年度の57.5円、2022年度の70円、2023年度の73.5円、2024年度の76.5円、2025年度の195円から5期連続で増配しています。
グンゼの利回り
1株3800円で100株購入した場合、投資金額は38万円になります。配当金額は21600円のため、配当利回りは約5.7%です。
また、初年度は1000円相当の株主優待が贈呈されるため、優待利回りは約0.3%、配当と優待を合わせた利回りは約5.9%になります。株式の保有数および保有年数に応じた配当と優待を合わせた利回りの一覧は、下記の表をご参考ください。
なお、各年度の平均株価から算出した配当利回りの実績は、2022年度は約3.3%、2023年度は約3.7%、2024年度は約3.2%、2025年度は7.3%でした。2025年度以降、利回りが大幅に上がっています。
青山商事(8219)
青山商事は、ビジネスウェア専門店「洋服の青山」、「ザ・スーツカンパニー」などのブランドを展開する企業です。全国に700店舗以上を構えるビジネスウェア専門店の運営以外にも、オーダースーツの販売や自社クレジットカードの発行、雑貨販売、衣類の修理サービス、不動産管理・運営など様々な事業を行っています。
2025年度の売上高は約1950億円、経常利益は約126億円でした。2026年度は売上高が約2000億円、経常利益は約140億円の予想で、どちらもやや増収・増益となる見込みです。
青山商事の株価と下落理由
2025年8月時点の株価は約2400円です。2018年に約5000円の高値がついていた株価は、2020年には約500円まで下落しました。クールビズやオフィスカジュアルなど、仕事服のカジュアル化が進んだことと、新型コロナウイルスの影響で在宅ワークが増えたことが原因で、業績が大幅に悪化したことが株価下落の原因だと考えられます。
しかし、2024年11月に、業績が回復傾向にあることと、配当金の大幅値上げが発表されたことにより、株価が約2300円まで急騰しました。現在は約2300円前後を横ばいで推移しています。
株主優待はいつもらえる?
青山商事の株主優待は、毎年3月末と9月末の権利確定日に、100株以上の株式を保有する株主に対して、株式の保有数に応じて贈呈されます。贈呈される株主優待の内容は、20%割引券です。
3月末の権利確定日にもらえる株主優待は、7月上旬頃に郵送され、翌年6月末まで利用できます。9月末の権利確定日にもらえる株主優待は、12月上旬頃に郵送され、有効期限は翌年12月末までです。
割引券は店舗でのみ利用可能で、オンラインショップおよびアウトレット店では利用できません。株式の保有数に応じて贈呈される株主優待の内容は、下記の一覧表をご確認ください。
配当金は年2回もらえる
2026年度の配当金は、9月末の中間配当で55円、3月末の期末配当で81円の、年間1株当たり136円となる予想です。この金額は、2021年度の無配当、2022年度の8円、2023年度の26円、2024年度の65円、2025年度の134円から5期連続で増配しています。
2025年度に配当方針が変更され、配当金が大幅増額されています。
青山商事の利回り
1株2400円で100株購入した場合、投資金額は24万円になります。配当金額は13600円のため、配当利回りは約5.7%です。なお、各年度の平均株価から算出した配当利回りの実績は、2022年度は約1.1%、2023年度は約2.9%、2024年度は約4.5%、2025年度は7.8%でした。
まとめ
グンゼはアパレル事業の縮小や工場閉鎖が、青山商事はコロナ禍とビジネスウェア市場の縮小が、それぞれ株価下落の原因でした。しかし、グンゼは連続増配と優待の安定感、青山商事は業績回復と高配当から株価は回復傾向にあります。
それぞれメリットとデメリットにはっきりとした特徴があります。この記事が、それらを把握した上で、投資先として検討するきっかけとなれば幸いです。