「片山財務相」就任で円安がけん制されるとの見方もありました。しかし実際には円売り方向の動きが進み、ドル円は一時152円台を回復。「片山財務相」の円高・円安のどちらにも特段偏らない現状の姿勢は、安定成長への期待を高めそうです。
「片山財務相」警戒された円買い進まず
21日、新たに発足する高市政権で、女性初の財務相として片山さつき氏が起用されることが明らかとなりました。片山氏は3月時点のインタビューで「ドル円は120円台が実力との見方が多い」と述べていたため、足もとの円安に調整が入るとの警戒感も浮上しました。
ただ、「片山財務相」就任が固まったとの報道が流れた直後の円買いは、150円後半から150円半ばへ下押す程度の軽微なものにとどまっています。その後は円安方向へ向かい、海外市場で1週間ぶりに152円台を回復する動きとなりました(図表参照)。
旧大蔵省(現財務省)出身で財政のプロとされる片山氏の起用により、高市政権が効率的に財政支出を進めることができるとの思惑もあって、早々に円安方向へ戻した格好です。片山氏は同日のインタビューのなかでは「為替動向への具体的コメントは控える」としており、現時点では円高志向を改めて強く訴えるような姿勢は見受けられません。
「片山財務相」として発言は、市場の安定を意識した慎重な内容に徹しているイメージです。その後、為替には調整の円買い戻しも入りましたが、現時点では円安地合いが大きく巻き戻されるような展開になっていません。
日銀金融政策に対しては現状ニュートラル
また、日銀の金融政策正常化(現局面では利上げ)については、日銀が十分に金融緩和的な状況が保たれていると認識しているなかでの正常化をけん制するような姿勢は示していません。片山氏はインタビュー内で「日銀の金融政策、上げ下げについて申し上げることはない」と述べています。
結果として、「片山財務相」就任は為替を円高・円安のどちらにも急激に振れさすような材料にはなっていません。高市政権にとっても、為替の安定は経済政策を着実に進めるための支えとなるでしょう。
「円安けん制」よりも「安定成長」へ。財務のプロとして現実を見据える「片山財務相」の登場は、政策の継続性と信頼性を重視するマーケットにとって好材料となりそうです。積極財政派ではないですが、無制限な支出ではなく、政策効果を見極めながら重点的に投じる「現実的な財政活用」を志向すると考えられます。
「片山財務相」のバランス感覚はマーケットに安心を与えることになるでしょう。着実な歩みは、いまの日本経済・金融マーケットにもっとも必要とされているものといえます。