「次期政権下の日銀」の金融政策に関しては、高市氏なら利上げが難しく円安、小泉氏なら利上げ路線継続で円高といわれています。しかしそれぞれの思い描く政策を進めていくことに現況では難しさもあります。政権成立後の当初のマーケットの反応に巻き戻しが入るリスクも念頭に置いて臨んだほうがよいかもしれません。
「次期政権下の日銀」にらみ円上下
米現地17日の連邦公開市場委員会(FOMC)結果発表を前にドル円は147円台から146円台へ下振れる動きとなりました(図表参照委)。ただ、FOMCは25bp(ベーシスポイント、1bp=0.01%)の利下げを織り込んだ状態であり予想通りの結果なら、ドル円は結果公表直後に多少振れたとしても次第に動きを落ち着かせそうです。

次の焦点は週末19日結果が公表となる日銀の金融政策の行方となりそうです。ただ、こちらは政策金利の据え置きが予想されており、結果自体への反応は限られるかもしれません。
より金融マーケットの関心を引きそうなのは、石破首相の退陣を受けた「次期政権下の日銀」の金融政策のかじ取りでしょう。自民党総裁選の有力候補である高市早苗前経済安全保障担当相と小泉進次郎農林水産相、どちらかが政権を担うことになった場合の金融政策の動向が主要な焦点となっています。
「高市→円安」「小泉→円高」実行力も決め手
昨年9月の前回総裁選において高市氏は「金利をいま上げるのはアホ」などと発言したインパクトもあり、高市政権下で日銀は利上げへ動きにくくなるとの見方。一方で小泉氏については「現政権の考えを引き継いで利上げを支持する可能性」との声が聞かれます。
この見解を反映して先週末12日には、世論調査で高市氏がリードしているとの報道を受けてドル円は148円台へ浮上。一方で小泉氏が立候補を表明すると146円台へ反落する動きになりました。
これは前回総裁選で高市氏が総裁選1度目の投票で1位に立つとドル円146円半ばまで円安に振れたものの、決選投票で石破氏が勝利すると142円付近へ反落した動きを彷彿とさせます。今回の総裁選も高市氏勝利で円安、小泉氏が勝利すれば円高との反応が先行するかもしれません。
小泉氏については、選挙対策本部長に加藤勝信財務相が就いたこともマーケットの注目を集めたようです。財政健全化を志向する政権を意識させ、財政悪化が回避されやすいとして円が買われた側面が多分にあったようです。
ただ、高市氏が「金利をいま上げるのはアホ」発言を行った1年前とはインフレの進み具合やインフレに対する国民の警戒感も変化しています。高市氏が利上げに否定的な姿勢を変わらず維持するのか不透明感があります。
先週9日に伝わった「日銀は国内政治情勢が混乱する中でも、年内利上げの可能性を排除しない」との報道で、高市政権の円安への期待が巻き戻される場面もありました。また、小泉政権となった場合の財政健全化に関しても、景気に相当程度の配慮をしつつ財政を立て直す難しさがあり、当初の目論見が当てにならないリスクがあります。
それぞれ目指す方向性があっても思った通りの運営が行えず、巻き戻しが入る展開を視野に入れて臨むべきでしょう。円相場や金融政策の思惑に影響するのは当初の方向性だけでなく、政局運営の実行力がより大きな焦点になる可能性が高いといえます。



