10月4日の自民党総裁選で高市早苗氏が勝利したことを受け、市場では新たな相場現象「高市トレード」が注目を集めています。この「高市トレード」とは、高市氏の政策期待を背景に、株高・円安・金利上昇が同時に進行する動きのことを指します。政策期待が先行して投資家心理を動かす特徴があり、短期的には資産効果を押し上げる一方で、行き過ぎた円安や物価上昇のリスクが意識される局面もあります。
高市新総裁誕生に伴う市場のうねり
高市氏は総裁選で「責任ある積極財政の推進」を掲げ、成長投資や危機管理への財政支出の拡大を重視しています。赤字国債の増発可能性にも触れ、政策実行力を重視する姿勢を示しました。金融政策については、政府主導での方向性決定を主張し、日銀の引き締め的政策には牽制を加える可能性を示唆しています。このため、金融市場では「自民党の高市早苗新総裁が志向する積極財政や金融緩和を背景とした財政悪化懸念や日銀の早期利上げ観測後退を手掛かりに、この日も円売りが出やすい地合い」との見方が広がりました。
これらの政策期待が投資家心理を押し上げ、日経平均株価は総裁選後に48000円台まで急伸しました(図表1)。海外株式市場でも、AI関連株を中心に成長分野への投資が活発化し、日経平均の堅調な推移を支えています。「高市トレード」は、こうした国内外の投資マインドの変化を反映する現象として位置付けられます。
株高とともに円安も進行
株高の勢いは円相場にも波及しました。ドル円は先週末の147円半ばから、週明けには149円台へ上昇、さらに150円半ば、7日には152円台、8日には153円台まで値を伸ばす局面も見られました(図表2)。「高市トレード」の下で、短期的な円売りが出やすくなっています。
ただし、米政府機関の閉鎖懸念や政策内容次第では、円安期待が修正される可能性も残ります。高市内閣がガソリン税暫定税率の廃止に動く可能性や、消費税減税への慎重姿勢、物価上昇への対応など、日銀の利上げに対する抑制力も以前ほど単純ではなくなっており、今後の円相場には注意が必要です。
「高市トレード」は総裁就任を契機に政策期待が株高を押し上げ、円安を誘発する新たな市場現象として注目されています。短期的には資産効果を高める方向で作用しますが、行き過ぎた円安や金利・物価の動きに対する調整リスクも存在するため、総裁就任後の政策動向、日米の金融政策、海外投資家の動向が株価と為替のバランスを決める最大のポイントとなりそうです。