暗号資産ウォッチャー これに注目!

第39回「当局の圧力にも負けず、BTC買い衰えず」

BTC 買いの勢い衰えず

 

代表的な暗号資産であるビットコイン(BTC)は29日21時時点、対ドルでは2万8300ドル台、対円で374万円付近と前週比では0.6%程度の上昇率です。

 

BTCドルは27日に2万6500ドル手前、BTC円が350万円付近まで下げたことを考えると、買いの勢いは衰えていないと言えるでしょう。年初来では7割以上の上げ幅を維持しています。



※Trading Viewより、BTC円 15分足


SECからの圧力で一時急落

 

この一週間、米規制当局のおかげでBTCは激しく動きました。まずは米証券取引委員会(SEC)が暗号資産交換業大手のコインベースを提訴する可能性が持ち上がりました。

「SEC、仮想通貨コインベースに訴訟の可能性を警告」ロイター


SECはコインベースのスポット取引や「ステーキングサービス」について、証券法違反の可能性があると申し立てました。「ウェルズ通知(Wells notice)」と言われる警告は、当局による強制措置が講じられる前に渡されます。

 

必ずしも執行措置に繋がるわけではないとされながらも、交換業大手に対するSECの強硬な姿勢に市場は動揺しました。BTCドルは日本時間23日未明には、数時間前につけた高値から8%弱安い、一時2万6700ドル割れまで急落しました。


BOXMININNG サイトより

 

せっかく反発したのに、今度はCFTC

 

コインベースショックは長く続かず、23日夜中にBTCは直近の高値に迫る水準まで大きく切り返しています。再び高まった欧米の金融機関に対する信用不安によりBTCが代替資産として意識され、資金が向かったとの声が聞かれました。

 

もっともその後、27日夜にBTCドルは2万6500ドル手前まで急ピッチで水準を下げています。今度は、米商品先物取引委員会(CFTC)が世界最大の暗号資産交換業バイナンスとその最高経営責任者(CEO)のチャンポン・ジャオ氏を提訴したことが原因でした。

 

※CFTCとは、「Commodity Futures Trading Commission」の略。1974年に設立された政府機関であり、米国の商品取引所に上場された先物やオプション取引全般を監督する役割を持つ。CFTCの管轄にあるシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)はBTCやイーサ(ETH)の先物を上場している。

 

CFTCが提訴した理由は、バイナンスが米国で未登録の暗号資産デリバティブ取引を提供し、故意に米国の法律を回避したからだとされています。

「米CFTC、バイナンスとジャオCEOを提訴」 コインデスク

 

ベナムCFTC委員長は、バイナンスの幹部はルール違反を何年間も把握していたと述べていました。

 

CZ反論も、バイナンスから資金流出

 

バイナンスCEOのチャンポン・ジャオ氏(通称CZ)は提訴に反論しましたが

一部の投資家の信頼は揺らぎ、同社から資金を引き出す動きが加速しました。

 

「米規制当局による提訴後、バイナンスから3400BTCが出金される」コインテレグラフ 

「バイナンス、7日間で約2700億円流出 問題相次ぎ」 ウォール・ストリートジャーナル


※チャンポンジャオ氏、COINBRAINより

 

影響は限定?ポジティブニュースも

 

米規制当局による暗号資産交換業への締め付けでも、ビットコイン(BTC)の下値攻めは限定されました。提訴ニュースから26時間後には反発し始めています。

 

「CFTC、バイナンスにアメリカでの業務停止を求める可能性・・・」コインデスク


こちらにもあるように、バイナンス全体にとって米国での事業はマイナーな存在であり、暗号資産市場にとって重要ではないとの見方があるようです。

 

「米取引所ナスダック、今年第2四半期末までに仮想通貨保管サービスを開始へ=報道」コインテレグラフ 

「中国の国有銀行、香港の仮想通貨企業にサービスを提供か=報道」コインテレグラフ

 

こういった市場全体にはポジティブなニュースも支えになったのかもしれません。

※Trading Viewより


リップルが救世主?!


バイナンス提訴の話でBTCが弱含んでいたとき、逆行高で推移していた主要なアルトコイン(BTC以外の暗号資産)がリップル(XRP)です。以下は29日21時点のステーブルコインを除いた時価総額ベスト8の水準です。

 

※CoinMarketCapより


7d%(7日間の変動率)をみるとXRPの上昇率が圧倒的に高いというのが分かります。急騰したXRPがBTCだけでなく暗号資産全般の救世主だったとの見方もできます。来週はこのXRPについて調べていきたいと考えています。

この連載の一覧
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
第58回「ビットコイン、売り買い材料が交錯 あのトランプ氏も心変わり?」
第57回「リップルにつれ安、8月のビットコインは?そして6カ月後までに・・・」
第56回「ビットコイン、400万円台維持 ネガティブニュースも跳ね返す」
第55回「ビットコイン、ゴールドのように羽ばたけるか ただしETFはもう少し先かも?」
第54回「Simple is Best、相場は単純に考える ところでBTCが上がらない理由は?」
第53回「ビットコイン 円高の影響、分かれたヤツは元気」
第52回「ビットコイン、対円にしました!口座開設はもうお済み?」
第51回「現物ETF 承認への期待大! ただし一旦落ち着く必要も・・・」
第50回「ビットコイン、救世主が出現! 現物ETFへの期待高まる」
第49回「BTCの占有率上昇、ただし市場が盛り上がっているわけでは・・・」
第48回「ビットコイン SECの圧力はちょっと違う、底打ち感も?!」
第47回「ビットコイン 5月は失速、でも今年中には大幅上昇?!」
第46回「ビットコイン 動かず、過去2回はその後に大波」
第45回「G7は規制強化 交換業大手はカナダから日本へ」
第44回「ビットコイン 4カ月連騰、手数料高騰が懸念?」
第43回「ビットコイン 冬は終了?欲張り過ぎには要注意」
第42回「イーサリアム 待ち時間は延びる、BTC 10カ月ぶりの高値をつけるも・・・」
第41回「ビットコイン 約10カ月ぶりの高値、信じる者は・・・」
第40回「リップル 3月は元気いっぱい、裁判の終わりが見えた?!」
第39回「当局の圧力にも負けず、BTC買い衰えず」
第38回「ビットコイン 時価総額はメタ超え、強欲な感じも・・・」
第37回「まるでジェットコースター、ビットコイン 代替資産としての位置づけも」
第36回「ビットコイン とんだ雛祭りに、懸念材料は複数残る?」
第35回「ビットコイン 売り持ちファンドに資金流入、投資家の懸念を反映」
第34回「昨年6月以来の高値更新、ビットコインの上昇要因を探る」
第33回「ビットコイン とばっちり食らう、PoWには関係なし?」
第32回「ビットコイン、2月も底堅い クリスマスまでには?!」
第31回「イーサリアム、マージから4カ月半 伸び代あり?!」
第30回「悪いニュースに反応せず、アノマリーもあったとは」
第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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