暗号資産ウォッチャー これに注目!

第31回「イーサリアム、マージから4カ月半 伸び代あり?!」

ETHの時価総額、仏エルメスに迫る


イーサリアムブロックチェーン上で使われるイーサ(ETH)の時価総額は、2月1日13時時点で約1940億ドル(25兆2200億円、1ドル=130円換算)でした。暗号資産全体のドミナンス(シェア)は18.5%と、42%超の第1位ビットコイン(BTC)に次ぐ位置を保っています。

※CoinMarketCapより



ここでETHの時価総額を主要企業の株式時価総額と比較してみます。この比べ方が正しいかは微妙ではありますが、あくまでもETHの規模を感じるためにということで。


ETHと近いところでは、約1946億ドルと世界の主要株価では第53位の仏エルメスです。10-12月期決算を嫌気されて売られた米マクドナルドは1958億ドル強と第52位。こちらもETH時価総額の目安になるのではないでしょうか。


※webサイト、Largest Companies by Market Capより

 

2月1日の東京午後、ETHは対ドルで1580ドル前後、対円では20万6000円前後で推移しています。2022年は年間で67.5%の下落と散々なETHでしたが、今年の1月は月間で上昇率32.4%と良好なスタートを切りました。このコラムでも何度か使っている暗号資産分析サイトCoinglassでも2月は昨年まで4年連続でプラスですし、このまま期待して良いのかもしれません。



マージ後にバリデーターはどうなった?


イーサリアムは昨年9月、「The Merge(マージ)」という過去最大のアップグレードに成功しました。

【暗号資産よもやま話】第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」


これにより、ブロックチェーン上で「取引の整合性を承認する権利を獲得するため」の合意形成のルール/方法(コンセンサスアルゴリズム)を変更。それまでのProof of Work(プルーフ・オブ・ワーク、以下PoW)」からProof of Stake(プルーフ・オブ・ステーク、以下PoS)」に移行しました。


※PoWやPoSについては前述した第11回分か、コインベースの「プループオブワーク、プルーフオブステーク」とは?やコインデスクの「投資家のためのPoWとPoS入門」などをご参照ください。


※イーサリアムサイト、ステーキングランチパッドより


9月当時、PoSを稼働させるために必要不可欠なvalidator(バリデーター)は42万弱アカウントでした。それが2月1日時点では51万弱まで増えています。ステーキングされているETHも1732万超と9月の1419万ETHから着実に増加中です。実際に循環してるETHのうち14.16%がステーキングされています。もっとも、14%台というのは決して高い数値ではありません。

 

※Validate(バリデート)とは検証/承認するという意味。暗号資産のバリデーターとは、ブロックチェーンに記録されるトランザクションデータに整合性があるかを検証するノード(ネットワークに参加するコンピューター)のこと。

Stake(ステーク)は掛け金や出資金などの意味。ネットワークに暗号資産を預け入れることをステーキングという。


ステーキングの割合、伸び代あり?!


こちらは、Staking Rewards という暗号資産情報サイトに記載さいれているステーキング規模のランキングです。




赤線上の数値が、それぞれの暗号資産内でステーキングされた(預け入れた)割り合いです。他の暗号資産に比べ、イーサリアムの低さが目立ちます。


これは、昨年9月にマージが成功した後でさえも「預け入れたETHや報酬を直ぐに引き出せなかった」どころか、「いつ引き出せるかさえも不透明だった」ことが理由の1つと言われています。イーサリアム・エコシステムへの不信感も募り、ETH価格の弱さにもつながりました。


ただし逆に「伸び代もある」という見方もできそうです。実際、この3月に予定されているアップグレード「上海」が成功すると状況が変わります。次回アップグレードにより、段階的ではありますがステーキングされたETHが引き出し可能になるからです。これにより、システムへの安心感が高まるでしょう。


イーサリアムのステーク出金を可能にするテストネット浙江、2月1日稼働コインテレグラフ

Ethereum Developers To Launch Testnet Supporting Staked ETH Withdrawals The Defiant

(イーサリアム開発、ステーキングされた ETH の引き出しをサポートするテストネットを起動)


上海アップグレードの動向、今後も注目していきたいと思います。

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第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
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第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
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第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
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第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
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為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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