シビアな状況、金融政策に落胆
12月半ば以降、暗号資産は再びシビアな状況となっています。21日11時時点では、暗号資産で代表的なビットコイン(BTC)は対ドルで1万6800ドル台での値動きです。前日には11月末以来の安値となる1万6300ドル割れまで売り込まれる場面がありました。
じつは、日本時間16日未明にかけて買い戻しの勢いが強まる場面があり、一時1万8300ドル台と11月9日以来の高値圏まで上昇。約1カ月続いた抵抗水準を上抜けたか!と思いましたが、テクニカル的に言うところの「騙し(だまし)」に終わっています。なかなかFTX破綻前の水準まで戻すのは大変なようです。
以下は、12月9日から21日までのBTCドルの時間足チャートとNASDAQ100のラインチャートです。
※Trading Viewより
CPIで期待を持たせ、FOMCで失望
上昇のきっかけは↑のチャートに記載している、日本時間13日22時30分に発表された米国の11月消費者物価指数(CPI)です。インフレが想定以上に鈍化していたため、市場では米連邦準備理事会(FRB、中央銀行にあたる)が「利上げペースを減速させるのではないか」という期待に膨らみました。
米金利の先高観が弱まれば、リスク資産にとってはポジティブです。米株の上昇と共に、BTC買いも強まりました。
しかしながら膨らんだ期待はあっさり破裂してしまいます。日本時間15日4時に米連邦公開市場委員会(FOMC、金融政策を決定)が結果を発表。委員たちによる金利見通しが「市場の予想より高かった」ため、再び金利先高観が広まってしまいました。市場にとっては梯子を外された形です。
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が来年以降の利上げ継続を明言したことも、リスク資産にとって重石に。その後、金融政策を発表した欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が今後の利上げに意欲的だったことも欧米株式市場の失望売りを誘いました。
暗号資産の証拠金取引(レバレッジ取引)であれば売りからも入れるため、収益チャンスだったかもしれません。ただ現物(という言葉が暗号資産にとって正しいかは微妙ですが)取引のみの人にとっては、かなり残念な相場となっています。
いずれにせよ、経済規模が世界一の米国の金融政策や金融市場は、暗号資産にとって無視できないことが確認されました。
【暗号資産よもやま話】第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
【暗号資産よもやま話】第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
クジラの軍団、平均購入価格は・・・
ビットコイン(BTC)が大きく動くと、特に下落したときですが、話題にあがる企業があります。米ソフトウェア企業マイクロストラテジ-(Microstrategy)です。というのも、同社は米上場企業のなかでBTC保有規模が最大だからです。前CEOであり、現在は会長職のマイケル・セイラ―氏が「BTCの獲得戦略および支援活動」を推し進めてきました。
「マイケル・セイラー氏がマイクロストラテジーCEOを退任し、会長職に」
マイクロストラテジーは2020年8月からBTCの購入を開始。購入履歴はこちら→「MicroStrategy Bitcoin Holdings Chart & Purchase History」で見ることができます。今年9月20日時点では、なんと13万BTC!を保有しています。
CoinMarketCapによれば、12月21日19時時点でのBTCの流通量(発行枚数)は約1923万9000BTCです。つまりマイクロストラテジーのみで、流通しているBTCの約0.67%を保有していることになります。購入履歴を示すサイトによれば、39.81億ドルが購入に費やされ、13万BTCの平均購入価格は3万623ドルとされています。
【暗号資産よもやま話】第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
↑では、1000BTC以上の大口保有アカウントのことを「Whale、クジラ」、5000BTC以上が「Humpback(Whale)、ザトウクジラ」と呼ばれていることを紹介しました。マイクロストラテジーは1頭分を遥かに超えており、クジラの軍団と言ってよさそうです。
一喜一憂しない、それともできない?
さて、さえない動きが続くBTC市場ですが、マイクロストラテジーの共同創業者でもあるマイケル・セイラー会長から投資家に対してアドバイスがあるようです。
「家を買った場合、毎日の価格を気にするのか?」コインテレグラフジャパン
記事によればセイラー氏は、短期の価格変動で一喜一憂すべきではないと主張。4年以上の時間軸でBTCを考えるべきと述べています。冗談としながらも例えとして、「家を買った場合、毎日その不動産価格を気にするのか?」という考え方も挙げていました。
BTCや他暗号資産の変動率(ボラティリティ)は確かに高く、目先の値動きで大騒ぎするべきではないでしょう。どんな金融相場でも、生き残るには「冷静さ」が必要です。しかしながらマイクロストラテジーに関しては、あまりにもポジションが大きくなりすぎて、一喜一憂さえもできないように見えます。