BTC、地合いの弱いときに…
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は2025年3月5日19時頃、対円では1322万円前後と前週(7日前)比0.6%安で推移しています。BTCドルが8万8300ドル台での値動きです。
2月下旬は暗号資産取引所Bybitの大規模ハッキング(15億ドル相当のイーサリアム関連の流出)で暗号資産の安定性に対して不安感が広がりました。
前回コラム、第135回「ビットコイン、昨年11月以来の安値 過去最大のハッキングが不安を煽る」
暗号資産の地合いの弱さが続いていたなかで株式市場が崩れ、リスク回避の売り圧力がBTC相場にも強まりました。
※地合いとは、市場全体の雰囲気や勢い、心理状態を指す擁護。上昇傾向のときは「地合いが強い(良い)」、下落傾向のときは「地合いが弱い(悪い)」という言い方をします。
2月28日の月末取引で日経平均が大きく売られました。
「日経平均、一時1400円安 米株安・追加関税に懸念広がる」日経新聞
その日の東京昼前からBTCは下げ足を速め、夕方には対円で1180万円、対ドルでは7万8200ドル前後まで売り込まれました。昨年11月前半以来、つまり米大統領選でトランプ氏勝利後の上昇幅を大きく吐き出したことになります。
「ビットコインが最高値から25%超下落、仮想通貨売り加速」Bloomberg
※Trading Viewより
月間マイナス幅は22年以来の大きさに
金融市場に不安定さをもたらしたのは、トランプ米大統領の関税政策です。2月初めに続き、中国製品に追加関税を課す考えが示されました。世界経済の二大国である米中が貿易摩擦を強めることへの警戒感が高まりました。
「XRP、DOGEが10%急落-トランプ大統領の新たな関税が中国市場に打撃」コインデスク
ただ、値ごろ感から月末ニューヨーク株式市場で買い戻しが強まり、BTC相場も2月引けにかけて下げ幅を縮小しました。
※値ごろ感とは、株価が割安であると感じられる状態やその感覚のこと。投資家が株価に対して抱く主観的な評価
ただしBTCは下げ渋ったと言っても、月間では2カ月ぶりにマイナスで終えました。暗号資産分析サイトcoinglassによれば下落率は約17%と、1カ月の下落率としては2022年4月以来の大きさを記録しました。
もっとも主要なアルトコインはBTC以上に下げていました。以下のチャートでは、リップル(XRP)が25%以上、イーサリアム(ETH)は30%近く、そしてソラナ(SOL)は30%以上の月間下落率です。
※Trading Viewより
ソラナ売りが目立ったのは?
2月に目立ったソラナ(SOL)の下落には、複数の要因が絡み合っているようです。
「ソラナ、史上最高値から50%下落 VL減少とミームコイン市場の…」コインテレグラフ(2/26)
「ソラナ、1週間で20%急落 LIBRA事件の…」クリプトニュース(2/27)
「ソラナ(SOL)、2025年最安値から反発…」コインテレグラフ(3/1)
1つにはソラナプラットフォーム上で発行されたミームコイン「LIBRA」事件です。アルゼンチン大統領の言及で急騰したものの、内部関係者の大量売却の疑惑が浮上するとトークン価格が暴落。これによりソラナネットワークへの信頼が大き失われてしまったようです。
※ミームコインとは、インターネットミームやジョークを元に作られた暗号資産。コミュニティの支持や話題性で価格が急騰・暴落しやすい特徴がある。ソラナプラットフォームでは発行が簡単とされている。
もう1つは、2022年11月破綻した暗号資産取引所FTXとその関連会社アラメダ・リサーチが保有していたSOLが関係しています。FTXの破産管財人が保有していた1120万SOLが3月1日にアンロック(取引解除)されることで、市場への供給量過多に対する警戒感が高まっていました。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が3月17日にSOL先物を上場すると発表したことで下げ渋っていますが、足もとでは年初来騰落率は2割以上も下落した水準で推移しています。
※Trading Viewより
暗号資産サミット?!
さて、ビットコインや複数のアルトコインは3月に入り急騰する場面がありました。
きっかけは、ホワイトハウスが今月7日に初の暗号資産サミットを主催すると発表したことです。サミットは人工知能(AI)・暗号資産責任者のサックス氏が主導し、「暗号資産業界の著名な創業者やCEO、投資家、および大統領のデジタル資産作業部会のメンバーが参加する」とされています。
「トランプ大統領の暗号資産サミット、注目ポイントは?」コインテレグラフ
トランプ米大統領はサミット開催の声明が出された後、暗号資産の戦略的準備金について自身のSNSで言及しました。これで対象とされた、XRPやSOL、カルダノ(ADA)、そしてBTCとETHも大きく値を上げる場面がありました。
「ビットコイン、9万4000ドル突破-トランプ大統領が暗号資産準備金を推進」コインデスク(3/3)
ただし暗号資産の準備金について懐疑的な見方もあり、一巡後に上昇幅は縮小しています。
いずれにせよ、まずは暗号資産サミットの行く末を見守ることになりそうです。