暗号資産ウォッチャー これに注目!

第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」

何処にでも送れてしまう、9年前も

 

暗号資産を支えるブロックチェーン・ネットワークの大きな特徴の1つは、政府や中央銀行などの管理者がいないということでしょう。

 

金融機関の介在なしに暗号資産は、24時間の何時でも、国境を超えた何処にでも、どんな金額でも、少ない手数料で送り/受け取ることできます。もちろんインターネットに繋がっており、暗号資産ウォレットを持っていることが条件ですが。

 

ビットコイン(BTC)の送金について約9年前、米国では以下のような出来事がありました。現在ほど暗号資産が世間に認知されていない頃です。

 「One college football sign netted over $20,000 in donations for a Bitcoin enthusiast」

「ある大学のアメリカンフットボール(ゲーム)の看板がビットコイン愛好家から2万ドルを集めた」

 

記事によれば、アメリカンフットボールの試合会場で大学生が、「Hi MOM send(お母さん、送って)」という文字と共にBTCのマークとQRコードが載ったボードを掲げました。コードはBTCアドレスに紐づいたものです。そのボードがテレビに映り、画像をスキャンしたBTC保有者たちが実際にアドレスに送金してきました


なんと合計で約22.4BTCが集まったようです。当時の価値で約2万2000ドルと報じられています。

 

こちらはその時のESPNというスポーツ専門チャンネルの映像です。


 

ボードを掲げたBitcoinPitcher2と名乗った人物も、コードをスキャンし送金を試す人が数人はいるだろうと予想はしていました。ですが、まさか2万ドル以上も集まるとは思っていなかったようです。また、この出来事は「ビットコインを送って」と言った本人を驚かせただけじゃなく、ビットコイン推進派もかなり勇気づけました。なぜなら、暗号資産の送金が簡単にできることが証明されたからです。


ちなみにBTCを受け取った人物は、そのほとんどをホームレス支援の慈善団体に寄付したようです。もちろんBTCで。

 

ウクライナ 暗号資産でも寄付を受け付け

 

ここから話は2022年に戻ります。今年最大そして最悪の出来事は、ロシアがウクライナに侵攻したことではないでしょうか。侵攻開始から約10カ月が経とうとする今でも、ウクライナは主権国家としての尊厳・独立・自由を守るためにロシアと戦っています。このウクライナを暗号資産で支援する方法があります。

 

こちら↓はロシア侵攻から2カ月以上が経過した5月初旬の朝日新聞の記事です。

「力を合わせれば、きっと勝てる」ゼレンスキー大統領、支援金募る


記事によれば

ウクライナのゼレンスキー大統領は5月5日、自国の防衛や医療などにあてる支援金を募るため、クラウドファンディングサイト「UNITED24」を立ち上げたと発表。

大統領は「世界中のどの国からもワンクリックでウクライナに寄付ができる」と支援を呼びかけました。

 

サイトではまず寄付金の使い道を「防衛と地雷除去」「医療支援」「ウクライナ再建」の3つから選びます。そこから送金方法を「クレジットカード、ペイパル、銀行送金、そして暗号資産」から選択することができるのです。

※ペイパルは「防衛と地雷除去」はなし。


 ※UNITED24トップページから作成

 

↑はウクライナへの支援サイト「UNITED24」のトップページの一部です。日本からでもアクセスし、寄付金を送ることが簡単にできます。


例えば↓のように「MEDICAL AID」を選んだとすると、4つの支払い方法が表示されます。CRYPTO(暗号資産)を選択してみましょう。



暗号資産の種類は100以上もあります。今回は代表的なBTCを使用。送るBTCの額を0.0005以上で入力(赤○)し、メールアドレスも記入します(緑〇)。Comment(コメント)は入れても入れなくても良いようです。




PAYをクリックすると、↓の画面が出てきます。BTC額は伏せさせていただきました。QRコードを読み込むか、またはアドレス(Wallet address)をコピーし、自身のウォレットから送金することになります。




暗号資産で寄付、安心感を増すことも?


じつは、ウクライナへの暗号資産・寄付サイトは3月の時点で立ち上がっていました。同国のデジタル改革省が民間企業と協力して作成したプラットフォームはこちら⇒Help Ukraine with crypto, don’t leave us alone with the enemy


サイト内では、「ウクライナは人災の真っただ中にあり、多くの人々が亡くなった。国民は自由のために戦い続けるが、もっと弾薬や必需品が必要だ」と支援を呼び掛けています。

 

こちらも使い難くはなかったのでしょうが、寄付の行先(防衛、医療、再建)を指定することが出来ませんでした。また、暗号資産の種類でいえば、HelpUkraineはBTCやイーサ(ETH)など主要な16通貨のみでした。


国をまたいで寄付をしたい場合、国連UNHCR協会などの第三者機関を通した方法もあるでしょう。

ウクライナへの寄付はどこが良い?支援方法や支援団体を紹介!


ただUNITED24のように暗号資産でも受け付けるのであれば、寄付がより早く相手に届き、また透明性も担保できるため、支援する側の安心感が増すかもしれません。


この連載の一覧
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第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
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第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
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第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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