暗号資産ウォッチャー これに注目!

第30回「悪いニュースに反応せず、アノマリーもあったとは」

BTC、 アルトコインに引きずられ

 

代表的な暗号資産であるビットコイン(BTC)は、1月25日10時時点では対ドルで2万2600ドル付近での値動きです。年初来で36%超の上昇率、1週間前からも6%以上の上げ幅を維持しています。


堅調なBTCをみて取引したくなった人も多いのではないでしょうか。口座開設がまだの人は、【暗号資産よもやま話】第6回の後半以降をぜひ参考にしてみてください。


さてBTCですが、1日前と比べるとややマイナスに沈んでいます。これはBTC以外の暗号資産、イーサ(ETH)などアルトコインの弱さに引きずられているとも言えるでしょう。暗号資産市場で時価総額が第2位のETHは足もとで5%の下落、週間でもマイナスとなってしまいました。


※CoinMarketCapより


ETHの下落要因はハッキリしませんが、ひょっとしたらこういったこと↓も影響しているかもしれません。

「ポルシェ、NFT発行を停止──価格設定などに批判」コインデスク


NFT(Non-Fungible Token)は「代替不可能なトークン」と訳されています。

「NFT(ノンファンジブルトークン)とは?・・・」DMM Bitcoinサイトより


このNFTの多くがイーサリアムブロックチェーン上で取引されています。前述ニュースがETHの印象の悪さにつながり、高値警戒感も強まりつつある中で「売り戻しに傾いた」のかもしれません。


ただしETH売りBTC買いも出ていたためか、BTCの下げ幅は限られています。【暗号資産よもやま話】第20回でも述べましたが、海外ではETH対BTCなどのクロス取引も盛んです。

※Trading Viewより

 

BTCドル、悪材料に反応せず高値を更新!


さてBTCですが、先週末に再び上昇力を強めました。21日(土)には対ドルで2万3300ドル台と約5カ月ぶりの高値を更新。昨年末から外国為替で円高が進行した影響もあり、対円では昨年11月の高値314万円台に届きませんでしたが、それでも300万円台を一時回復しました。

 

BTCと連動性が高い米株主要指数の1つナスダックが堅調なまま終えたこと、米金利の頭打ちでリスク資産に資金が向かいやすかったことなどが上昇要因に含まれているようです。

 

確かに今でも、暗号資産関連で悪いニュースはまだ目立ちます。

「業界で人員削減、年明け2週間で1600人超」ブルームバーグ

「暗号資産企業ジェネシス、レンディング部門が米破産法の適用申請」ロイター

こういったニュースが出るたびに、BTC先物市場で売り向かう投機筋はまだ多そうです。

 

しかしながら前述した米株や金利の影響もあり、BTCの地合いが良すぎました。

「地合い」とは、相場の状況やムードを表す言葉。先行きへの期待が高く、買い意欲が旺盛、取引量も拡大している状況を「地合いが良い」、逆の状況を「地合いが悪い」という。日本証券業協会HP参照。


値動きを見ただけの判断ですが、昨年11月に暗号資産交換業FTXが破綻した影響でBTCを手放す必要に迫られた人たち(マイナーや悪いコストのロング?)による売りは、ある程度終わったのかもしれません。

 

相場にとって悪いニュースが出ても下サイドへの動きが限られたときは、注意が必要です。相場の上下は最終的に需給によって決まります。悪材料でも下げ渋ったような場合、その商品を買わなければいけない人、買いたい人が多いということでしょう。

 

やはりクジラはいた


そしてやはりというか、クジラと呼ばれる大口投資家(1000BTC以上を保有しているアドレス)たちもBTCを買い集めていたようです。

https://twitter.com/ali_charts/status/1616875069640433665

ブロックチェーン分析サイトSanbaseを引用した↑のツイートは、1月第2週から3週にかけてクジラが7万BTCを買い集めていたと述べています。1BTCを2万ドルで計算すると14億ドル(1ドル=130円で1820億円)にも達します。

 

前回の【暗号資産よもやま話】第29回で触れましたが、やはりクジラの買い上げが投機筋をショートカバーに走らせたのかもしれません。


春節にもアノマリーがあった?!


ところで、私は勉強不足で知りませんでしたが、この時期にもアノマリーがあるようです。それは春節(中国・中華圏における旧暦の正月)に関するものです。

「Chinese New Year Bitcoin Trade Is Guaranteed Profit, Researchers Say」Decrypto

(調査によれば、春節のビットコイン取引は利益を保証)

 記事によると、2015年から2022年までの8年間、春節の入りでBTCを買い、10日後に売ると勝率は100%!平均で9%の収益率というのです。


春節は毎年時期が変わり、今年は1月22日から始まりました。22日にBTCをロングにし、2月1日にポジションを閉じるという戦略でOK!というわけです。

 

※Trading Viewより


ただチャートをみると、295万円台が1月22日の始値です。春節を待ちきれないアノマリー信奉者たちも参入していたからか、前2日間で約30万円(約11%)の上げ幅を記録しており、さすがに高過ぎるという気も・・・・。いずれにせよ、2月1日の水準が注目されます。


なお、相場に絶対はありません

 

この連載の一覧
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
第58回「ビットコイン、売り買い材料が交錯 あのトランプ氏も心変わり?」
第57回「リップルにつれ安、8月のビットコインは?そして6カ月後までに・・・」
第56回「ビットコイン、400万円台維持 ネガティブニュースも跳ね返す」
第55回「ビットコイン、ゴールドのように羽ばたけるか ただしETFはもう少し先かも?」
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第53回「ビットコイン 円高の影響、分かれたヤツは元気」
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第46回「ビットコイン 動かず、過去2回はその後に大波」
第45回「G7は規制強化 交換業大手はカナダから日本へ」
第44回「ビットコイン 4カ月連騰、手数料高騰が懸念?」
第43回「ビットコイン 冬は終了?欲張り過ぎには要注意」
第42回「イーサリアム 待ち時間は延びる、BTC 10カ月ぶりの高値をつけるも・・・」
第41回「ビットコイン 約10カ月ぶりの高値、信じる者は・・・」
第40回「リップル 3月は元気いっぱい、裁判の終わりが見えた?!」
第39回「当局の圧力にも負けず、BTC買い衰えず」
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第37回「まるでジェットコースター、ビットコイン 代替資産としての位置づけも」
第36回「ビットコイン とんだ雛祭りに、懸念材料は複数残る?」
第35回「ビットコイン 売り持ちファンドに資金流入、投資家の懸念を反映」
第34回「昨年6月以来の高値更新、ビットコインの上昇要因を探る」
第33回「ビットコイン とばっちり食らう、PoWには関係なし?」
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第31回「イーサリアム、マージから4カ月半 伸び代あり?!」
第30回「悪いニュースに反応せず、アノマリーもあったとは」
第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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