BTC、一転し売り優勢に
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は2025年2月27日9時頃、対円では1254万円前後と前週(7日前)比14%安で推移しています。BTCドルが8万4100ドル台と昨年11月半ば以来の低い水準です。
この1週間、BTCだけでなく暗号資産相場は激しい動きでした。BTCは21日夜には対円で1500万円まで上昇し、対ドルでも9万9400ドル台と10万ドルを再び見据える位置まで買われました。
しかしそこから、BTCは一転売りが優勢となりました。対円では1420万円前後/対ドルが9万5000ドル割れで一旦下げ止まりましたが、週明けからは下落圧力が強まり続け、27日早朝には1220万円前後/8万2100ドル台まで売り込まれました。
※Trading Viewより
きっかけは、過去最大の…
BTCが崩れたきっかけは、暗号資産取引所Bybitが大規模なハッキング被害にあったことでした。この取引所がハッカーから奪われたのは、15億ドル(1ドル=150円換算で2250億円)相当のイーサリアム(ETH)関連と言われています。
被害規模は暗号資産業界では過去最大、2022年に当時の史上最大のハッキングと話題となったRonin Networkの被害額6.1億ドルの倍以上です。
2024年を振り返ると、165件のハッキング事件があり、合計で23億ドル超の暗号資産が流出したと調査結果があります。今回の1件で、昨年の規模の6割を占める被害額です。
※Trading Viewより
Bybit、金融庁から警告を受けていた
今回ハッキング被害にあったBybitは中東ドバイに拠点を置く取引所です。日本では無登録ですが、日本人の利用は制限されておらず、日本語サポートもあります。
取り扱う暗号資産もかなり幅広く、また現物や先物だけでなく、オプション取引も提供。先物のレバレッジは100倍、現物市場でさえも10倍のレバレッジで取引できる?とHPには記載されています。
取引できる暗号資産や手法が多ければ、儲かるというものではありません。ただHPはパッと見で分かりやすく、トレードしやすいプラットフォームのようにも感じます。そのため日本人のユーザーも少なからずいたのでしょう。
金融庁は昨年11月、「インターネットを通じて、日本居住者を相手方として、暗号資産交換業を行っていたもの」として同社に警告を行っていました。
※金融庁HPより
ハッカーは北からやってきた!
さて、BybitのHPのトップには「強固なセキュリティー 資産保護を徹底」と記載されています。マルチシグコールドウォレットというのがキーとなる技術のようです。
コールドウォレットとは、インターネットから完全に隔離された環境で暗号資産を保管する方法です。これにより、ハッキングリスクが大幅に低減すると言われています。
マルチシグとは、複数(マルチ)の秘密鍵と署名(シグ、シグネチャー)を必要とするシステムです。これにより、1つの鍵が盗まれても他の鍵が安全であれば資産は保護され、高いセキュリティーが担保されます。
※秘密鍵とは、暗号資産ウォレットによって生成されるアルファベットと数字の組み合わせ。特定の暗号資産に対する所有権を証明し、取引を承認するために使用される。
また、複数の承認が必要なため、単一の攻撃者が資産を移動させることは困難とされていました。しかしながら今回、オフラインのコールドウォレットからオンラインウォレットへ資金を移動する際に攻撃が行われたようです。
「バイビットの巨額不正流出事件 チャイナリシスがハッキングの手口を解説…」コインテレグラフ
ハッカーは北朝鮮に関係あると当初から言われており、FBI(Federal Bureau of Investigation、連邦捜査局)も北朝鮮のハッカー集団による犯行と発表しています。
※Mr.BitcoinのXより、
ところでイーサリアムは?
ハッキングで標的となった暗号資産イーサリアム(ETH)も、やはり下落しています。対ドルでは、ハッキング前の2840ドル台から27日早朝には2250ドル付近まで売られました。ただし、こちらは暴落した2月3日安値2150ドルには届いていません。
また週初にETHドルは、ハッキング前の水準を超える場面がありました。ETHを失ったBybitが顧客補填のためにETHを購入し始めたとの報道がありました。
「Bybit、約1億ドルでイーサリアムの買い戻しを実施」クリプトタイムズ
Bybitは店頭取引を通じて、3日間でおよそ21万2000ETHを所得したようです。買い戻しは機関投資家からの借入れだけでなく、他の暗号資産取引所からのETH融資、大口投資家からの入金もあったとされています。
ただし不正に流出した額は約40万1000ETHです。信頼を取り戻すには遠い道のりのように見えます。
※Trading Viewより