BTC、10月は強い月だが
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は10月12日時点で、対円では280万円前後、対ドルが1万9000ドル台と月初からは1%ほど低い水準で推移しています。
今月はBTC買いが先行し、株式市場の地合いも当初は良好だったためか大幅反発を予想する声も聞こえました。9月のBTCは弱い傾向がある反面、10月は過去3年間の月間パフォーマンスが「2019年+10.1%、20年+27.7%、21年+39.9%」と高い上昇率を記録していたことも、BTC強気派の期待を膨らませました。
上昇率は暗号資産分析サイトcoinglassのデータを参照にしています。ちなみに18年10月は4%弱の下落率でしたが、17年同月は47%超とかなり大きな上昇率でした。
※coinglass サイトより
しかしながら、日本時間7日夜に発表された9月米雇用統計をきっかけにBTCは売りに押されてしまいました。失業率が3.5%と予想3.7%よりも強かったことを受けて米株が下落し、BTCも追随しました。
米金融当局にとってインフレの抑制が最優先事項であり、経済指標が良い結果であれば積極的な利上げを続けることができます。調達コスト(金利)の上昇は米企業にとって打撃であり、株式市場にとって「良い結果」は「悪い知らせ」=「売り」という反応になりがちです。
雇用統計後、BTCはナスダック100と同じ方向に
7日も金利に敏感なハイテク株やグロース(成長株)を中心に下落圧力が強まりました。「NYダウ630ドル安と3日続落 強い雇用統計を受けて金利が上昇」(「いまから投資」の7日・米国株式市場に関する記事)
※Trading Viewより
↑のTrading Viewのチャートは、9月米雇用統計の発表後、BTCドルとナスダック100先物の値動きを重ねたものです。5分足のロウソク足がBTCドル、青いラインはナスダック100先物です。どちらもほぼ同じ方向に動いています。
※ナスダック100とは、ハイテク・グロース株の上場比率が高いナスダック取引所の非金融企業上位100社を対象とする指数。
BTC市場にも機関投資家の一部資金が入るようになり、そのため株式市場と似たような動きになることが多いようです。米株指数が上昇すると、リスク志向を強めた投資家が(リスク資産とされる)BTCも購入。逆に米株が下落すると、リスク回避でBTCを売るという図式なのでしょう。
2つの関係はどうなのか?
では実際に、BTCドルとナスダック100先物でどの程度の相関関係があるかを調べてみましょう。相関関係とは、2種類のデータのうち一方が増加すると、もう一方が増加または減少するような関係のことです。
2つの動きの相関関係の強弱を知るには「相関係数」を求める必要があります。
数スタという数学の勉強をサポートするサイトでは、【数Ⅰ】相関係数の出し方をイチからていねいに解説!で以下の式において求めることができると述べられています。
サイトでは確かに丁寧に解説していただいているのですが、BTCドルとナスダック100先物の値(終値)でいちいち計算していたら大変ですね。そこで、Trading Viewのテクニカルインジケーター「CC(相関係数)」を使用します。
・シンボル検索でBTCUSDとタイプし、取引所を選択。どこでもOKですが、ここではcoinbaseを使用します。日足を選び、ロウソク足やバーチャートなど見やすいものを選択。
・比較しやすいようにナスダック100先物のラインチャートを加えます。シンボル検索の横にある「比較またはシンボルの追加(〇の中に+のマーク)」をクリックし、NQ(E-MINI NASDAQ-100 FUTURES)をタイプ。限月を選ぶ場合は手前の限月、そして「新しい価格スケール」をクリックします。
・次にインジケーター検索でCCを選びます。そのシンボルにもNQとタイプし、E-MINI NASDAQ-100FUTURESを選択します。対象期間はデフォルトの20を今回は使いましょう。
※Trading Viewより
相関関係、確かに強いときは多いが・・・
Sci-pursuit.comの「相関係数の意味と求め方 - 公式と計算例」によれば、最大1から最小-1までの値となる相関係数は、(統一的な基準は決まっていないものの)目安として0.7以上を「強い正の相関」、-0.7以下が「強い負の相関」としています。また0.4から0.7は「正の相関」、-0.4から-0.7が「負の相関」とされ、この辺りまでは注目する必要がありそうです。
0.2から0.4は「弱い正の相関」、-0.2から-0.4は「弱い負の相関」であり、あまり気にしなくて良いでしょう。
↑に貼り付けたTrading Viewのチャートは、ここ1年間のBTCドルとナスダック100先物の値動きとCC(相関係数)です。それをCCグラフだけにし、プラスとマイナスの0.4や0.7に線を引いてみました。
BTCドルとナスダック100先物、確かに今年は「正の相関」の時が多く、「強い正の相関」の期間も長めです。ただ昨年は後半は「負の相関(いわゆる逆相関)」に振れた局面もあり、「強い負の相関」に迫る瞬間もみられました。この辺りは注意すべきことでしょう。
先月後半からは相関関係が急速に低下していましたが、このところはまた強まりつつあるようです。そういったなか、来月始めに米国では米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、また中間選挙も行われます。株式市場を動かすであろう重要イベントであり、BTCにとっても大切な時期となるのではないでしょうか。
相関関係があるからといって因果関係(原因と結果の関係)が必ずしもあるとは限りません。ただBTCの方向性を考えるうえでは、米株とのCC(相関係数)は参考にしても良いと思われます。また、FXなどの取引にも使える場面がありそうです。