暗号資産ウォッチャー これに注目!

第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」

ビットコイン、批判の的に・・・

 

暗号資産ビットコイン(BTC)はコラム執筆時の9月28日時点で時価総額が54.74兆円、暗号資産全体のドミナンス(シェア)は39.5%です。ドミナンス17.5%で第2位のイーサ(ETH)とは、時価総額で30.5兆円ほど差があります。

※数値はCoinMarketCapより

 

2009年に誕生したビットコインのブロックチェーン・ネットワークは、これまでのところ最も成功している暗号資産と言えるでしょう。しかしながら規模が大きくなり過ぎたゆえに、度々その消費電力が批判の的となっています。

 

一例としてはこちら↓Forbes JAPANの記事

ビットコインの電力消費量が「地球に危険なレベル」である理由

 昨年3月の記事ではありますが、マイクロソフトの共同創業者であり慈善活動家としても有名なビル・ゲイツ氏の見解を紹介しています。


ゲイツ氏は、大量の電力を消費する暗号資産のマイニング(採掘)は、気候変動問題を悪化させると警告しました。 同氏はビットコインの電力消費量の大きさを指摘し、気候に良い影響を与えないビットコインの懐疑論者と述べています。


※引用:CoinDesk2022年6月22日の記事「Miner Bitfarms Sold Almost Half Its Bitcoin to Reduce Debt」より

 

採掘のエネルギー消費が問題に

 

暗号資産の基盤となるブロックチェーンのマイニングとは、トランザクション(取引データ)を承認する権利を得て新たなブロックを生成しその報酬として暗号資産を獲得する作業のことです。特にプルーフ・オブ・ワーク(PoW)をコンセンサスアルゴリズムに採用した場合、マイニング時のエネルギー消費量が大きくなるとされています。

 

PoWでは、マイニングをする人たち(マイナー)が計算の速さを競い合います。ブロックの生成まで辿り着く(勝ち取る)には計算量が重要となり、↑の写真のように高性能のコンピューターを複数台も稼働させなければなりません。ビットコインのPoWでは、ブロックは約10分に1つだけネットワークに繋がれ(チェーン)ます。

 

ブロック生成に繋がる必要な数値を最初に探し出したマイナーのみが報酬を得られます(ビットコインは現在6.25BTC)。その以外のマイナーは電力を使ったにもかかわらず何も得らず、また次のブロック生成を目指して計算を始めるということです。


ではマイニングの勝者や敗者などを合わせたビットコインネットワークの消費電力はどの程度なのでしょうか。

 

 

エネルギー消費指数、電力消費はUAEと同じ

 

↑の添付は、オランダのdigiconomist が発表しているBitcoin Energy Consumption Index(BECI ビットコイン・エネルギー消費指数)です。

 

BECIによれば、ビットコイン・ネットワークによる年間の二酸化炭素(CO2)排出量は70.76Mt(メガトン)相当、電力消費量は204.50TWh(テラワットアワー)、電子廃棄物量は25.65kt(キロトン)などと見込まれています。

 

CO2排出量はギリシャ、電力消費量はアラブ首長国連邦(UAE)、電子廃棄物量はオランダに相当する水準です。


ビットコインの電力消費量に関していえば、2020年の数値を元にすると世界第23位と同等Worldpopulationreviewによると、年間で第10位ブラジルの3分の1強、第19位オーストラリアの7割超までたった1つの暗号資産ネットワークが電力を消費しているということになります。


またBECIの試算によると、ビットコインのトランザクション1回に要する環境負荷は以下になります。

 


CO2排出量はVISAの168万5763回分!!の決済取引とほぼ同等、またはYouTubeを12万6767時間も視聴した場合と同じ。電力消費量では米国の平均家庭の46.74日分に相当するとしています。

 

ホワイトハウスも警告

 

9月8日に米国科学技術政策局(OSTP)は、国内における暗号資産の環境とエネルギーへの影響について報告書を出しました。


こちらが↓報告書の原文です。

CLIMATE AND ENERGY IMPLICATIONS OF CRYPTO-ASSETS IN THE UNITED STATES


OSTPとは大統領府(ホワイトハウス)内に設置され、米連邦政府内で科学技術政策の推進・調整役を担い、大統領への助言と科学に基づく政策形成の促進を本務としています。

※科学技術振興機構のレポートを参考

 

報告書について他サイトが既にまとめていますので、そちらを紹介させていただきます。

 

「ホワイトハウス科学技術政策局、仮想通貨による気候への影響を調査」

(コインテレグラフジャパン 22年9月9日記事)


・電力を使用するマイニングは、クリーンエネルギーを使用しない限り、温室効果ガスの排出を発生させると非難

 

「仮想通貨マイニング企業は使用エネルギー量を報告せよ」米政府が勧告

(Forbes JAPAN 22年9月12日記事)


 ・最も注目すべきなのは、暗号資産業界が謳っている決まり文句「マイニングは再生可能エネルギーの開発を促進」をこのレポートが疑っていること

マイニングは大気汚染と騒音公害などで地域コミュニティにも悪影響を与えていると、レポートは指摘

・OSTPはPoWを回避することを推奨しており、別のプロトコル(コンセンサスアルゴリズム)に移行することによって、業界全体の電力需要を現在の1%以下にできると理論づけている


報告書ではPoWの代表格として、やはりビットコインが挙げられています。

 


世界中で異常気象が頻繁に発生し、温暖化対策に待ったなしの状況なのは疑いようがありません。そういったなか、暗号資産では圧倒的に大きいエネルギーを消費するビットコインへの風当たりは、今後ますます強くなってしまうかもしれません。

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為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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