暗号資産ウォッチャー これに注目!

第112回「ビットコイン、伸び悩み ファンドから資金流出 昨年の暗号資産詐欺のトレンドは?」

BTC円、伸び悩み 円高も影響


 代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は9月11日14時時点で、対円では798万円前後と前週(7日前)のほぼ同時刻と比べて2%安い水準で取引されています。先週末に750万円台まで売られた後に反発しましたが、833万円前後を戻りの高値に失速しました。

 

BTCドルは5万6400ドル台での値動きです。こちらは前週比で0.3%安程度。つまり為替で円高が進行している影響をBTC円は受けています。

 

足もとの円高のきっかけは、中川・日銀審議委員が追加利上げを示唆したことがあります。債券市場はそれほど反応しませんでしたが、日本株が売られてリスク回避動きが加速しました。



※Trading Viewより

 

ファンドから資金流出、クジラは


その前に売られていた要因としては、こちら↓

「暗号資産ファンド、3月以来最大の流出に・・・」コインデスク

暗号資産全般に軟調な地合いが続いた8月終わりから9月初め、暗号資産ファンドから資金が流出していたという記事です。

 

今年1月に米国で取引が承認された現物ビットコインETFも、上場以来では初めて8日連続で流出超を記録しました。12本のETF合計では、約11.8億ドルの流出となります。

 

しかしながら、オンチェーン分析によれば、

クジラと言われる大口保有者からは下げたところで買いが出ていたようです。


 

価格の下落後、クジラたちがビットコインを積み増し中

9月1日以降、3人のクジラ(大口投資家)が Binanceから平均価格5万5887ドルで約2814BTC(約1億5730万ドル)を購入

 

というXの投稿がありました。

 

暗号資産詐欺 56億ドル!

 

コラム執筆中にこういった記事が目に留まりました。

「暗号資産詐欺の被害額、23年に45%急増=FBI」ロイター通信

 

米国連邦捜査局(FBI)が9日に公表した2023年の暗号資産詐欺報告書(Cryptocurrency Fraud Repot)に関する記事です。レポートによれば、暗号資産関連の詐欺による2023年の被害額が米国では56億ドルを超えました。前年と比べて45%の増加です。


 

FBIのインターネット犯罪苦情センター(INTERNET CRIME COMPLAINT CENTER、IC3)がまとめたレポートによれば、総苦情件数は6万9468件にもなりました。暗号資産関連の苦情はIC3に持ち込まれた総苦情数の約10分の1程度でしたが、詐欺による損失額は暗号資産関連が全体の約50%!を占めていました。


暗号資産の分散性、取引の不可逆性、グローバルな送金の容易さが犯罪者に悪用されています

年齢層別では60歳以上の被害額が最も高く、16億ドル以上でした。

 

詐欺被害は世界中から報告されたものの、苦情と損失の大部分は米国からでした。そのなかで目立ったのが投資詐欺です。全体の約7割も占めました。 



暗号資産詐欺、2023年のトレンド


投資詐欺の損失額は前年比53%増の39.6億ドルにも達しました。

 報告書によれば、以下のような投資詐欺があります。


1、信頼を利用した暗号資産投資詐欺:

・ 犯罪者はデートアプリ、ソーシャルメディア、専門家ネットワーキングサイト、暗号化メッセージアプリを使って被害者との関係を構築します。

・ 暗号資産投資の話題を持ち出し、自身や知人の専門家が財務的成功を手助けできると主張します。

・犯罪者が管理する偽のウェブサイトやアプリを使わせ、投資させます。

・初期には少額の引き出しを許可して信頼を得ますが、最終的には手数料や税金を理由に資金を引き出させません。

 

2、 流動性マイニング詐欺:

・正当な流動性マイニング操作を装い、毎日1-3%のリターンを保証すると誘います。

・ 被害者の暗号資産ウォレットを偽の流動性マイニングアプリケーションにリンクさせます。

・その後、所有者の許可なく資金を引き出します。

 

3、偽のPlay-to-Earnゲームアプリ:

・犯罪者は偽のゲームアプリを作成し、プレイヤーに暗号資産による報酬を約束します。

・被害者に暗号資産ウォレットの作成と資金の入金を指示します。

・アプリ上では偽の報酬が蓄積されているように見せかけます。

・ 被害者が資金の入金を止めると、ゲームに参加した際に有効化された悪意のあるプログラムを使って資金を奪います。


自分だけは引っかからないと思い込まず、また簡単に儲かる話には乗っからないということですね。

次回は暗号資産の詐欺被害を避けるために必要なことにも触れていきたいと思います。

この連載の一覧
第112回「ビットコイン、伸び悩み ファンドから資金流出 昨年の暗号資産詐欺のトレンドは?」
第111回「ビットコイン、夏バテか? 残暑も厳しく 曲がり屋とされるあの人は」
第110回「ビットコイン、上値トライは失敗 チャットアプリ騒動が影響?」
第109回「暗号資産税制、隣の芝は青く見え過ぎた 1年以上保有すると・・・」
第108回「ビットコイン、米インフレ減速も上昇の勢いは・・・相場って難しい 米投資銀行が現物ETFを所有」
第107回「ビットコイン、夏バテ気味 リスク回避の流れに逆らえず」
第106回「ビットコイン、失速するも月間ではプラス維持 トランプ氏がビットコイン大国を掲げる」
第105回「ビットコイン、分散化が強さ 米大統領選の影響はより不透明に」
第104回「ビットコイン、大幅反発はトランプ氏のおかげ? イーサリアムもついに!」
第103回「BTC、2月以来の安値更新 独政府やMt.Goxなど売り材料目立つ ただし一巡後は持ち直す」
第102回「ビットコイン、半値戻しまで 日本の投資家は暗号資産に興味あり?!」
第101回「ビットコイン、週明けに売り強まる マウントゴックスがついに?!」
第100回「ビットコイン、ダブルトップ形成で下落?! アルトコインの影響も無視できず」
第99回「ビットコイン、対円では最高値更新も・・・ 米イベントで右往左往」
第98回「ビットコイン、ハッキングもなんのその こんどは豪とタイが!」
第97回「ビットコイン、占有率が下がり気味・・・ 現物イーサETFの取引は?!」
第96回「ビットコイン、対円では最高値更新 ETHもついに?!」
第95回「ビットコイン、弱い米指標が助けに?! ウィスコンシン州がお買い上げ」
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
第58回「ビットコイン、売り買い材料が交錯 あのトランプ氏も心変わり?」
第57回「リップルにつれ安、8月のビットコインは?そして6カ月後までに・・・」
第56回「ビットコイン、400万円台維持 ネガティブニュースも跳ね返す」
第55回「ビットコイン、ゴールドのように羽ばたけるか ただしETFはもう少し先かも?」
第54回「Simple is Best、相場は単純に考える ところでBTCが上がらない理由は?」
第53回「ビットコイン 円高の影響、分かれたヤツは元気」
第52回「ビットコイン、対円にしました!口座開設はもうお済み?」
第51回「現物ETF 承認への期待大! ただし一旦落ち着く必要も・・・」
第50回「ビットコイン、救世主が出現! 現物ETFへの期待高まる」
第49回「BTCの占有率上昇、ただし市場が盛り上がっているわけでは・・・」
第48回「ビットコイン SECの圧力はちょっと違う、底打ち感も?!」
第47回「ビットコイン 5月は失速、でも今年中には大幅上昇?!」
第46回「ビットコイン 動かず、過去2回はその後に大波」
第45回「G7は規制強化 交換業大手はカナダから日本へ」
第44回「ビットコイン 4カ月連騰、手数料高騰が懸念?」
第43回「ビットコイン 冬は終了?欲張り過ぎには要注意」
第42回「イーサリアム 待ち時間は延びる、BTC 10カ月ぶりの高値をつけるも・・・」
第41回「ビットコイン 約10カ月ぶりの高値、信じる者は・・・」
第40回「リップル 3月は元気いっぱい、裁判の終わりが見えた?!」
第39回「当局の圧力にも負けず、BTC買い衰えず」
第38回「ビットコイン 時価総額はメタ超え、強欲な感じも・・・」
第37回「まるでジェットコースター、ビットコイン 代替資産としての位置づけも」
第36回「ビットコイン とんだ雛祭りに、懸念材料は複数残る?」
第35回「ビットコイン 売り持ちファンドに資金流入、投資家の懸念を反映」
第34回「昨年6月以来の高値更新、ビットコインの上昇要因を探る」
第33回「ビットコイン とばっちり食らう、PoWには関係なし?」
第32回「ビットコイン、2月も底堅い クリスマスまでには?!」
第31回「イーサリアム、マージから4カ月半 伸び代あり?!」
第30回「悪いニュースに反応せず、アノマリーもあったとは」
第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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