暗号資産ウォッチャー これに注目!

第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」

ビットコイン、サポートを割り込み急落

 

代表的な暗号資産であるビットコイン(BTC)は8月23日23時時点で、対円では378万円台と前週比で約11%の下落幅です。

 

大きな動きを見せたのは、先週18日の早朝。支持帯として期待されていた410万円から400万円を割り込むと、その日の夜中には一部取引所で372万円台まで大きく売り込まれました。

 

※Trading Viewより

 

きっかけは米国の金利上昇、ロングの投げが

 

下落のきっかけの1つとして、「米国の金利上昇が長期化するという見方が広まったこと」と言われています。金利の上昇基調の強まりは、(必ずしもそうなるとは限りませんが)リスク資産にとっては売り要因とされます。

 

確かにチャートを見ると、長期金利の指標である米10年債利回りが4.3%台まで上昇したタイミングでBTCへの売り圧力が強まっています。

 

※TradingViewより

 

ビットコインが下げ幅を急ピッチで広げたのは、溜まった買い持ちが投げさせられたということもあるのでしょう。売りが売りを呼ぶという展開は、暗号資産が急落する場面ではよくある話です。暗号資産分析サイトcoinglassの精算チャートもそれを示唆しています。

 

※coinglassより、緑が買い持ちの投げ

 

スペースXが売ったから?

 

ビットコインが急落した要因のもう一つが、「スペースX」に関する報道とされています。

 「ビットコイン急落-債券利回り上昇にスペースXが売却との報道重なる」bloomberg

 

スペースXとは、電気自動車テスラや旧ツイッター・エックスを率いるイーロン・マスク氏が設立した宇宙開発企業です。

 

上記の記事では、米ウォール・ストリート・ジャーナルの報道をもとに、スペースXが2021年と22年に合計3.73億ドル相当(1ドル=145円だと541億円弱)のビットコインを売却していたと報じました。

 

過去の話ではありますが、世界で最も裕福な人物の一人であるイーロン・マスク氏の影響はやはり大きいようです。一時BTCを大量に保有していたテスラも、スペースXと同じ方針であれば、再び購入ではなく残りの2億ドル弱分を手放す可能性が高まったのではないでしょうか。

 

そして↓の記事にもあるように、このスペースXのビットコイン関連の報道は暗号資産市場に混乱をもたらせました。

 「スペースXのビットコインを巡る報道 仮想通貨コミュニティに混乱招く」コインテレグラフ

 

 暗号資産、時価総額が2カ月ぶりの水準に


暗号資産市場ではBTC以外のいわゆるアルトコインも下げがきつく、時価総額2位のイーサリアム(ETH)も前週比で約10%安と軟調です。時価総額5位のリップル(XRP)などは13%安と更に売られています。


 

※https://nikkei225jp.com/bitcoin/ より

 

当然ながら暗号資産全体の時価総額も縮小しています。18日には6月半ば以来となる1兆ドル割れとなる場面もありました。ただ、直近で一番低い6月15日の9752億ドルの手前で下げ止まり、足もとでは1兆340億ドル程度まで回復しています。

 

チャートサービスTrading Viewのシンボル検索で「TOTAL」とタイプすると、暗号資産の時価総額チャートが出てきます。

 

7月半ばの時価総額の拡大時をみると、今年最大を記録した4月半ばの1.26兆ドルに届きませんでした。そこから一転し縮小傾向となり、踏みとどまりそうだった1.1兆ドルを割り込むと低下のスピードを速めています。

 

※TradingViewより

 

このチャートの形、いわゆるダブルトップというフォーメーションです。

 

【ダブルトップは典型的な天井サイン】

こちらの↑「いまから投資」のテクニカル分析コラムでも言われているように、上昇相場の終わりとなる可能性が出てきたということでしょうか。

 

前述した6月15日の水準がネックラインとされ、そこを割り込むようだと3月の水準まで時価総額が縮小してしまうかもしれません。

 

売られ過ぎなのか?200日移動平均線も

 

ただ、さすがにビットコインは下げ過ぎではないか?という声もチラホラ聞かれます。そこでBTC円の日足チャートを見てみると、相場の過熱感を測る指標の1つRSI(14日間)は売られ過ぎ目安の30を割り込んできました

 

また、3月に下げとめられた200日移動平均線までBTC円は水準を下げています。現在377万円台に同線は位置しており、この辺りから反発を予想する(または願う)人もいるのではないでしょうか。


 

※TradingViewより


ところで「人は見たいものしか見ない」と言われています。ダブルトップでネックライン割れを見込むか、RSIの売られ過ぎから200日移動平均線で反発を期待するか、弱気派と強気派の攻防がしばらく続くかもしれません。

この連載の一覧
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第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
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第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
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第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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