暗号資産の取引が一般的になるにつれ、日本の税制における課題が取り沙汰されています。今回は暗号資産取引の税制について、日本と他国を比較しながら簡単ですが見ていきます。
高い税負担・・・米国では?
日本では、暗号資産の取引で得た利益は「雑所得」として扱われます。雑所得は他の所得と合算されて所得税の累進課税が適用されるため、所得が多い人ほど税率が上がります。所得税の最高税率は45%で、住民税10%を合わせると最大では55%にも達します!
なお、55%は課税所得が4000万円を超えたところからです。いずれにせよ利益が多い場合の税負担がかなり大きくなるため、暗号資産の取引に慎重になる投資家も相当数いるようです。
他の国と比較すると、例えば米国では暗号資産の利益はキャピタルゲイン(資本利得)として扱われます。保有期間によって、1年以内の短期保有とそれ以上の長期保有に区分されます。
短期のキャピタルゲイン税率は個人で10-37%、法人で28%。一方、長期のキャピタルゲイン税率は個人で0-20%、法人で28%です。実際には個人の所得水準によって異なるため、全員にこの税率が適用されるわけではありません。また、州税が別途かかる場合もあります。
※参照サイト「米国における仮想通貨の税務」
暗号資産の先進国とも言える米国と比べて日本の税率は相対的に高く、投資家にとって負担が大きいといえるでしょう。
独、1年以上保有すると!
日本では、暗号資産の取引において年間で20万円を超える利益が生じた場合、自己申告(いわゆる確定申告)が必要です。取引が複数の取引所にまたがっている場合や頻繁に取引を行う場合などは、履歴管理が非常に煩雑になります。
ドイツでも、税務申告のために正確な取引履歴を保持することが求められます。特に短期取引や複数の取引所を利用する場合には、各取引の詳細を記録して利益や損失を正確に計算する必要があります。1年以内の保有で暗号資産を売却し600ユーロを超える利益を得た場合は、ドイツでも通常の所得税が適用されます。税率は個人の総所得に応じて最高45%、加えて5.5%の連帯税が課されることがあります。
一方、日本と決定的に違うのが暗号資産を1年以上保有して売却した場合で、その利益は非課税となります。このため申告の負担も大きく軽減されます。
ポルトガルでは365日を超えて保有される暗号資産にも報告義務があるものの、キャピタルゲインについては課税されません。
参照サイト、
お隣、韓国でも・・・
今年2月のニュースです。
「韓国、暗号資産課税を二年間延期へ」ビットバンクプラス
韓国・与党は、暗号資産投資への課税を2年延期する意向を示したという報道です。2022年に開始するとされた課税は何度か延期され、非課税が2027年まで持ち越される可能性があるというのです。
暗号資産業界に対する規制基盤を整えることを優先するために、非課税期間を延ばすしています。ただし、暗号資産取引で主要な世代である若者の人気取りに走っているとの見方もあるようですが。
今後に期待してよい?
暗号資産取引により得た利益に対する税制について、他国の例を含めて幾つかピックアップしてみました。隣の芝はかなり青く見えました。
日本の現行の税制は、暗号資産投資家にとって負担が大きいのは確かでしょう。今後できるだけ早く、暗号資産の利益をキャピタルゲイン扱いにし、税率の引き下げや申告手続きの簡素化が求められます。
もし今後の改正で国際的な標準に近づけば、日本における暗号資産市場は更に盛り上がりを見せると思われます。