底堅いと言ったそばから大幅下落
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は15日19時頃、対ドルでは2万2100ドル台/対円では295万円台で推移しています。前日同時刻と比べると1.5%ほど上昇していますが、1週間前と比べると弱く下落幅は4.5%前後です。
前回コラムの第32回「ビットコイン、2月も底堅い クリスマスまでには?!」では、相場には買い遅れ感があると述べました。しかしながら9日に配信後、底堅いどころか売りの勢いが一気に強まってしまいました。
※Trading Viewより、2月7日から14日
下落の一因は、米国の市場監視機関である米証券取引委員会(Securities and Exchange Commission、通称SEC)による暗号資産関連への規制強化です。SECは、投資家保護や公正な市場整備を目的として約90年前に設立され、証券(株式や債券など)取引における法規を管理しています。
このSECが9日、暗号資産交換業大手のクラーケンが米顧客向けに提供している「ステーキングサービス」を証券の違法販売にあたると訴えました。これを受けてクラーケン側は同サービスを停止し、民事制裁金を含む3000万ドル(1ドル=133円で39億9000万円)の和解金の支払い応じました。
ステーキング、ネットワークの維持に貢献
ステーキング(staking)とは、保有する暗号資産をそのブロックチェーン・ネットワークに預けブロック生成(取引や送金などの承認)に関わることです。ネットワーク維持に貢献した見返りとして暗号資産を得ることができます。その報酬はステーキングする期間や量によっても変わります。
中央集権的な管理者がいないブロックチェーン・ネットワークは、ピアツーピア(peer to peer、P2P)で接続されているノード(コンピューター端末)で保たれています。ネットワーク内におけるトランザクション(取引・送金など)の記録は全てのノードで共有される仕組みです。
そのなかでバリデータ(検証する人)に手を挙げたノードが、トランザクションの整合性を承認する役割(前述したブロック生成)を得ます。トランザクションをまとめたブロックを前のブロックに繋ぐことで報酬を得るのですが、どうしても専門的な知識は必要とされています。
SECの怒りを買う、相場はロングの投げ
前述したクラーケンは自らがバリデータとなって、ステーキングを代行するという形で個人投資家から資金を預かり、リターンを払っていました。この部分が証券として捉えられ、無登録や投資家への説明不足がSECの意に反したということらしいです。
米国では、SECによる法的な縛りが他の暗号資産企業やサービスにも適応される可能性も取沙汰されました。トランザクションの検証にステーキングを採用する(いわゆるプルーフ・オブ・ステーク、Proof of Stake 以下PoS)暗号資産に対しても、何らかの規制が加えられるという懸念も少なからずあったようです。
強気相場が続いていただけに相場全般が買い持ちに傾いていたなか、急に深まった先行き不透明感が嫌気されてロングの投げが投げを呼びました。暗号資産の先物市場では2億ドル以上の売りが出たとされています。
「クラーケンの和解、暗号資産下落に拍車──先物市場で2億ドル以上の清算が発生」
PoSを採用するイーサ(ETH)、カルダノ(ADA)、ポルカドット(DOT)なども軒並み大きく下落。ETHは対ドルで、8日の高いところからだと一時14%安近くまで下げ幅を拡大しました。
※Trading Viewより
ビットコイン、PoS騒動に巻き込まれた
ところでビットコインのブロックチェーンでは、取引の整合性を確認するための決め事にプルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work、PoW)を採用しています。
PoWでは、膨大な計算量を必要とする問題を最初に解いたマイナーと言われるノードに、トランザクションを承認する権利が与えられます。その後ブロックチェーンに新たなブロックを繋げると、報酬として暗号資産(この場合はBTC)を獲得するという仕組みです。
PoWではステーキングはできません。今回のBTCの下げはPoS騒動に巻き込まれただけとも言えるでしょう。BTCの時価総額は暗号資産全体の4割以上あり、ドミナンスは圧倒的1位ですが、アルトコインの動きはさすがに無視できませんでした。
バレンタインデーの指標に助けられた?
2月14日のバレンタインデーに発表された1月米消費者物価指数(CPI)の後、BTCに再び追い風が吹きつつあるように見えます。CPIの前年比は予想を上回りドル金利は上昇しましたが、ネガティブ材料にもかかわらずナスダック総合は上昇して終えました。
ステーキングサービス問題のとばっちりを受けましたが、この記事が述べているようにナスダックとの相関関係が強いままでしたらBTCにも期待が持てるかもしれません。