「2週間以内に…」のお言葉で
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は2025年6月19日9時頃、対円では1520万円前後と前週(7日前)比で約3.3%低い水準で取引されています。BTCドルが10万4700ドル台での値動きです。
BTC円は、11日夜に1600万円に迫ったところから一転し下落しました。12日夜には1530万円付近まで下押します。きっかけは、またしてもトランプ米大統領でした。
米国を巡る貿易問題の解決に向けた動きが進みそうな雰囲気が出始めたころ、トランプ大統領が水を差す発言をします。トランプ氏は「2週間以内に一方的に関税率を設定」「貿易交渉の期限延長、用意はあるが必要とは考えていない」と述べました。
これを受けてリスク回避(オフ)ムードが金融市場に広がり、案の定BTCも弱含みました。米国を中心に機関投資家がビットコイン投資を開始して以降、リスクオンでBTCが買いが強まり、リスクオフで売られるという動きとなりがちです。
※Trading Vewより
中東情勢、原油相場に振り回され
BTCは13日になると下げ足を速めます。対円では1473万円まで売られ、対ドルでは10万3000ドル割れと直近高値から7%近い下落率を記録しました。
こちらは中東の地政学リスクの高まりがきっかけです。
イスラエルが13日、同地域で長年対立してきたイランに対して攻撃を仕掛けました。イランの核施設が空爆され、革命防衛隊のトップを含む軍の幹部も殺害されました。
イランも報復を表明し、数百発の弾道ミサイルを発射。イスラエルのテルアビブに着弾したことが報じられています。
これを受けて最も反応したのが原油相場でした。イランは石油輸出国機構(OPEC)第3位の産油国です。戦闘で供給混乱への不安が高まり、原油先物市場は急騰しました。
以下の時間足チャートは、ローソク足がNY原油先物/ラインチャートがBTCドルです。イスラエルの空爆前、1バレル=67-68ドルで推移していた原油先物は、77ドル台まで急騰します。13%以上の上昇率です。
※バレルは液体などの量、体積を表す単位。原油の1バレルは約159リットル。
※Trading Viewより
その後、イラン産原油の不足分は他のOPEC諸国がカバーするとの思惑や、イランが交渉を求めたことなどから原油相場は水準を落とします。リスクセンチメント改善でBTCも反発しました。
しかしながら、米国の対イラン軍事行動が現実味を帯びてくると再び原油相場が上昇。この状況下では原油上昇=リスクオフとされ、BTCは上値を切り下げました。
イスラエル、暗号資産でもイランを攻撃?
イスラエル・イラン紛争は、イラン上空の制空権を掌握しているイスラエルがかなり優位とされています。そういったなか、イランが拠点のNobitexという暗号資産取引所で7300万ドル(1ドル=145円換算で約106億円)以上の不正流出が発生しました。
「イラン拠点の仮想通貨取引所 7300万ドル相当の不正流出発生…」コインテレグラフ
記事よれば、新イスラエル系のハッカー集団が犯行声明を出したとされています。
暗号資産においても、イスラエルが優勢のようです。
米国では注目とされる法案が上院で可決
ところで米上院では17日、暗号資産業界で注目されているステーブルコイン規制法案が可決されました。「The Guiding and Establishing National Innovation for US Stablecoins」、通称GENIUS法です。
「米上院、ステーブルコイン規制法・GENIUS Actを可決…」コインデスク
※ステーブルコイン、ここでは「法定通貨担保型」。ドルに連動し、価値が安定している暗号資産のこと。
法案の主な内容は以下になります。
・米国内でのステーブルコインの発行・使用・保管を合法化し、明確な規制枠組みを提供する。企業にとっては、より安心してステーブルコインを利用できる環境が整う。
・消費者保護のための規定が含まれ、特にFDIC保険や政府保証を誤認させる表示の禁止、大手IT企業による発行制限などが盛り込まれている。
・発行者は、発行するステーブルコインに対して100%の準備金を保有し、会計監査を受ける義務がある。これにより、ステーブルコインの信頼性が向上。
このGENIUS法案は共和党と民主党の両方からの支持を受け、68対30の圧倒的な多数で可決されました。トランプ大統領もこの法案を強く支持しており、米国を暗号資産のリーダーにするための重要なステップと位置付けています。
ベッセント米財務長官もかなり押しています。
※ベッセント氏のX投稿