暗号資産ウォッチャー これに注目!

第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」

BTC やっと反発、FRBの引き締めペース変化との思惑で

 

代表的な暗号資産であるビットコイン(BTC)は、10月27日8時時点で対円では305万円付近、対ドルでは2万0800ドル台で取引されています。25日の日本時間夜中から未明にかけて買いが強まり、26日夜には24日の終値比で8%高まで上げ幅を広げました。

 

今月は281万円付近で始まったBTC円は290万円台から268万円まで売られる局面がありましたが、大半は280万円-290万円を中心とした値動きが続いていました。BTCドルも似たような感じであり、基本的には1万9000ドル台で上げたり下げたりでした。


↓BTCドルの4時間ロウソク足、ナスダック100先物、米国10年債利回りのチャートです。

※Trading Viewより


しかしながら、米連邦準備理事会(FRB)が12月にも金融引き締めペースを緩めるとの観測が強まると、米金利の低下と共に21日から米株式市場が買い戻し優勢に。

「いまから投資」の米株まとめ記事~NYダウ337ドル高と3日続伸 金利低下を好感


週初まで反応が鈍かったBTCですが(24日は下落して引けています)、さすがに3日間(10月21,24、25日)の上昇率がダウ平均5%弱、ナスダック総合5.5%となると、遅ればせながら追随してきました。


ボラティリティ 米株主要指数を下回る

 

10月は暗号資産にしては値幅が限られた期間が長かったためか、先週末にはBTCのボラティリティ(volatility)の低さを指摘する記事が目立ちました。ボラティリティとは、ある一定期間における変動の度合いや変動率(性)のことです。

 

ボラティリティには2種類あり、1つは過去の価格変動をもとにして算出されるヒストリカル・ボラティリティ(HV)、もう一つがオプション価格から逆算された予想変動率と言われるインプライド・ボラティリティ(IV)です。以下の記事ではHVについて述べられています。

 

米CNBCの記事

「Bitcoin’s volatility falls below Nasdaq and S&P 500′s for first time since 2020」

暗号資産情報サイトDecrypt

「Bitcoin Now Less Volatile Than S&P 500, Nasdaq for First Time Since 2020」

 

記者は違いますが、どちらもKaikoという暗号資産分析会社のデータを元にした「BTCの20日間ボラティリティが2020年以来初めてナスダック100とS&P500を下回った」という内容です。ナスダックより低いのは同年10月以来、S&P500のボラティリティ水準より下は8月以来ということです。


ただし、ボラティリティが低くなった具体的な要因については述べられていません。米金利や経済指標などに株式市場は依然として敏感ながらも、BTCは以前のような反応は見られないとだけ指摘しています。(その後、25日には反応しました)

 


短期トレーダーは軸足をBTC以外に移した?


金融商品の値動き度合いを示す「ボラティリティ」を言い表す場合、「高い」は価格変動が大きいことを意味し、つまりその商品を取引する上でリスクが高いという判断基準にもなります。逆に「ボラティリティが低い」場合は価格変動が小さく、リスクも低いということです。

 

短期で売買するトレーダーは特にボラティリティが高い市場を好みます。価格が頻繁に大きく動けば、リスクは高いでしょうが収益チャンスも多いからです。ボラティリティが低ければ、安全かもしれませんが収益チャンスは少ないでしょう。

 

個人的な推測ですが、先月から今月にかけてBTC市場から外国為替市場(FX)に主戦場を移した人が増えたのかもしれません。暗号資産とFXは取引手法が似ているともいえ、両方をトレードしている人も少なくはないでしょう。


英国ではトラス前首相の不手際で金融市場が混乱に陥り、FX市場ではポンドが乱高下しました。スナク新首相の誕生後も値幅を伴った動きです。またドル円も、本邦金融当局の無理やりの為替介入で不自然な値動きが見られました。ボラティリティの高まりを見てトレーダーの多くがFXに軸足を移し、それがBTCの動意を更に鈍くさせた(狭いレンジが続いた)要因の1つであっても不思議ではありません。




※Trading Viewより


HVの持ち直し、新たな動きの始まりか?


さて、25日から大幅反発でBTC市場にも活気が戻りつつあるように感じます。BTCドルの20日間ヒストリカル・ボラティリティ(HV)も24日に20近辺まで低下したところから一時29台まで回復しました。※↓のTrading Viewチャートの右端を参照


確かにまだまだ水準的には低い位置にいますが、新たなトレンド(上昇も下落もあり得る)の始まりかもしれません。 次回は、過去にHVが20付近まで低下または下回った後に持ち直した局面で、BTCがどのように動いたかなどを振り返ってみる予定です。



※Trading Viewより



この連載の一覧
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
第58回「ビットコイン、売り買い材料が交錯 あのトランプ氏も心変わり?」
第57回「リップルにつれ安、8月のビットコインは?そして6カ月後までに・・・」
第56回「ビットコイン、400万円台維持 ネガティブニュースも跳ね返す」
第55回「ビットコイン、ゴールドのように羽ばたけるか ただしETFはもう少し先かも?」
第54回「Simple is Best、相場は単純に考える ところでBTCが上がらない理由は?」
第53回「ビットコイン 円高の影響、分かれたヤツは元気」
第52回「ビットコイン、対円にしました!口座開設はもうお済み?」
第51回「現物ETF 承認への期待大! ただし一旦落ち着く必要も・・・」
第50回「ビットコイン、救世主が出現! 現物ETFへの期待高まる」
第49回「BTCの占有率上昇、ただし市場が盛り上がっているわけでは・・・」
第48回「ビットコイン SECの圧力はちょっと違う、底打ち感も?!」
第47回「ビットコイン 5月は失速、でも今年中には大幅上昇?!」
第46回「ビットコイン 動かず、過去2回はその後に大波」
第45回「G7は規制強化 交換業大手はカナダから日本へ」
第44回「ビットコイン 4カ月連騰、手数料高騰が懸念?」
第43回「ビットコイン 冬は終了?欲張り過ぎには要注意」
第42回「イーサリアム 待ち時間は延びる、BTC 10カ月ぶりの高値をつけるも・・・」
第41回「ビットコイン 約10カ月ぶりの高値、信じる者は・・・」
第40回「リップル 3月は元気いっぱい、裁判の終わりが見えた?!」
第39回「当局の圧力にも負けず、BTC買い衰えず」
第38回「ビットコイン 時価総額はメタ超え、強欲な感じも・・・」
第37回「まるでジェットコースター、ビットコイン 代替資産としての位置づけも」
第36回「ビットコイン とんだ雛祭りに、懸念材料は複数残る?」
第35回「ビットコイン 売り持ちファンドに資金流入、投資家の懸念を反映」
第34回「昨年6月以来の高値更新、ビットコインの上昇要因を探る」
第33回「ビットコイン とばっちり食らう、PoWには関係なし?」
第32回「ビットコイン、2月も底堅い クリスマスまでには?!」
第31回「イーサリアム、マージから4カ月半 伸び代あり?!」
第30回「悪いニュースに反応せず、アノマリーもあったとは」
第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

小針 卓哉の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております