暗号資産ウォッチャー これに注目!

第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」

ビットコイン、中東の地政学リスクに対しては?

 

代表的な暗号資産であるビットコイン(BTC)は10月11日22時時点、対円では405万円前後と前週(7日前)比で1.5%低い水準で取引されています。この1週間、420-421万円台では頭を抑えられ、一時402万円を割り込みました。


週末に中東の地政学リスクが急激に高まりました。ビットコインは強含む場面があったものの、週明け以降は避難資産(安全資産)というよりも「リスクには敏感な資産(リスク高だと売られやすい)」と受けとめられている動きです。


7日(土)の昼頃、パレスナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが、大規模な攻撃をイスラエル側に仕掛けました。イスラエルのネタニヤフ首相は「戦争状態」を宣言し、報復としてガザ地区に空爆を実行。

 

専門家の間では、1973年10月にエジプトとシリアがイスラエルを奇襲攻撃して始また「第4次中東戦争」と状況が似ている、との指摘もあるようです。そのため週明けの原油先物は急騰して始まりました。また、安全資産とされる金にも資金が向かいました。


 「金など安全資産の人気高まる見込み、ハマスのイスラエル攻撃で」ロイター

 


※Trading Viewより

 

 9月は被害も多かった


さて暗号資産分析サイトconglassによれば、9月のBTCのパフォーマンスは+3.9%と月間では7年ぶりのプラスでした。ただし、一部の人にとっては大変な月でもあったようです。

 

「September becomes the biggest month for crypto exploits in 2023: CertiK」cointelegraph

(9月が2023年で不正流出額が最大の月に)


ブロックチェーンセキュリティ・Certik社が、9月に盗難された暗号資産は総額で3億2980万ドル(1ドル=149円換算として491億4000万円)にも達したと発表。これは月間では、今年最大の規模とされています。

 

記事によると、被害総額の多くを占めたのが、ハッキングにより約2億ドルが流出した香港拠点のMixin Network(ミシン・ネットワーク)によるものでした。

「Mixin Networkから仮想通貨約300億円が不正流出」コインテレグラフ

 ※「Mixin Network(XIN)の解説」TOKEN ECONOMIST

 

また9月は、取引所CoinExが5300万ドル、オンラインカジノStake.comも4100万ドルの暗号資産ハッキングで損失が発生しました。北朝鮮のハッカー集団が双方に関与しているとされています。

 

コインテレグラフの記事では最後に、ブロックチェーンセキュリティ会社Beosinのデータも紹介しています。

 

それによれば、2023年第3四半期でハッキングや不正プログラム、詐欺などによる暗号資産の被害総額は8億9000万ドル弱だったようです。第1四半期の3億3000万ドル、第2四半期の3億3300万ドルの合計を超えた被害額でした。

 

BeosinのX(旧ツイッター)より

 

暗号資産において、ハッキングは常に隣り合わせということなのでしょう。やはり、どのように保管するかということは重要になってきます。

22年8月のコラム→第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」

 

ETH共同創設者のXアカウントも乗っ取りに!?

 

9月の事件といえば、イーサリアムの共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏のX(旧ツイッター)アカウントが乗っ取られたことも話題となりました。

「ヴィタリック・ブテリン氏Xハッキング|1億円の不正流出か」beincrypto


ブテリン氏のXアカウントが乗っ取られ、悪意のあるリンクとともに無料配布に関する記事が投稿されました。それを知らずに誘導されてウォレットを接続させてしまい、そこから資金が盗み出されてしまった人もいたようです。

 

アカウントは数日後に回復したものの、被害は約69万ドルにものぼりました。

 

さて、ブテリン氏が作ったイーサリアムのシステムがMergeというアップグレードを実施して1年経ちました。その後のイーサリアムについて、近々振り返ってみようかと思います。



この連載の一覧
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
第58回「ビットコイン、売り買い材料が交錯 あのトランプ氏も心変わり?」
第57回「リップルにつれ安、8月のビットコインは?そして6カ月後までに・・・」
第56回「ビットコイン、400万円台維持 ネガティブニュースも跳ね返す」
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第41回「ビットコイン 約10カ月ぶりの高値、信じる者は・・・」
第40回「リップル 3月は元気いっぱい、裁判の終わりが見えた?!」
第39回「当局の圧力にも負けず、BTC買い衰えず」
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第36回「ビットコイン とんだ雛祭りに、懸念材料は複数残る?」
第35回「ビットコイン 売り持ちファンドに資金流入、投資家の懸念を反映」
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第33回「ビットコイン とばっちり食らう、PoWには関係なし?」
第32回「ビットコイン、2月も底堅い クリスマスまでには?!」
第31回「イーサリアム、マージから4カ月半 伸び代あり?!」
第30回「悪いニュースに反応せず、アノマリーもあったとは」
第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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