暗号資産ウォッチャー これに注目!

第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」

 ソロナ(SOL)、ハッキング被害


先週の暗号資産(仮想通貨)関連で話題となった1つはこちらでしょう。「ソラナのウォレットで500万ドルのハッキング被害」(コインデスク・ジャパン 8月3日記事より)。


暗号資産ソラナ(SOL)に対応しているホットウォレット(インターネットに接続している暗号資産を管理するソフトウェア、デジタル財布)から、SOLが保有者の知らないうちに抜き出されていたということです。

 

※ウォレットでは暗号資産のアドレス作成や残高の確認ができ、送金するために絶対必要な秘密鍵(パスワードのようなもの)や受け取るための公開鍵を保管しています。


3日に配信されたニュースによると、ハッキング被害にあったウォレット数は8000以上、金額にして500万ドル(日本円で約6.6億円)以上が持ち去られました。さらにその後、4日時点では被害総額は800万ドル(10億円以上)にも達したようです。


ハッキングという暗号資産の不安視される部分が浮き彫りになってしまいました。


 

ハッキングを悪く言わないで?


ところで悪いイメージを持つ「ハッキング」という言葉ですが、調べると決して犯罪用語ではないようです。「ハードウェアやソフトウェアの解析や改造を行う」というIT関連の用語でした。

 

悪質なハッカーのことを最近はクラッカー(またはブラックハッカー)と呼び、その行為をクラッキングと言うようですね。つまり上のニュースもハッキングではなく、クラッキングという言い方が正しいということでしょうか。


意味の違いを理解したうえで、コラムではここからも「ハッキング、ハッカー」という言葉を使用します。


※出所:ALSOK「ハッキングとは」


言い方は何にしろ、暗号資産を保管している場所が今回のような攻撃でセキュリティを突破されてしまい、情報を抜き出されてしまうとその後どうなってしまうのでしょうか。


やはり、アドレス(持ち主)の匿名性が高いという性質上、その暗号資産は戻ってこないことを覚悟しておいたほうがよいでしょう。


※預けていた取引所がハッキングされ、顧客分を補填する場合もあります。しかしながら、盗まれた暗号資産が戻ってきたわけではありません。



SOL、意外と持ち堪える


今回標的とされたSOLとは、2020年に公開された「ソラナ」というブロックチェーン上で使用される独自コイン(内部通貨、※ネイティブトークン)です。執筆している8月7日時点でSOLの時価総額は約1兆8650億円、暗号資産の中では9番目の規模と若いわりには上位にいると言えるでしょう。


 ※ネイティブトークン、代表的なのはビットコイン・ブロックチェーンのビットコイン(BTC)やイーサリアム・ブロックチェーンのイーサ(ETH)などです。

 

 SOLは、トランザクション(取引などの情報処理)が非常に速いことや低コストが大きな特徴です。また、前もって決められたことを自動的に実行するスマートコントラクトや、異なるブロックチェーン同士を接続するテクノロジーを実装していることも強みとされています。


日本の暗号資産交換所では、「FTX Japan」のみがSOLを取り扱っています(8月7日時点)。日本ではこれからの広がりを期待されていた矢先のハッキング事件でした。

 

ここで、ハッキングのニュースが伝わった前後のSOLの値動きをチェックしてみましょう。前述の原文が配信されたのは、「Solana Wallets Targeted in Latest Multimillion-Dollar Hack」3日の9時台です。チャートの青○で囲んだあたりになります。



※出所:Trading view

 

ソロナのシステムを不安視して売りに走った人たちがやはり多かったようですね。約1時間での下落率は9%超でした。もっともその後、SOLへの売り圧力は意外と強まりませんでした。8月7日時点では3日につけた安値を下回っていません。


ハッキングはソロナネットワークの脆弱性によるものではないと、ソロナ財団が発表したことが安心感に繋がったと思われます。


暗号資産がハッキングされた場合でも、今回のように「暗号資産そのものには問題なし」との見解が示されると買い戻されるパターンをよく見ます。


※出所:ソロナ財団のツイート


慌てず、冷静に

 

暗号資産がハッキングされた場合、「そのブロックチェーンに欠陥があったのか?」または「暗号資産を使用したアプリや取引所が問題なのか?」、どちらになるのかが重要なポイントです。

 

暗号資産で一番古いビットコインも、有名なところではマウントゴックス事件など、何度もハッキングされたことが明るみになっています。しかしながら、ビットコインのシステムが原因ではなく、その事件の全ては取引所などのセキュリティの不備を突かれたことによるものでした。

 

今回のSOLのハッキングも、↑のソラナ財団ツイートでは、インターネットに接続して暗号資産を保管する「Slope」というホットウォレットに問題があったようですね。

 

さて今後、被害に直接あわないにしても、自分が保有しているものと同じ暗号資産がハッキングされたというニュースを見るかもしれません。ただそういったとき、パニック的に売ってしまうのは避けたいところです。


悪いニュースを受けて市場では売買スプレッドも広がっているはずです。思わず売ってしまったところが底値、ということにもなりかねません。


まずはハッキングの原因がどこにあったのかをネットで調べるということが大事でしょう。今回のソロナ財団のようにTwitterでアップデートされることも多いようです。

「慌てず、冷静に行動する」、投資をするうえでは非常~に重要です。

 

来週は、「それでは暗号資産をどうやって守るのか」について話したいと考えています。

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為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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