暗号資産ウォッチャー これに注目!

第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」

ビットコイン、再び失速・・・


代表的な暗号資産(仮想通貨)のビットコインは9月27日13時頃、対円では392万円付近と前週比(7日前比)では約2.3%低い水準での値動きです。この1週間で再び400万円台の維持に失敗してしまいました。

 

先週後半に売りが強まり、週末は下げ止まりましたが、週明け25日朝には386万円台まで売り込まれる場面がありました。

 

一方、為替相場ではドル円が昨年10月以来のドル高・円安水準となる149円台に乗せています。伸び悩んだBTC円とは真逆の動きです。ドル円が上昇し、BTC円は下落となれば、BTCドルの軟調さは容易に想像できます。


以下のチャートを見てみましょう。


※Trading Viewより


BTCドル、FOMCをきっかけに


ロウソク足は9月20日から26日までのBTCドル時間足です。青いラインは米国の長期金利の指標とされる10年国債利回り、オレンジラインはドルインデックスです。

※ドルインデックスは、ユーロや円など複数の主要通貨に対するドルの価値を指数化したもの。上昇はドル高、下落はドル安。

 

ピンクの細い縦ラインは、米国の中央銀行にあたるFRBが開いたFOMCが結果を公表した時間帯です。

※FRB=米連邦準備理事会、FOMC=米連邦公開市場委員会


既に多くのメディアでも取り上げていますが、FOMCでは市場予想通りに政策金利を据え置きました。ただし、FOMCメンバーの見通しやパウエルFRB議長の定例記者会見を経て、米国では金利が高い水準で長い期間維持されるとの観測が広がりました。

 

結果を受けて、米10年債利回り(↑のUS10Y、青いライン)は4.32%台から上昇基調を強めました。先週末には4.50%台に乗せ、今週は執筆時点までで4.56%台と2007年以来の高い水準を記録しています。


米金利の上昇に沿い、ドルインデックス(↑のDXY、オレンジライン)も堅調となります。104.80前後から今週は106.19前後まで上げ幅を拡大しました。


※パウエルFRB議長、Bloombergウエブサイトより


ここ最近は米金利やドル相場の動きにそれほど影響されていなかったBTCドルですが、今回は抗えませんでした。FOMC結果公表時には2万7200ドル付近でしたが、週末には2万6300ドル台、今週初めに2万6000ドルを割り込場面もありました。

 

この間の下落幅は約4.4%であり、確かに暗号資産としては大騒ぎするほどのものではありません。ただし9月11日を底に持ち直してきたところだけに、買い持ち組もやや諦めたところもあったようです。


また気になりだした、あのアノマリー


今回のBTC失速で、あのアノマリーがまた意識され始めています。そう、「弱い9月」というものです。

※金融市場で「アノマリー」と言う場合、合理的な根拠がある訳ではないものの「よく当たると言われている経験則・規則性」という意味。


第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」

 2017年から昨年まで、BTCドルは6年連続の月間マイナスで終えています。

 

では、今月はどの水準を下回れば7年連続のマイナス達成となってしまうのでしょうか。Trading Viewのチャートを参照すると、今月1日の日本時間9時(UTC、協定世界時0時)ではBTCドルが2万5930ドル辺り、BTC円が379万円付近で取引が始まりました。

 

残り数日、前述の水準がきにされた値動きとなるでしょう。


挫けない男、追加でご購入

 

BTC相場は勢い強まるかと思いきやスローダウンの繰り返しが続いています。そういったなかでも盛り上がり続けているのが、米ソフトウェア会社・マイクロストラテジーの共同創設者であり現会長のマイケル・セイラー氏です。


このコラムでも何度か取り上げている、世界で最もビットコインを信じている人の1人です。

第41回「ビットコイン 約10カ月ぶりの高値、信じる者は・・・


 

セイラ―氏の投稿によれば、マイクロストラテジー社は5445BTCを平均価格2万7053ドルで追加購入しました。これで同社は合計15万8245BTCを保有していることになります。分かりやすいようにBTC円を400万円とすると、円貨での保有総額は6329億8000万円です!


執筆時点でビットコインの総発行数は1949.7万BTCですので、一企業で全体の約0.8%を抱えていることになります。

「MicroStrategy Bitcoin Holdings Chart & Purchase History」

こちらのサイトで、マイクロストラテジー社の購入履歴が確認できます。


前述のセイラ―氏の投稿によれば、16万弱のBTCの持ち値(購入した平均価格)は2万9582ドル。現状の水準から3000ドル弱(1ドル=150円で45万円)上回っていますが、同氏は意に介さずのようです。


マイケル・セイラ―氏はX(旧ツイッター)にほぼ毎日投稿しており、それは多くがBTCに関連した写真と未来を信じた一言だけです。

こちら→https://twitter.com/saylor

BTCに不安を感じたとき覗いてみるのも、もしかしたら良いかもしれません。


↓はBTCが急落した8月17日の投稿です。

この連載の一覧
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
第58回「ビットコイン、売り買い材料が交錯 あのトランプ氏も心変わり?」
第57回「リップルにつれ安、8月のビットコインは?そして6カ月後までに・・・」
第56回「ビットコイン、400万円台維持 ネガティブニュースも跳ね返す」
第55回「ビットコイン、ゴールドのように羽ばたけるか ただしETFはもう少し先かも?」
第54回「Simple is Best、相場は単純に考える ところでBTCが上がらない理由は?」
第53回「ビットコイン 円高の影響、分かれたヤツは元気」
第52回「ビットコイン、対円にしました!口座開設はもうお済み?」
第51回「現物ETF 承認への期待大! ただし一旦落ち着く必要も・・・」
第50回「ビットコイン、救世主が出現! 現物ETFへの期待高まる」
第49回「BTCの占有率上昇、ただし市場が盛り上がっているわけでは・・・」
第48回「ビットコイン SECの圧力はちょっと違う、底打ち感も?!」
第47回「ビットコイン 5月は失速、でも今年中には大幅上昇?!」
第46回「ビットコイン 動かず、過去2回はその後に大波」
第45回「G7は規制強化 交換業大手はカナダから日本へ」
第44回「ビットコイン 4カ月連騰、手数料高騰が懸念?」
第43回「ビットコイン 冬は終了?欲張り過ぎには要注意」
第42回「イーサリアム 待ち時間は延びる、BTC 10カ月ぶりの高値をつけるも・・・」
第41回「ビットコイン 約10カ月ぶりの高値、信じる者は・・・」
第40回「リップル 3月は元気いっぱい、裁判の終わりが見えた?!」
第39回「当局の圧力にも負けず、BTC買い衰えず」
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第37回「まるでジェットコースター、ビットコイン 代替資産としての位置づけも」
第36回「ビットコイン とんだ雛祭りに、懸念材料は複数残る?」
第35回「ビットコイン 売り持ちファンドに資金流入、投資家の懸念を反映」
第34回「昨年6月以来の高値更新、ビットコインの上昇要因を探る」
第33回「ビットコイン とばっちり食らう、PoWには関係なし?」
第32回「ビットコイン、2月も底堅い クリスマスまでには?!」
第31回「イーサリアム、マージから4カ月半 伸び代あり?!」
第30回「悪いニュースに反応せず、アノマリーもあったとは」
第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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