BTC 上昇一服、米司法省の行動に警戒も
年始から順調に拡大していた暗号資産市場は、17-18日で上昇が一服しています。時価総額が市場全体の約41%を占めるビットコイン(BTC)は、19日9時時点で対ドルでは2万700ドル付近と前日比2.2%ほど下落した水準です。もっとも一週間前からだと18%の上昇、年初来では24%高を超えています。※CoinMarketCap参照
18日のNY昼前(日本時間の深夜)、BTCは値を急ピッチで下げる場面がありました。米経済指標の弱さが原因との見方もあるようですが、米司法省による規制強化への警戒感が材料視されました。
※Trading Viewより
昨年12月には、ロイターが「米司法省、バイナンス告発か否かで結論に遅れ=消息筋」と報道。そういったなか司法省は昨日、「major international cryptocurrency enforcement action(主要な国際暗号通貨の執行措置)」を発表しました。内容が明らかになる前、市場では交換業最大手バイナンスが訴えられるのではないかと憶測が広がったようです。
しかしながら結局は、香港拠点のあまり知られていない暗号資産交換所「Bitzlato」の創設者(ロシア人)に対する刑事告発でした。
安心感を取り戻したBTCはその後、下値を切り上げています。
もっとも米国株が売り優勢となったため、BTCの戻り幅も限られた感じです。Bloombergも報じた「暗号資産企業ジェネシス、週内にも破産申請の方向で準備-関係者」も相場の重しとなりました。
米金利への不安が和らぐ
さてBTCドルは先週末14日、昨年11月8日以来の2万ドル台乗せに成功しました。その後も買いが続き、今週前半には一時(暗号資産相場が暴落した)FTX騒動前の水準を取り戻しています。
※Trading Viewより
米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めが懸念されたほど長期化しないとの期待が膨らんでおり、これがBTCの下支えの1つとされています。前回の【暗号資産よもやま話】でも触れましたが、6日発表の12月米雇用統計で平均時給が想定以上に減速。12日には同月消費者物価指数(CPI)で米国のインフレ鈍化が確認されました。
昨年の暗号資産を手放す動きに繋がっていた1つは、物価上昇を抑制するためFRBがどの程度まで金利を引き上げるのか?という不安でした(「ビットコインもFOMCは無視できず」)。
まだまだ水準としては高いものの、インフレの頭打ちがほぼ確実視され、政策金利の着地点もある程度見えてきました。そういった面もあり、BTCや他暗号資産に資金が向かいやすくなっているのでしょう。
機関投資家の買い、クジラがショートカバー誘発
ビットコインの上昇に関しては、こういった観測記事もでています。
「ビットコイン価格上昇の原因はコインベースの機関投資家?──バイナンスのクジラも関係か」-コインデスク
BTCドルの取引価格について、米国の暗号資産交換業コインベースのほうがバイナンスよりも割高だったという話です。バイナンスの顧客層は個人投資家が主とされ、一方でコインベースは上場しているために機関投資家がより取引しやすいとされています。コインベースの取引価格が高いということは、機関投資家の買い意欲が強まっていることを示しているとの見方が紹介されています。
またバイナンス内でも、クジラと呼ばれる大口投資家たちが買い上げ、BTC先物で売り持ちにしていた人たちを締め上げたとも言われています。14-15日は週末、16日は米国が祝日だったということもあり、流動性が通常よりも薄かったことも値幅を伴った動きに繋がったのかもしれません。
暗号資産分析サイトcoinglassによれば、14日はBTCだけで約1.4億ドル相当(1ドル130円換算で182億円)のショートポジションが先物市場で買い戻されました。
※coinglass 清算データより、〇に囲まれたところが1/14
日銀が最後の一押しに
ところで18日の東京昼過ぎからBTCは、対円での買いが目立ちました。18日15時時点では280万円付近と、昨年12月30日につけた当時で約2年ぶりの安値215万円台から65万円弱ほど戻り幅は拡大。日銀による金融緩和維持の決定を受け為替市場で円売りが加速し、BTC円の上げに繋がりました。
もっとも海外市場で円があっさり買い戻されると、足もとでBTC円は266万円台と伸び悩んでいます。
※Trading Viewより
長らく大規模な金融緩和策を続けてきた日銀に対し、金利・債券市場を中心に修正期待が高まっています。次回の3月会合や黒田総裁の任期切れ4月会合で新たな方針が検討される可能性は高そうです。今後BTCを取引するうえでも、日銀や円金利の動向を注目する必要があるかもしれません。