暗号資産ウォッチャー これに注目!

第54回「Simple is Best、相場は単純に考える ところでBTCが上がらない理由は?」

単純にながらも重要な支持水準は

 

代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は7月19日19時時点、対円では419万円台と前週比では約2.5%低い水準で取引されています。この1週間は13日夜中につけた438万円台を戻りの高値に、18日には411万円台まで売り押されました。

 

BTCドルも3万1800ドル台と今年の高値を更新し、一時は昨年6月以来の水準まで上昇したものの失速し、2万9500ドル台まで売り戻されてしまいました。ただし、一巡後は3万ドルを挟み上下しています。

 

BTC円の日足チャートをみると上値が徐々に切り下がっています。ピンクのマークをつけたところです。上昇の勢いは確実に弱まっていると言えるでしょう。

 

では下サイドで重要なチャートポイントはというと、まずは4月11日の高値(当時の年初来高値)です。18日もほぼ同じ水準で止まりました。同水準は2カ月以上も超えられず、そして一旦上抜けると上昇に勢いがついたレベルです。

 

またその下にも4月30日高値、そして区切りの良い400万円付近は5月29日と6月30日の高値です。今後これらの水準がサポートされるかが、BTC円のチャート上では重要になってくるでしょう。

 

「暗号」という言葉がつく投資商品だからと言って、なにも複雑な見方をする必要はないと思います。単純なチャートの見方で取引するのはありです。「Simple is best」で良いと私は考えています。



※Trading Viewより

 

「よもやま話」から「ウォッチャーへ」

 

約1年前から始まった「いまから投資」サイトにおける暗号資産についてのコラムですが、【暗号資産よもやま話】から【暗号資産ウォッチャー これに注目!】というタイトルに変更させていただきます。

 

暗号資産で時価総額が一番大きいビットコインを中心とした話とはなりますが、イーサリアムやその他主要な(時価総額20位くらいまで)アルトコインにも話題を広げていくつもりです。

 

市場は今、何を材料視しているのか(していたのか)、取引する上で、または取引しないまでも暗号資産を見る上で何に気を付けるべきなのかをお伝えできればと考えています。

 

米証券取引委員会(SEC)、現物ETFの審査開始

 

さて、先月にビットコインが急騰した要因となった、米国の大手資産運用会社ブラックロックによるビットコイン現物ETF(上場投資信託)ですが、米証券取引委員会(SEC)は審査プロセスを開始したようです。

 

また、ブラックロックに前後して申請された複数のビットコインETFについても審査が始まったと報じられています。米国で初めて、先物ではなく現物のビットコインETF誕生が近づいているように感じられます。

 

しかしながら期待感の高まりに反し、このところのBTC相場は上げては頭を抑えられるという状況です。

 

ビットコイン、上がらない理由はこれ?

 

暗号資産ニュースサイトのコインテレグラフは、ビットコインの売り圧力になり得るものを2つ挙げています。

 

1つは、約10年前に世界最大のビットコイン取引所だったにもかかわらず破産したマウントゴックス(Mt.Gox)に関連したものです。当時、日本にあった同取引所がハッキングされて80万ビットコイン(BTC)!が失われました。

 「2023年で最大のイベントか: Mt. Goxのビットコイン弁済が市場に与える影響」

 

ハッキングされた全額の回収は無理でしたが、マウントゴックスは14万2000BTCと14万2000ビットコインキャッシュ(BCH)を保有。世界中で1万人以上いるとされる債権者に、10月末までに弁済することになっています。

 

それらが換金された場合の市場インパクトは、今の相場環境からするとそれほど大きくないと言う人は多いです。しかしながら弁済時期が近づくにつれ、売り圧力を懸念する見方が広まるかもしれません。

 

もう一つが、ビットコインが唯一の決済手段とされたシルクロードという闇サイトに絡んだものです。サイトの創設書とされる人物が10年前にFBIに逮捕され、その創設者が保有していた14万4000BTCも米政府に押収されました。

 「米国政府 シルクロードで押収した3億ドル近いビットコインを移動」

 

記事によれば、米司法省と紐づけられる暗号資産ウォレットが12日、約9825BTC(約403億円)を移動させたというのです。かなり分散されているようではありますが、14万以上のBTCを売却する前触れと見る人もいるようです。

 

※映画シルクロード.COM


もしマウントゴックスやシルクロード関連のBTCが換金されるのであれば、水準に関係なく売却されることが予想されます。上げ相場中であれば売りが出たとしても、おそらく調整の範囲に留まるでしょう。しかし下げ相場のときに売り物が出てくると、下落を加速させてしまうかもしれません。結局はタイミング次第ということになります。


ただし、そのタイミング分からないフローを気にしても仕方ありません。これから取引したい、または既にポジションがあるのならば、ここから下げた場合にどうするかという戦略を考えておくというのが大事になります。

この連載の一覧
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
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第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
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第50回「ビットコイン、救世主が出現! 現物ETFへの期待高まる」
第49回「BTCの占有率上昇、ただし市場が盛り上がっているわけでは・・・」
第48回「ビットコイン SECの圧力はちょっと違う、底打ち感も?!」
第47回「ビットコイン 5月は失速、でも今年中には大幅上昇?!」
第46回「ビットコイン 動かず、過去2回はその後に大波」
第45回「G7は規制強化 交換業大手はカナダから日本へ」
第44回「ビットコイン 4カ月連騰、手数料高騰が懸念?」
第43回「ビットコイン 冬は終了?欲張り過ぎには要注意」
第42回「イーサリアム 待ち時間は延びる、BTC 10カ月ぶりの高値をつけるも・・・」
第41回「ビットコイン 約10カ月ぶりの高値、信じる者は・・・」
第40回「リップル 3月は元気いっぱい、裁判の終わりが見えた?!」
第39回「当局の圧力にも負けず、BTC買い衰えず」
第38回「ビットコイン 時価総額はメタ超え、強欲な感じも・・・」
第37回「まるでジェットコースター、ビットコイン 代替資産としての位置づけも」
第36回「ビットコイン とんだ雛祭りに、懸念材料は複数残る?」
第35回「ビットコイン 売り持ちファンドに資金流入、投資家の懸念を反映」
第34回「昨年6月以来の高値更新、ビットコインの上昇要因を探る」
第33回「ビットコイン とばっちり食らう、PoWには関係なし?」
第32回「ビットコイン、2月も底堅い クリスマスまでには?!」
第31回「イーサリアム、マージから4カ月半 伸び代あり?!」
第30回「悪いニュースに反応せず、アノマリーもあったとは」
第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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