暗号資産ウォッチャー これに注目!

第34回「昨年6月以来の高値更新、ビットコインの上昇要因を探る」

大幅上昇も2万5000ドル台と330万円台が難所

 

代表的な暗号資産であるビットコイン(BTC)は2月22日23時過ぎ、対ドルで2万4000ドル前後/対円では323万円付近と前週比で5%以上も高い水準にいます。年初来では45%の上昇率という位置です。

 

この1週間、BTCは乱高下しながら上値を伸ばしました。まずは、対ドルでの値動きを振り返ってみましょう。

 

15日夜に2万2500ドルを超えてきた辺りから買いの勢いが増し、そこから16日朝までに10%以上も上げ幅を拡大しました。同日の真夜中には昨年8月半ば以来となる2万5000ドル台乗せを達成しています。

 

17日朝には一転2万3300ドル台まで急落するも、そこから再び持ち直し、週末には2万5000ドル台を回復しました。21日夕方には2万5280ドル付近と年初来の高値を更新しています。

 

その後21日夜中からは伸び悩み、翌日には2万4000ドル割れまで水準を落としました。明らかに2万5000ドル台というのが市場で意識されている水準ということが分かります。

 

※Trading Viewより

 

BTC円も296万円あたりから338万円まで暴騰。そこから313万円まで急落しましたが、週末にかけて切り返します。21日には、一部取引所で340万と昨年6月以来の高値を記録しました。

 

しかしながらその後、22日夜中には一時320万円割れまで売り戻されています。こちらは330万円台というのが難所のようです。


※Trading Viewより

 

大きく上げた要因を探る

 

この1週間、BTCが大相場となった要因は複数あると思われます。どういった材料で動いたかを知ることはトレードするうえで重要ですので、一緒に探っていきましょう。

 

まずは、米国の1月小売売上高や消費者物価指数(CPI)が予想を上回り金利先高観が強まったにもかかわらず、金利上昇はネガティブとされる「ナスダック総合」は底堅く推移したこと。BTCの先行指標とも言える同指数の動きを見て、買い安心感が広がったようです。

 

もっとも21日には米金利の上昇が更に進み、さすがに米株も大きく水準を下げました。それがBTCの売り戻しにもつながっています。

 

※Trading Viewより

 

あまり関係ない話で売られた反動

 

今月の9日前後からBTCは、ステーキング騒動に巻き込まれて売られていました。

第33回「ビットコイン とばっちり食らう、PoWには関係なし?」

※ステーキング、保有する暗号資産をそのブロックチェーン・ネットワークに預け、ネットワーク維持に貢献した報酬として暗号資産を得る。

 

ただしかし、BTCはプルーフ・オブ・ワーク(PoW)を採用しており、米当局によるステーキング規制に直接関係ありませ。そのため、材料が出尽くした後の「反動」という面もあったのでしょう。

 

米国の規制強化を懸念し、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)の暗号資産からBTCに資金を移動させる動きも見られた、という声も一部から聞かれました。

 

ビットコインのNFT?!

 

ビットコインのブロックチェーン・ネットワークを使ったNFT(ノンファンジブル トークン、非代替性トークン)の発行が急激に増えていることも、BTC買いに拍車をかけたという見方もあるようです。

 

「ビットコインの次の上昇はNFTによるものかもしれない」コインデスク

こちら↑は8日の記事ですが、その後15日には↓記事が出ています。

 「ビットコインが4400万のノンゼロアドレスを達成、Ordinalsの影響か」コインテレグラフ

 

※NFTとは偽造不可な所有証明書付きのデジタルデータのこと。

「NFT(ノンファンジブルトークン)とは」? DMMBitcoinサイトより

 

ヘッジファンドの御大も出動

 

「Billionaire George Soros' Fund Dives Deeper on Crypto Bets」coindesk

 著名投資家ジョージ・ソロス氏の巨額な自己資産を運用する「ソロス・ファンド・マネジメント」が暗号資産関連への投資を拡大したという記事です。マイニング企業「マラソン・デジタル」の転換社債を購入したことが明らかになりました。

 

また、ソロス・ファンドはBTCの大量保有で知られる米マイクロストラテジーの株式を引き続き保有していました。これは同ファンドがBTC投資に積極的という印象を与えました。


ソロス氏はファンドの運用にもう直接関わっていはいませんが、伝説の投資家(の名前がついたファンド)を崇拝する市場参加者はまだ多いのかもしれません。

※ジョージ・ソロス氏、AFP・時事通信より

 

そして急反落、またバイナンスが・・・

 

17日朝には一転し、BTCが急落する場面がありました。高値をつけた8時間後には7%以上も下げ幅を広げています。下落を加速させたのは暗号資産交換業で最大手のバイナンスに関するニュースでした。

 

「バイナンス、CEO運営会社に「米提携先」から4億ドル移管」ロイター

「暗号資産のバイナンス、対米投資を一部撤回=CEO」ロイター

 

ただし、「バイナンス、米国の規制当局からの罰金を受け入れに向け協議中=報道」(コインテレグラフ)ということもあり、パニック的な売りが終わると買い戻されています。

 

香港が規制を緩和、BTCは年初来高値を更新

 

21日のアジア午後にBTCは対ドルや対円で急ピッチで買われ、年初来高値を更新しました。

 

こちらはおそらく↓が要因かと思われます。

「仮想通貨の中心地目指す香港、個人投資家の取引容認を計画」bloomberg

「香港証券先物委員会、暗号資産取引所の規制について意見募集」BITTIMES

 

これに対し、暗号資産取引やマイニングを禁止している中国本土の反応が注目されましたが、暗号資産ハブを目指す香港を支持する姿勢のようです。

「China’s Capital Reportedly Backs Hong Kong’s Vision as a Crypto Hub」watcher guru


中国は14億人以上の人口を擁し、経済規模は世界第2位です。暗号資産市場にとっても、その動向は無視できない存在です。

この連載の一覧
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第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
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第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
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第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
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第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
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第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
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第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
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第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
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第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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