暗号資産ウォッチャー これに注目!

第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」

BTC、前週比マイナス・・でもFOMCおかげで

 

代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は12月14日10時頃、対円では611万円付近と前週(7日前)比で約5.5%の下落率です。BTCドルも4万2700ドル台と前週比ではマイナスですが、2.5%程度の下落幅に留まっています。

 

為替相場でドル売りが強まり、ドル円が146円台から142円前半までドル安円高に傾いた影響をBTC円は受けました。

 

米国の13日午後(日本時間では14日未明)、世界の金融市場が注目する米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が公表されました。その後のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の定例記者会見も含めて、来年は米金利が低下するとの見方が広まりました

 

米長期金利の指標である10年国債利回りは、一時8月10日以来の水準となる4.00%半ばまで低下。ニューヨーク時間の引け水準も4.01%台と、1日の下落率は18ベーシスポイント(bp)以上にも達しました。

 

より金融政策に敏感に反応する米2年債利回りに至っては、4.42%台と前日比で30bpも低下幅を広げています。米金利先安観の強まりは株式市場にとってはプラス材料(資金調達などのコストが低下)とされ、ダウ平均は過去最高値を更新しました。

 

米金利低下を受けたリスク志向の強まりもあり、BTCドルもこの日に限ってみると、欧州序盤の4万1000ドル台から一時4万3400ドル台と約5.5%高まで上げ幅を拡大しました。


 

※Trading Viewより

 

荒っぽい動きだった1週間

 

BTCの1週間を振り返ると、かなり激しい動きだったと言えるでしょう。

「ビットコインが一時7.5%安、利益確定の動きで」Bloomberg

 BTC円は先週末に再びムクムクと値を上げたものの、648万円台までと6日早朝に達成した650万円台に再び乗せることはできず。伸び悩んでいた週明け、急にドスンと下落しました。


Bitcoin wipes nearly a week of gains in 20 minutes」cointelegraph

(ビットコイン、20分で1週間分の上昇分を吹き飛ばす)

 こちらはBTCドルの記事ですが、BTC円も11日の東京昼前に635万円を割り込むと、そのまま595万円台まで急落しています。

 

一巡後は持ち直し、夜には620万円超えまで反発する場面もありました。しかしながらニューヨーク勢が本格参入すると下落圧力がまた強まり、一部取引所では588万円台まで売り込まれました。

 

その後600万円を挟み上下しながら、底堅くなりつつあったところにFOMCを経て一時620万円台を回復しました。

 

※Trading Viewより

 

ロングの投げ、そうはいってもまだ10%

 

暗号資産分析サイトcoinglassはX(旧ツイッター)で、「Largest longs liquidation in the last three months」(過去3カ月間で最大規模の買い建玉の清算が起きた)と述べています。

 

以下が、coinglassサイトに記載されていた清算チャートです。

 


「ビットコインのフラッシュクラッシュとは」コインデスク

 

こちらの観測記事では、今回の急落(フラッシュクラッシュ)の原因についてよく分からないとしながらも、「利益確定の合理的なプロセス」という意見を取り上げています。ただし、暗号資産デリバティブ(先物やオプション)市場におけるレバレッジの大きさが調整を加速させたとの見方もあるようです。

 

※レバレッジとは「てこの原理」という意味であり、投資では保有資金よりも大きな金額で取引ができることです。

 

さて今回の下げでは、年初来高値の654万円台から10%の下落率でした。

 

金融市場では、高値から20%下落すると弱気相場入りの兆候と見なされることがあります(あくまでも一般論、明確な定義ではない)。もっとも、その程度なら暗号資産ではありがちとも言え、まだ下落トレンド転換を気にする時点ではないのかもしれません。

 

この連載の一覧
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
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第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
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第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
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第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
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第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
第58回「ビットコイン、売り買い材料が交錯 あのトランプ氏も心変わり?」
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第56回「ビットコイン、400万円台維持 ネガティブニュースも跳ね返す」
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第43回「ビットコイン 冬は終了?欲張り過ぎには要注意」
第42回「イーサリアム 待ち時間は延びる、BTC 10カ月ぶりの高値をつけるも・・・」
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第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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