暗号資産ウォッチャー これに注目!

第131回「ビットコイン、大統領令への期待先行 東欧の国からも準備金の考えが?!」

ビットコイン、大統領令への期待と…

 

代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は2025年1月29日20時頃、対円では1595万円前後と、前週(7日前)比およそ2.9%安で推移しています。BTCドルが10万2400ドル付近での値動きです。

 

BTC円は23日夜にBTC円は1590万円台から1670万円まで上昇します。BTCドルも10万1000ドル前後から10万7000ドル付近まで切り返しました。トランプ米大統領が署名する暗号資産関連への大統領令への期待感が高まったようです。

 

そして現地時間23日夕刻、日本時間では24日早朝、ついにトランプ大統領は「デジタル金融技術における米国のリーダーシップ強化(STRENGTHENING AMERICAN LEADERSHIP IN DIGITAL FINANCIAL TECHNOLOGY)」という大統領令にサインしました。


 期待されたビットコインの戦略的な備蓄に関しては、まずは「デジタル資産市場作業部会」が設置されました。そこで、国家デジタル資産備蓄の創設および維持の可能性についての評価が行われます。180日以内に「市場構造やリスク管理、法的枠組みなどを含む内容」が大統領に報告されます。

 

ただ、ビットコイン準備金を待ち望んでいた人たちには物足りなかった面もあったようで、大統領令の発表後は売られる場面もありました。

 

※Trading Viewより

 

デジタル資産備蓄に関しては

 

大統領令の「国家デジタル資産備蓄(NationalDigitalAssetStockpile)」の創設および維持の可能性について、評価の仕方は以下になります。

 

Ⅰ.概要

国家デジタル資産備蓄とは、政府が保有・管理する暗号資産(デジタル資産)のストック(備蓄)を指す。この備蓄は、国家の経済的・金融的安定を支えるための新たな資産管理手法として検討される。

 

Ⅱ.検討のポイント

(a)備蓄対象となるデジタル資産の種類

備蓄対象として考えられるのは以下のような資産:

・ビットコイン(BTC):最も普及しており、デジタルゴールドとしての価値が高い

・ステーブルコイン(USDT、USDCなど):ドルにペッグされた資産で価格安定性が高い

・押収した暗号資産:連邦政府が犯罪捜査や制裁執行の過程で押収した資産を再利用

・その他合法的な暗号資産:イーサリアム(ETH)など

 

(b)資産の取得方法

国家デジタル資産備蓄を構築する方法として以下の手段が考えられる:

1.法執行機関による押収資産の転用

・司法省(DOJ)、国土安全保障省(DHS)などが違法行為の取り締まりの一環で押収した暗号資産を国家備蓄へ移転

・現在、押収資産は競売によって売却されているが、これを備蓄として保持する方向へシフト

 

2.政府による市場購入

・政府が戦略的に暗号資産を市場で購入し、備蓄として保有

・価格変動リスクや市場への影響を考慮する必要あり

 

3.連邦政府発行のデジタル資産の活用

・政府独自のブロックチェーン資産を発行し、備蓄資産の一部とする可能性

・ただし、CBDC(中央銀行デジタル通貨)は本命令で禁止されているため、異なる形態を模索する必要あり

 

(c)国家備蓄の目的と活用方法

1.財政的バックアップ

・外貨準備や金準備と同様に、経済危機時の価値保全手段として活用

・ドル安やインフレに対するヘッジ資産として機能

 

2.金融政策・規制戦略への活用

・民間市場におけるデジタル資産の流通量や価格に影響を与える政策ツールとして機能

・国家が一定量を保有することで市場安定化を図る可能性

 

3.サイバーセキュリティ・制裁措置との連携

・犯罪組織やテロ資金供与ネットワークの資産凍結の一環として活用

・政府が押収した資産をそのまま備蓄に移行し、運用することで国庫収入としての役割を果たす


(d)リスクと課題

・国家デジタル資産備蓄の導入にはいくつかの課題もある

・価格変動リスク:暗号資産のボラティリティが高く、評価額の急変リスクがある

・サイバーセキュリティリスク:国家備蓄がハッキング対象となる可能性

・国際規制との整合性:他国の暗号資産規制と整合性を取る必要がある


 


Ⅲ.今後の展開

・180日以内に大統領へ報告書を提出(市場構造、リスク管理、法的枠組みを含む)

・備蓄の正式導入が決定すれば、新たな国家デジタル資産管理機関が設立される可能性あり

・国際的なデジタル資産の規制動向を注視しつつ、米国が戦略的にリードできる形を模索

 

チェコ中銀がビットコインを?米国の州でも…

 

1月27日にリスクオフの動きが強まり、ビットコインも下落します。中国発の生成AI「DeepSeek」が、これまでの米国主導を脅かすとの懸念が高まりました。もっとも、翌日にはあっさりとリスクオフが巻き戻されます。

「ディープシークが発端のビットコイン売りは買い場の機会:アナリスト」コインデスク

 

また東欧からはこんなニュースも出てきました。

「チェコ中銀、ビットコインを外貨準備に 総裁が提案へ=FT」ロイター通信


英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のインタビュー内容をロイターが報じています。チェコ国立銀行(中央銀行)の総裁が、暗号資産ビットコインを外貨準備に組み入れるよう理事会で提案する考えあると報じています。記事によればチェコの外貨準備高1400億ユーロの最大5%、つまり70億ユーロ(1ユーロ=161円換算で1兆1270億円)がビットコインに向かうというのです。



また米国に話は戻りますが、複数の州でビットコインを戦略的な準備金にという動きが進んでいます。

「アリゾナ州・ユタ州の委員会で戦略的ビットコイン準備金法案が可決…」BITTIMES

 

ビットコインへの流れは変わらないどころか、強まっているように見えます。

この連載の一覧
第133回「ビットコイン、悪材料を消化し新たなETFや準備金への期待 米国は先を行く」
第132回「ビットコイン、2月に入ると一時急落 関税が暗号資産でもキーワードに?!」
第131回「ビットコイン、大統領令への期待先行 東欧の国からも準備金の考えが?!」
第130回「ビットコイン、また最高値を更新 TRUMPに振り回される」
第129回「ビットコイン、1月から激しい動き 米司法省への懸念よりもトランプ氏への期待感が強い」
第128回「ビットコイン、とても良い年だった2024年・復習も大事 今年は国家が?!」
第127回「ビットコイン、対円では日銀が支えとなるも FOMCは依然として重しに イーサリアムETFは順調」
第126回「ビットコイン、高値からの下落幅は調整の範囲内 期待一巡からアルトコインは弱い」
第125回「ビットコイン、最高値更新後の急落 しかし嵐が過ぎ去ればまた」
第124回「ビットコイン、新SEC委員長への期待高まる 韓国騒動への反応は一時的」
第123回「ビットコイン、米国では規制緩和への期待高まる 日本でもやっと?」
第122回「ビットコイン、そりゃ上がるわ 現物ETFへの資金流入が急拡大 あのFRB高官の見方に変化も」
第121回「ビットコイン、どうにも止まらない あの企業はやはり買い増し・米国は戦略的な…」
第120回「ビットコイン、最高値更新はトランプ様のおかげ 単なる投資対象としてではなく…」
第119回「ビットコイン、対円では最高値を更新 強気材料が目立つなか…あの国は」
第118回「ビットコイン、クジラが活発化 米大統領選を材料視…」
第117回「ビットコイン、7月以来の高値圏まで上昇 取引所からの残高減少が?」
第116回「ビットコイン、必要なのか? 尋ねてみた…BTC円は先月高値に迫る 」
第115回「ビットコイン、9月は2年連続の上昇 10月は好調なはずなのに・・・」
第114回「ビットコイン、回復基調 利下げはやはり!!副大統領は初めて暗号資産に言及」
第113回「ビットコイン、米利下げの影響は? ところで詐欺に合わないために・・・」
第112回「ビットコイン、伸び悩み ファンドから資金流出 昨年の暗号資産詐欺のトレンドは?」
第111回「ビットコイン、夏バテか? 残暑も厳しく 曲がり屋とされるあの人は」
第110回「ビットコイン、上値トライは失敗 チャットアプリ騒動が影響?」
第109回「暗号資産税制、隣の芝は青く見え過ぎた 1年以上保有すると・・・」
第108回「ビットコイン、米インフレ減速も上昇の勢いは・・・相場って難しい 米投資銀行が現物ETFを所有」
第107回「ビットコイン、夏バテ気味 リスク回避の流れに逆らえず」
第106回「ビットコイン、失速するも月間ではプラス維持 トランプ氏がビットコイン大国を掲げる」
第105回「ビットコイン、分散化が強さ 米大統領選の影響はより不透明に」
第104回「ビットコイン、大幅反発はトランプ氏のおかげ? イーサリアムもついに!」
第103回「BTC、2月以来の安値更新 独政府やMt.Goxなど売り材料目立つ ただし一巡後は持ち直す」
第102回「ビットコイン、半値戻しまで 日本の投資家は暗号資産に興味あり?!」
第101回「ビットコイン、週明けに売り強まる マウントゴックスがついに?!」
第100回「ビットコイン、ダブルトップ形成で下落?! アルトコインの影響も無視できず」
第99回「ビットコイン、対円では最高値更新も・・・ 米イベントで右往左往」
第98回「ビットコイン、ハッキングもなんのその こんどは豪とタイが!」
第97回「ビットコイン、占有率が下がり気味・・・ 現物イーサETFの取引は?!」
第96回「ビットコイン、対円では最高値更新 ETHもついに?!」
第95回「ビットコイン、弱い米指標が助けに?! ウィスコンシン州がお買い上げ」
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
第58回「ビットコイン、売り買い材料が交錯 あのトランプ氏も心変わり?」
第57回「リップルにつれ安、8月のビットコインは?そして6カ月後までに・・・」
第56回「ビットコイン、400万円台維持 ネガティブニュースも跳ね返す」
第55回「ビットコイン、ゴールドのように羽ばたけるか ただしETFはもう少し先かも?」
第54回「Simple is Best、相場は単純に考える ところでBTCが上がらない理由は?」
第53回「ビットコイン 円高の影響、分かれたヤツは元気」
第52回「ビットコイン、対円にしました!口座開設はもうお済み?」
第51回「現物ETF 承認への期待大! ただし一旦落ち着く必要も・・・」
第50回「ビットコイン、救世主が出現! 現物ETFへの期待高まる」
第49回「BTCの占有率上昇、ただし市場が盛り上がっているわけでは・・・」
第48回「ビットコイン SECの圧力はちょっと違う、底打ち感も?!」
第47回「ビットコイン 5月は失速、でも今年中には大幅上昇?!」
第46回「ビットコイン 動かず、過去2回はその後に大波」
第45回「G7は規制強化 交換業大手はカナダから日本へ」
第44回「ビットコイン 4カ月連騰、手数料高騰が懸念?」
第43回「ビットコイン 冬は終了?欲張り過ぎには要注意」
第42回「イーサリアム 待ち時間は延びる、BTC 10カ月ぶりの高値をつけるも・・・」
第41回「ビットコイン 約10カ月ぶりの高値、信じる者は・・・」
第40回「リップル 3月は元気いっぱい、裁判の終わりが見えた?!」
第39回「当局の圧力にも負けず、BTC買い衰えず」
第38回「ビットコイン 時価総額はメタ超え、強欲な感じも・・・」
第37回「まるでジェットコースター、ビットコイン 代替資産としての位置づけも」
第36回「ビットコイン とんだ雛祭りに、懸念材料は複数残る?」
第35回「ビットコイン 売り持ちファンドに資金流入、投資家の懸念を反映」
第34回「昨年6月以来の高値更新、ビットコインの上昇要因を探る」
第33回「ビットコイン とばっちり食らう、PoWには関係なし?」
第32回「ビットコイン、2月も底堅い クリスマスまでには?!」
第31回「イーサリアム、マージから4カ月半 伸び代あり?!」
第30回「悪いニュースに反応せず、アノマリーもあったとは」
第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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