8月、今年は違うのか?
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は8月29日1時時点で、対円では853万円台と前週(7日前)のほぼ同時刻と比べると約4.3%低下した水準で取引されています。BTCドルは5万8800ドル台での推移です。
BTC円は23日夜に900万円台に乗せ、一旦もみ合った後に24日早朝には8月2日以来の高値圏となる939万円台まで上昇しました。BTCドルも6万5000ドルに届き、暴落した5日安値からの上昇率は30%を超えました。
BTC相場は底を打ったとの見方が広がり始め、8月は2022-23年と2年連続で10%以上の月間マイナスとなった月ですが、今年は違うとの声も高まってきました。
※Trading Viewより
パウエルさんの発言が助けに?!
楽観論を呼び込んだのは、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言でした。
パウエルFRB議長は23日、ジャクソンホール会議での講演で「政策を調整する時が来た」「インフレ率が2%への軌道にあるとの確信強めた」と言及。また、「労働市場がこれ以上減速することを歓迎しない」とも述べました。
米金融政策を司るFRBのトップが「利下げを明言した」と市場は受け止めたようです。
米金利先安観の高まりを好感し、株価は上昇しました。またリスク資産に位置づけられるビットコインにも資金が向かいました。
※NHKウェブサイトより
ETFに資金は入れど・・・
米国で上場されている現物ビットコインに連動する複数のETFの取引も好調でした。
「Spot bitcoin ETFs see eighth day of inflows・・・」THE BLOCK
(現物ビットコインETFへの流入は8日連続・・・)
8月15日から26日まで、現物ビットコインETF全体では8日連続の流入超となりました。
しかしながら、週明け26日からBTC相場は失速します。
従来の金融商品のようなBTC指数のオプションを上場し、ビットコイン取引に幅を持たせるようとする動きも相場の支えとなりませんでした。
「米ナスダックがビットコイン指数オプション上場を申請」ロイター
ロシアが国際決済に暗号資産を活用するため、試験事業を9月から開始するとの報道への反応も極めて限定的でした。
なおロシアは今月前半に、暗号資産のマイニングを合法化しています。
※Trading Viewより
テレグラム創業者の逮捕が・・・
週明けは、ビットコインだけでなく暗号資産全般に弱含みました。そのきっかけの1つは、ロシア発のチャットアプリ・テレグラム(Telegram)の創業者が逮捕されたことにあるようです。
「テレグラム創業者ドゥーロフ氏、フランスで逮捕|TON価格は急落」Crypto Times
テレグラムの創業者のドゥーロフ兄弟の1人、パーヴェル・ドゥーロフ氏をフランス当局が拘束しました。理由として同国司法省は、テレグラムが麻薬取引や児童虐待、詐欺などの違法な活動を助長したと主張しています。
私は使用したことがありませんが、テレグラムの特徴として高度な暗号化機能が挙げられています。メッセージが暗号化され、プライバシーもしっかりと保護されているということです。シークレットチャット機能もあり、一定時間後にメッセージが自動的に削除されるというのも他のチャットアプリと違うところでしょう。
この暗号化で、違法な行為を支援したというのが当局側の言い分のようです。
トンコイン(TON)、テレグラム騒動で急落
このテレグラム内で簡単に送受金できる暗号資産がトンコイン(TON)です。TON独自のブロックチェーン上で動作し、超高速かつ低い手数料で知られています。また、匿名性も他の暗号資産よりも高いと言われています。
暗号資産情報サイトCoinMarketCapによればこのTON、執筆時点で時価総額が142億6759万ドルです。1ドル=145円で計算すると2兆688億円にもなります。テザーやUSDコインなどのステーブルコインを除いた暗号資産の時価総額ランキングでは、ドージコイン(DOGE)に次いで7位に位置しています。
テレグラムの創業者がTONの基となったブロックチェーンネットワークを開発し、暗号資産を発行していました。2020年以降にテレグラムはTONネットワークの運営から離れましたが、テレグラムのユーザー基盤がTONにとっても重要なことに変わりありません。
今回の逮捕報道で、相場がパニック的なTON売りに走ったのはしょうがないことでしょう。TONは対ドルで直近高値から一時25%以上も下落しました。
テレグラム/TONとは何ら関係のない他の暗号資産は暫く踏み止まっていましたが、アルトコイン上位の戻りの鈍さが徐々に相場全体の重しとなりました。
もう暫くはテレグラム騒動を見極める必要があるのかもしれません。