暗号資産ウォッチャー これに注目!

第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」

ビットコイン 年初来で67%弱の下げ幅!

 

暗号資産で最も古く、そして時価総額が最大のビットコイン(BTC)は11月22日19時時点で対ドルでは1万5700ドルをやや割り込んだ水準で推移。1週間前から約6.5%下落し、1カ月前からだと18%超安、そして年初来では67%弱まで下落幅が広がっています。

 

暗号資産市場のなかで時価総額が2番目に大きいイーサ(ETH)は更に弱く、対ドルで1080ドル前後と前週比14%を超える下落幅を記録。年初来では70%安まで売り込まれています。

 

今月前半に起きた暗号資産交換所FTXトレーディングと約130のグループ企業の破綻の影響は色濃く残ったままです。

【暗号資産よもやま話】第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」

 

※CoinMarketCap 11月22日19時頃

 

時代の寵児、ただのずさんな男?

 

一時は暗号資産業界の寵児、ヒーロー、救世主、白馬の騎士と言われたサム・バンクマン・フリード氏が率いたFTX。同社が米連邦破産法11条(チャプター11)を申請時、推定負債額は100億(約1兆4000円)ドルから500億ドル(7兆円)とされました。最小から最大まで5兆円以上の差があるという、大規模な破産という以外は今後が全く見通せない状態でした。

「FTXトレーディングが経営破綻 顧客資産の返還焦点NHK11月14日記事

 

その後、FTXは企業の体をなしていなかったことが、同社清算のため新たなCEOとなったジョン・レイ氏によって明らかにされました。

 

以下の記事で同氏は、FTXは経験の浅い小規模な個人のグループによってコントロールされ、監査を受けずに作成された財務諸表は内容が信頼できないと言及。企業再生・再編の専門家であるレイ氏ですが、「今回ほどの企業統制の完全な失敗を見たことがない」と非難しています。

 「破綻した取引所FTXは「最悪の企業統治」、新CEOが痛烈に非難」Forbes Japan11月18日記事

 

18日の日経新聞も裁判所に提出された資料をもとFTXの問題点をまとめています。

※日経新聞サイト11月18日掲載「FTX前代未聞の経営 記録不十分・資金流用の疑いも」より(有料会員限定)

  

暗号資産業界、衝撃広がる

 

FTXの破綻の衝撃は業界全体にあっという間に広がりました。


「FTX破綻、一部の仮想通貨企業が資金を引き出せなくなる事態に」

コインテレグラフジャパン11月16日記事

仮想通貨ヘッジファンドのガロア・キャピタルは、5000万ドル相当がFTXに滞留していると報じられています。

 

「FTX破綻の影響は依然続く:ニッケル・デジタル、Metaplex 、オンタリオ教員年金、テマセク」

コインテレグラフジャパン11月19日記事

カナダのオンタリオ州教員年金基金がFTXに投資していた7500万ドルを損失計上、またシンガポールの政府系ファンド・テマセクも総額2.75億ドルを減損処理しています。

 


FTXが破産申請する前でさえも、ベンチャーキャピタル(VC)のセコイア・キャピタルが約2.14億ドルのFTX出資分を評価額ゼロとしました。

「セコイア・キャピタル、FTX持ち分の評価額をゼロに」

Bloomberg11月10日記事

 

騒動続くも、少し先が見えた?

 

今週に入り、FTXが上位50人の大口債権者に対して負う、無担保の債務総額が約31億ドルに達することが分かりました。

「FTX、無担保債権者の上位50位までに計30億ドル余りの債務」

Bloomberg 11月21日記事

 

先週15日にロイターは、FTX破綻には10万人以上の債権者が含まれており、その数は100万人を超える可能性があることを報じています。

「破綻したFTX、債権者100万人超の可能性 各国規制当局と接触中」


資産評価が進む中なか、債権者にとっては僅かですが光明が見えてきたようです。

「破綻したFTXが資産の評価作業開始、一部事業売却視野にペレラ起用」

Bloomberg 11月20日記事

企業再生・再編の専門家でFTXの新CEOに就任したジョン・レイ氏は19日、約1週間の検証作業で「米国内外の多くのFTX子会社はバランスシート上において支払い能力がある」と説明しました。


※FTX関連企業、Yahoo!financeより

 

21日にはNHKが、FTXジャパンが日本の顧客資産について「年内を目標に出金再開を目指す」と報じました。

「FTX経営破綻 日本法人幹部 “顧客資産 年内の出金再開目指す”」

 

じつは私、同社に口座を持っておりまして、少しだけホッとしております・・・・。しかし出金の障壁となりそうなのが、米国で破産申請した130のグループ企業のなかにFTXジャパンが含まれていることです。米国側の清算作業に関連付けられれば、日本だけ再開が許されるか微妙なところでしょう。


ビジネス拡大に繋がった例も

 

今回の事件で暗号資産交換所への不信感が募るなか、暗号資産を自身で管理しようとする動きが広がっているようです。

「ハードウェアウォレットのトレザー、FTX破綻の影響で売上高が300%急増」

コインデスクジャパン11月16日記事

 

※トレザー社HPより


そして、コインデスクジャパンのコラム「FTX騒動から学ぶ4つのこと」では以下の提言がされています。

・「暗号資産業界」と「暗号資産」は区別すべきだ

・分散型金融DeFiに対する期待が高まる

・DeFiは万能薬ではない

英雄崇拝に終止符を打つべきだ


記事では、暗号資産と暗号資産業界をもっとしっかり区別する必要性が訴えられています。また、FTXを必要以上に大きくしてしまった原因の1つとして、サム・バンクマン・フリード氏を英雄に祭り上げたことを指摘していました。参考にさせていただきます。

この連載の一覧
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
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第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
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第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
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第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
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第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
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第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
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第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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