暗号資産の時価総額、年初来で6割減
2022年は暗号資産市場にとっては明らかに厳しい年だったと言えるでしょう。CoinMarketCapによれば、年初に2.24兆ドル近くあった暗号資産全体の時価総額は、12月13日21時時点では8560億ドル弱と60%超も縮小しています。
※CoinMarketCapより 暗号資産の時価総額、2022年推移
今年は米金利先高観が強まるなかで、年初からリスク資産への売り圧力が強まっていました。
【暗号資産よもやま話】第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
そういったなか、5月にはアルゴリズム型ステーブルコインのテラUSDが崩壊してしまいます。
これが暗号資産の大手レンディング企業やヘッジファンドの破綻に繋がりました。
「仮想通貨ヘッジファンドのスリーアローズ、米連邦破産法の適用申請」ロイター
そしてダメ押しが、11月のFTXショックです。
【暗号資産よもやま話】第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
暗号資産スタートアップ 1-9月期は好調
先週の【暗号資産よもやま話】第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」では、機関投資家が暗号資産市場の回復を見据えて動き始めていることを紹介しました。
またこちらは↓暗号資産関連のベンチャー企業の資金調達についての記事です。
「2022 Crypto Venture Funding On Pace To Break 2021 Record」
2022年1-9月までで616件あった暗号資産スタートアップは、約200億ドルの資金を獲得できました。これは、昨年の同じ期間に集めた資金よりも41%増加しています。
ただ昨年は四半期ごとに資金調達額は拡大しましたが、今年は前半の2四半期が好調だったものの、7-9月期が前期比で約38%減と落ち込んでいます。それでも40億ドルは集められたようです。
記事の元となるデータを提供した金融情報サービスPitchbookは、暗号資産の価格が上昇傾向を示し始めれば、投資ペースが回復すると予想しています。
暗号資産、やはり否定的な見方も
暗号資産交換業大手FTXが破綻した大きな原因はずさんな経営/不正行為でした。
「FTX創業者バンクマンフリード容疑者、バハマで逮捕-米が訴追」Bloomberg
欲にくらんだ人による行為であり、暗号資産そのもに罪はないとつい考えてしまいます。しかしながらここ1カ月、暗号資産について否定的な報道が目立ちます。
「ビットコイン、金融当局はお墨付き与えるべきでない=ECBブログ」ロイター
欧州中央銀行(ECB)スタッフ2人による投稿は、ビットコインに対して厳しい見方をしています。急落が一服しているのは最後のあがきだと、かなり否定的な意見です。
パネッタECB専務理事も暗号資産の裏付けのなさを指摘し、金融ギャンブルの一形態とも述べています。
規制強化は仕方なしか
FTX騒動を受けて、暗号資産の規制強化を求める声も高まっています。
「仮想通貨は証券として規制されるべき、インターコンチネンタル取引所CEO」コインテレグラフ
米国の取引所大手のCEOや米上院議員は、暗号資産を証券化することで透明性を高めることができるとの考えを示しました。証券取引委員会(SEC)に暗号資産業界に対する規制権限を与える法案作りも一部進んでいるようです。
そのSECは企業に対して、「暗号資産関連で破綻申請をしたり、支払い不能になった取引先」への財務上エクスポージャーがあるかなどの情報開示すを義務付けるとのことです。
「米SEC、仮想通貨リスクの開示巡り新たな指針公表」ロイター
国際的には↓のような規制も・・・。
「バーゼル委、銀行の仮想通貨保有を制限」日経新聞(有料会員限定)
バーゼル銀行監督委員会(銀行の国際ルールを決める組織)が、銀行の暗号資産保有を制限する国際規制の導入を報じています。初めてとされる取り組みは年内にも決められるようです。
日本においても、金融庁が(崩壊したテラUSDのような)アルゴリズム型ステーブルコインの規制を強化する可能性を取り上げました。
「金融庁、アルゴリズム型ステーブルコインの規制を強化か」coinpost
理想は遠く
暗号資産で一番古いビットコインの始まりは約24年前、Satoshi Nakamotoが発表したビットコインに関する論文「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」でした。
【暗号資産よもやま話】第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
Satoshi Nakamoto が訴えたのは、政府や中央銀行に管理されない非中央集権的な通貨が実現可能ということです。銀行などの第三者を通さずに、個人同士で直接、価値のやり取りができる仕組みです。
それが今、暗号資産に対する規制強化の流れには逆らえそうにありません。くしくも、規制が強まることで市場は落ち着きを取り戻し始めているようにさえ見えます。Satoshi Nakamotoの理想はまだ遠い先なのでしょうか。