BTC、対ドルで最高値更新 対円はまだ…
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は2025年5月21日24時(22日0時)時点で、対円では1567万円前後と前週(7日前)比で約3.5%高い水準で取引されています。BTCドルが久しぶりとなる10万9000ドル台に乗せに成功しました。
BTCドルは1月下旬につけた10万9300ドル台を上抜け、10万9800ドル台まで史上最高値を更新。前回の高値記録の時期は、暗号資産支持を声高に叫んでいたトランプ氏が正式に米大統領に就任した頃でした。
BTC円も1578万円台まで上昇し、今年2月以来の高値を更新しましています。もっとも為替で円高が進んだ影響で、1月に記録した最高値1707万円にはまだ距離があります。
※Trading Viewより
米国の格下げ、BTCはどっち?
先週末に市場をざわつかせたのは、米格付け会社ムーディーズ・インべスターズ・サービスが米国の長期債格付けを最上位「Aaa」から1段階引き下げ「Aa1」としたことでしょう。格下げ理由は、米国の債務膨張の持続性に対する懸念からでした。
※債務膨張=債券発行の増加、国債の供給が過多となる可能性
世界最大の経済大国である米国の政府が裏付けする国債は、投資家にとって安全資産として位置付けられています。最上位から1段階の引き下げは、他の大手格付け会社(S&Pやフィッチ)に足並みを揃えたことになりますが、トランプ政権誕生後に高まり続ける不確実性を一層高めてしまいました。
ムーディーズの発表は16日、米株式市場が週引けした後であり、そのため市場の反応は翌週に持ち越されました。
週明け19日のオセアニア市場では、やはりドル売りが先行。また、安全資産とされる金(GOLD)も買いが強まりました。
ビットコイン(BTC)は土日も取引できたものの、他の金融商品「為替や金先物」のオープン待ちでした。まずは、金と同じように買いが先行します。格下げで米債が売られた場合、その資金の向かい先として暗号資産が選ばれるとの思惑があったのでしょう。
しかしながら実際には、BTCドルは10万7000ドル付近を上値に10万2000ドル付近まで売り戻されました。米国債の格付け引き下げを経済の不安要素として捉え、米株先物指数が下落。リスク回避の動きにリスク資産ともされるBTCは引きずられたようです。
※Trading Viewより
ちなみに、日本の位置は
ちなみに、ムーディーズが最高格付け「Aaa」と付加している国は、現在9カ国です。
ドイツ、オランダ、ルクセンブルク、デンマーク、スイス、ノルウェー、スウェーデンの欧州各国と、オーストラリアとシンガポールです。
同社による日本の格付けはA1とされ、エストニアや中国と同じ位置です。韓国Aa2や香港Aa3は日本の上にいます。
他、主要7カ国(G7)では、カナダが米国と同じAaa、英国とフランスはAa3、イタリアがBaa3とされています。
石破首相が「日本の財政はギリシャより良くない」と例に挙げられたギリシャは、ムーディーズの国債格付けではBaa3とギリギリ投資適格級です。
※国債格付け一覧(ムーディーズ・S&P・フィッチ) 世界の主要国より
良好なセンチメントで現物ETFも
さて、米国格下げによる「目先の懸念」は、意外と早く薄まりました。現物の米株市場は週明けこそ弱含みで始まりましたが、一巡後は上昇に転じました。週初の19日は結局、ダウ平均が3日続伸、S&P500に至っては6日続伸で終えています。
良好なセンチメントも支えとなり、ビットコイン相場も底堅く推移します。現物ビットコインETFへの資金流入も続き、19日には全体で6.67億ドル(1ドル=144円換算で960億円)の流入超となりました。流入額としては1日以来の大きさです。
テキサス州、米2番目の経済規模の州が!
ビットコインの対ドルにおける史上最高値更新に一役買ったのがこちらでしょう。
「テキサス州下院、戦略的ビットコイン準備金法案を可決」コインテレグラフ
テキサス州の議会が暗号資産準備金の設立を目指した法案を賛成多数で可決しました!実際には時価総額が5000億ドルを超えた暗号資産のみが投資対象であり、執筆時点では2兆ドル超えのBTCだけが条件をクリアしています。
他だと、BTCに次ぐイーサリアム(ETH)は3000億ドル超、ステーブルコインを除いた3位のリップル(XRP)が1400億ドル超の時価総額です。
ただしまだ、テキサス州の公的資金がBTCに投じられるにはアボット・テキサス州の承認が必要です。もっともトランプ米大統領と同じ共和党のテキサス州知事は、暗号資産に好意的とされています。
※webサイトbitcoinlawより、テキサス州の法案概要と5/20時点の進捗度合い
「Which US states have the largest economies?」USA TODAY
こちらの記事によれば、テキサス州の州内総生産(GDP)は2.7兆ドルと、米50州中ではカリフォルニアに次いで第2位です。
世界の名目GDP 国別ランキング・推移(IMF)こちらによれば、GDP世界第7位のフランスが3.16兆ドル、8位のイタリアは2.37兆ドルです。単純比較ですが、テキサス州はイタリアを上回る経済規模ということになります。
テキサス州の基金がBTCを準備金として組み入れたとしても、まずは様子見程度の額から始まると見られています。しかしながら、BTC相場への印象は決して悪いものではないはずです。