暗号資産ウォッチャー これに注目!

第108回「ビットコイン、米インフレ減速も上昇の勢いは・・・相場って難しい 米投資銀行が現物ETFを所有」

やっぱりクジラ様たちは・・・

 

代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は8月15日10時時点で、対円では870万円台と前週(7日前)ほぼ同時刻比で約8%上昇した水準です。BTCドルが5万5900ドル前後で取引されています。

 

7月下旬から8月初旬にかけての下落は一服し、先週後半にBTC円は925万円台まで反発しました。8月5日に記録した約半年ぶりの安値700万円からだと、3割以上も戻したことになります。

 

金融市場のパニック的な売りにつながった円キャリートレード(低金利の円で調達し、高金利通貨で運用)解消がひとまず一巡したようです。


また、タカ派と位置付けられていた内田日銀副総裁の講演内容が、市場が想定したほど追加利上げに積極的ではないと受けとめられたことも、リスクセンチメントの改善に繋がりました。

 

一時暴落した株式市場の反発とともに、現在はリスク資産として扱われることが多いビットコインへの買いも強まりました。

 

前回コラムの最後で少しふれた記事

「ビットコインのクジラ、下落局面で買い増し」コインデスク

下がったところでは口を大きく開けて待ち構えていたクジラ(大口保有者)様が、今のところ正しかったということなのでしょう。


※Trading Viewより

 

現物ETF、一時の勢いは・・・

 

先週半ば以降に反発したビットコインでしたが、その後やや方向感を無くしつつあります。BTCドルも6万ドルを挟み上下が続きました。

 

相場への影響力が高い「現物ビットコイン価格に連動した上場投資信託(ETF)」のネットフローも、一時の勢いは弱まってきたように見えます。

 

8日に2億ドルの流入超で数日前の流出分を取り戻し始めたものの、9日は(8日の約半分の額ですが)流出超でした。今週も月、火曜日は小幅な流入超だったところから、水曜日はそれを打ち消す流出超となっています。

 

※米国市場で上場された現物ビットコインETFの1日のネットフロー、coinglassより

 

米投資銀行が現物ETFを所有


米投資銀行が現物ETFを所得していたとの報道も、過去のものとして取り扱われているようです。第2四半期(6月30日時点)に米ゴールドマン・サックスが4.18億ドル、モルガン・スタンレーは1.88億ドル相当の現物ビットコインETFを所有していたことが当局への提出書類で明らかにされました。

  

なおモルガン・スタンレーに関しては先週7日、ビットコインETFの顧客への推奨を約1万5000人いる金融アドバイザーに許可したことが報じられています。ビットコイン市場にとってはポジティブであり、これも先週の相場持ち直しに繋がったとする見方もあります。

 

しかしながら、米証券取引委員会(SEC)や金融業規制機構(FINRA)からのかなり厳しいコンプライアンス審査が待ち構えており、そうすんなりと現物ETF推奨が行かないとの意見もあるようです。

 

米インフレは鈍化、BTCは上がって下がる

 

暗号資産ビットコイン(BTC)に対する米規制当局の警戒心は、まだ完全に解かれてはいません。ただし、BTCの時価総額は1兆ドルを超え、現物ETFは米国だけでも500億ドル弱と無視できない規模まで拡大しています。


BTCは既存の金融市場に組み込まれつつあるのは確かであると言えるでしょう。

 

現在、BTCも含めた金融市場が最も注目しているのは、世界最大の経済規模を誇る米国の金利動向です。そのカギを握る米連邦準備理事会(FRB)は9月17-18日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開きます。

 

市場は9月会合での利下げを確実視していますが、引き下げ幅については0.25%か0.50%で見方が分かれています。金利予想のもとになる米国の7月インフレ指標が13、14日に発表されました。

 

13日の卸売物価指数(PPI)では、前回から鈍化見込みを更に下回るような結果が目立ちました。これを受けて米長期金利が低下し、企業の調達コスト減が期待されて株価指数は上昇。BTC相場も上値を試す展開となりました。

 

PPIよりも重要視されていた14日発表の消費者物価指数(CPI)も前年比は2021年3月以来の3%割れとなり、インフレ減速基調を確認しました。米金利は若干低下し、株式市場は底堅かったものの、ビットコインは頭打ちとなります。

 

※Trading View

 

暗号資産分析サイトcoinglassによれば、ビットコイン先物でロングの解消が進みました。

投機相場にありがちな、「材料出尽くし感」が他市場よりも先にビットコインでは広まったようです。

 


持ち高の片寄りが上値の重さにつながったのかもしれません。簡単な相場は無いということでしょう。

この連載の一覧
第112回「ビットコイン、伸び悩み ファンドから資金流出 昨年の暗号資産詐欺のトレンドは?」
第111回「ビットコイン、夏バテか? 残暑も厳しく 曲がり屋とされるあの人は」
第110回「ビットコイン、上値トライは失敗 チャットアプリ騒動が影響?」
第109回「暗号資産税制、隣の芝は青く見え過ぎた 1年以上保有すると・・・」
第108回「ビットコイン、米インフレ減速も上昇の勢いは・・・相場って難しい 米投資銀行が現物ETFを所有」
第107回「ビットコイン、夏バテ気味 リスク回避の流れに逆らえず」
第106回「ビットコイン、失速するも月間ではプラス維持 トランプ氏がビットコイン大国を掲げる」
第105回「ビットコイン、分散化が強さ 米大統領選の影響はより不透明に」
第104回「ビットコイン、大幅反発はトランプ氏のおかげ? イーサリアムもついに!」
第103回「BTC、2月以来の安値更新 独政府やMt.Goxなど売り材料目立つ ただし一巡後は持ち直す」
第102回「ビットコイン、半値戻しまで 日本の投資家は暗号資産に興味あり?!」
第101回「ビットコイン、週明けに売り強まる マウントゴックスがついに?!」
第100回「ビットコイン、ダブルトップ形成で下落?! アルトコインの影響も無視できず」
第99回「ビットコイン、対円では最高値更新も・・・ 米イベントで右往左往」
第98回「ビットコイン、ハッキングもなんのその こんどは豪とタイが!」
第97回「ビットコイン、占有率が下がり気味・・・ 現物イーサETFの取引は?!」
第96回「ビットコイン、対円では最高値更新 ETHもついに?!」
第95回「ビットコイン、弱い米指標が助けに?! ウィスコンシン州がお買い上げ」
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
第58回「ビットコイン、売り買い材料が交錯 あのトランプ氏も心変わり?」
第57回「リップルにつれ安、8月のビットコインは?そして6カ月後までに・・・」
第56回「ビットコイン、400万円台維持 ネガティブニュースも跳ね返す」
第55回「ビットコイン、ゴールドのように羽ばたけるか ただしETFはもう少し先かも?」
第54回「Simple is Best、相場は単純に考える ところでBTCが上がらない理由は?」
第53回「ビットコイン 円高の影響、分かれたヤツは元気」
第52回「ビットコイン、対円にしました!口座開設はもうお済み?」
第51回「現物ETF 承認への期待大! ただし一旦落ち着く必要も・・・」
第50回「ビットコイン、救世主が出現! 現物ETFへの期待高まる」
第49回「BTCの占有率上昇、ただし市場が盛り上がっているわけでは・・・」
第48回「ビットコイン SECの圧力はちょっと違う、底打ち感も?!」
第47回「ビットコイン 5月は失速、でも今年中には大幅上昇?!」
第46回「ビットコイン 動かず、過去2回はその後に大波」
第45回「G7は規制強化 交換業大手はカナダから日本へ」
第44回「ビットコイン 4カ月連騰、手数料高騰が懸念?」
第43回「ビットコイン 冬は終了?欲張り過ぎには要注意」
第42回「イーサリアム 待ち時間は延びる、BTC 10カ月ぶりの高値をつけるも・・・」
第41回「ビットコイン 約10カ月ぶりの高値、信じる者は・・・」
第40回「リップル 3月は元気いっぱい、裁判の終わりが見えた?!」
第39回「当局の圧力にも負けず、BTC買い衰えず」
第38回「ビットコイン 時価総額はメタ超え、強欲な感じも・・・」
第37回「まるでジェットコースター、ビットコイン 代替資産としての位置づけも」
第36回「ビットコイン とんだ雛祭りに、懸念材料は複数残る?」
第35回「ビットコイン 売り持ちファンドに資金流入、投資家の懸念を反映」
第34回「昨年6月以来の高値更新、ビットコインの上昇要因を探る」
第33回「ビットコイン とばっちり食らう、PoWには関係なし?」
第32回「ビットコイン、2月も底堅い クリスマスまでには?!」
第31回「イーサリアム、マージから4カ月半 伸び代あり?!」
第30回「悪いニュースに反応せず、アノマリーもあったとは」
第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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