暗号資産ウォッチャー これに注目!

第45回「G7は規制強化 交換業大手はカナダから日本へ」

BTC、対円では支持水準を守る


代表的な暗号資産であるビットコイン(BTC)は5月17日19時時点、対ドルでは2万6800ドル台と前週比約2.6%安で推移しています。BTC円が368万前後での値動きです。


BTCドルは先週末、3月後半に何度も支えられた2万6600ドルを割り込んで下落スピードを速めました。次のターゲット2万5300ドル付近を試すかに見えましたが、BTC円の3月後半の下押し水準350万円がサポートとして働いたこともあり、BTCドルも切り返しました。


※Trading Viewより


新潟で暗号資産規制の話が


BTCが下値を試す前には、こういったニュース↓が伝わっています。主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が5月11日から13日に新潟市で開かれる前に出た記事です。


「暗号資産の個人間取引、G7財務相が規制検討を要請へ」日経オンライン(有料会員限定)


記事によれば、暗号資産を利用した資金洗浄(マネーロンダリング、マネロン)は2022年に238億ドルにも達したそうです。G7の金融・財政トップが集まった会議では、暗号資産を使ったマネロンを防ぐことが主要課題の1つとされました。

 

財務相サイト「教えて!マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策 」では、世界におけるマネロンの総額は、推計で世界全体GDPの約2~5%とされています。2021年の世界GDPが約96兆ドル(世界経済のネタ帳より)でしたので、推計の下限だとしても1.92兆ドルです。

 

そうなると、年度は違いますが22年暗号資産マネロンの額は全体のわずか1.3%弱です。


しかしながら、暗号資産を通しての資金洗浄は前年比では7割近くも増加しているとされ、この拡大ペースが更に速くなる可能性は否定できません。当局サイドも、なるべく早めに手を打っておきたいのでしょう。


※財務省サイトより


規制はビットコインの原則に・・・


これまでの暗号資産取引に対するマネーロンダリング規制は、交換業者を介したものだけが対象でした。それを今後は、個人間取引(peer to peer、P2P)にも監視強化策を探るとするのが今回のG7の目的でした。


マネーロンダリングはやってはいけないこと。犯罪に繋がることを防ぐための施策は必要です。


ただ、暗号資産でもっとも古いビットコインは、政府や銀行などの中央集権を疑い、P2Pを基本として生まれました。ビットコインの仕組みを明らかにしたSatoshi Nakamotoの論文も、「完全な P2P 電子通貨の実現により、金融機関の介在無しに、利用者同士の直接的なオンライン決済が可能となるだろう」との言葉で始まります。


以下は、Satoshi Nakamotoが2008年に発表した「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」の邦訳の概要部分を、最近何かと話題のchatGPTに「小学校6年生にも分かるよう説明して」と頼んだ内容です。



いずれにせよマネロン問題が解決しない限り、今後も政府による暗号資産への規制が強化される可能性はあるでしょう。ビットコインや他の暗号資産が、どのようにそれらを乗り越え行くのかが注目されます。


大手交換業者がカナダ撤退


先週末、暗号資産交換業大手バイナンスがカナダ市場から撤退することを発表しました。当局による「ステーブルコインや投資家制限への新たな規制」が決定理由のようです。


「バイナンスがカナダから撤退 新規制が影響・・・」コインテレグラフ


記事によれば、カナダは昨年12月に「暗号資産交換所による証拠金・レバレッジ取引の提供を禁止」し、また今年2月にステーブルコイン・独自トークンへのルールを厳格化しています。そのため、すでに複数の暗号資産関連企業が同国から徹底を発表していました。



バイナンス、ついに日本進出


カナダを撤退したバイナンスですが、日本におけるビジネスは拡大するようです。昨年11月には金融庁にも登録している交換業者サクラエクスチェンジビットコイン(SEBC)を買収したことが発表されました。

「バイナンス、日本市場参入──サクラエクスチェンジを完全子会社化」コインデスク


そのSEBCのホームページでは先月末、「国内取引所への取次サービス終了ならびに新規サービスに関するご案内」というお知らせがありました。5月末にこれまでのサービス(国内取引所への取次)を終了し、6月以降は新規サービス「Binance JAPAN(仮称)」が開始されることが発表されました。


バイナンスは2018年、無登録で日本居住者に暗号資産サービスを提供しているとの理由で金融庁に警告を受け、日本進出を断念した経緯があります。21年には2度目の警告が行われました。


Binance Japanがどのようなサービスを提供するかはまだ不明です。世界で最大手ともの言われる交換業者の参入が日本の暗号資産市場にとって大きなプラスになることを期待したいと思います。


この連載の一覧
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
第58回「ビットコイン、売り買い材料が交錯 あのトランプ氏も心変わり?」
第57回「リップルにつれ安、8月のビットコインは?そして6カ月後までに・・・」
第56回「ビットコイン、400万円台維持 ネガティブニュースも跳ね返す」
第55回「ビットコイン、ゴールドのように羽ばたけるか ただしETFはもう少し先かも?」
第54回「Simple is Best、相場は単純に考える ところでBTCが上がらない理由は?」
第53回「ビットコイン 円高の影響、分かれたヤツは元気」
第52回「ビットコイン、対円にしました!口座開設はもうお済み?」
第51回「現物ETF 承認への期待大! ただし一旦落ち着く必要も・・・」
第50回「ビットコイン、救世主が出現! 現物ETFへの期待高まる」
第49回「BTCの占有率上昇、ただし市場が盛り上がっているわけでは・・・」
第48回「ビットコイン SECの圧力はちょっと違う、底打ち感も?!」
第47回「ビットコイン 5月は失速、でも今年中には大幅上昇?!」
第46回「ビットコイン 動かず、過去2回はその後に大波」
第45回「G7は規制強化 交換業大手はカナダから日本へ」
第44回「ビットコイン 4カ月連騰、手数料高騰が懸念?」
第43回「ビットコイン 冬は終了?欲張り過ぎには要注意」
第42回「イーサリアム 待ち時間は延びる、BTC 10カ月ぶりの高値をつけるも・・・」
第41回「ビットコイン 約10カ月ぶりの高値、信じる者は・・・」
第40回「リップル 3月は元気いっぱい、裁判の終わりが見えた?!」
第39回「当局の圧力にも負けず、BTC買い衰えず」
第38回「ビットコイン 時価総額はメタ超え、強欲な感じも・・・」
第37回「まるでジェットコースター、ビットコイン 代替資産としての位置づけも」
第36回「ビットコイン とんだ雛祭りに、懸念材料は複数残る?」
第35回「ビットコイン 売り持ちファンドに資金流入、投資家の懸念を反映」
第34回「昨年6月以来の高値更新、ビットコインの上昇要因を探る」
第33回「ビットコイン とばっちり食らう、PoWには関係なし?」
第32回「ビットコイン、2月も底堅い クリスマスまでには?!」
第31回「イーサリアム、マージから4カ月半 伸び代あり?!」
第30回「悪いニュースに反応せず、アノマリーもあったとは」
第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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