暗号資産ウォッチャー これに注目!

第48回「ビットコイン SECの圧力はちょっと違う、底打ち感も?!」

BTC 一時急落、SECがバイナンスを・・・

 

代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は7日20時時点で対ドルでは2万6800ドル台と前週比では約1%安の水準で取引されています。またBTC円が372万円台での値動きです。

 

先週は、金融市場で最も注目される経済指標の1つ米雇用統計(5月分)を無事通過し、世界中が警戒していた「米国のデフォルト(債務不履行)」が回避されることになり、週末から週初にかけてリスク志向の動きが強まりそうな雰囲気でした。

 

BTCドルもその流れに乗り、週明けには2万7500ドル付近まで底堅く推移していました。しかしながら5日夜から6日朝にかけて急落し、3月半ば以来の低い水準となる2万5400ドル前後まで売り込まれました。

※Trading Viewより

 

売られたきっかけは、米証券取引委員会(SEC)が暗号資産取引所の最大手バイナンスと同社のチャンポン・ジャオ(CZ)最高経営責任者(CEO)らを証券法違反で提訴したことでした。

 

「米SEC、バイナンスと趙CEOを提訴-証券規則に違反」 Bloomberg 


「バイナンス、またか!」という感じですね。

 

というのも、3月下旬には米商品先物取引委員会(CFTC)がバイナンスとそのCEOを提訴しているからです。

 

CFTCの提訴理由は、米国で未登録の暗号資産デリバティブ取引を提供し、故意に米国の法律を回避したからとされていました。

「米CFTC、バイナンスとジャオCEOを提訴」コインデスクジャパン

 

今回SECは13の事案でバイナンスを訴えています。

そのなかには取引量を人為的に膨らませたこと、顧客資金のずさんな管理、米国の顧客が国外の交換所で取引できるようにしたことなどが含まれていました。


バイナンスは反論、公然の事実だった?

 

SECの訴えに対しバイナンスは、これまでの調査に積極的に協力し、和解に至るため誠意ある話し合いを行ってきたと反論。「法の範囲と争う用意がある」と対立姿勢を示しました。

 

こちらは↓、バイナンスグログに記載されている反論内容です。

「SEC Complaint Aims to Unilaterally Define Crypto Market Structure」

(SECの訴状は暗号資産の構造を一方的に定義しようとしている)

 

CFTCが暗号資産業界の規制機関にもかかわらず、SECは市場定義を強制するために規制権限を越えた行動を取ってきたことが問題とバイナンス側は述べています。

 

ところで、市場関係者から今回の件は予想されていたことだとする声も聞かれます。

こちらのコインテレグラフの記事↓

「SECのバイナンス訴訟、業界からは驚くべきことではないとの声と・・・・」

 

この記事では、バイナンスの行ってきたこと(取引量の水増しなど、SECが訴えたこと)は公然の秘密だったというビットコイン関連企業のCEOの話を紹介しています。


いずれにせよ、今回のSEC提訴の影響はビットコイン以外の暗号資産・アルトコインにも及びました。その中でも、バイナンスが発行するトークン「バイナンスコイン(BNB)」の弱さは目立ちました。

 

BNBはバイナンス取引所内で使用する暗号資産であり、時価総額では第4位に位置する人気の暗号資産です。ただし、日本の取引所では上場されていません。


 


※BNB対ドルのチャート、Trading Viewより


バイナンスの次はコインベースが標的に

 

米証券取引委員会(SEC)による暗号資産業界への取り締まりは止まず、6日には交換業大手コインベースも提訴されました

「米SEC、コインベースを提訴 バイナンスに続き」ロイター通信


提訴理由は、コインベースが未登録で仲介業や取引所、そして清算機関を運営し、「顧客勧誘、注文処理、入札許可や仲介」を行っていたということです。

 

SECは証券法に違反している部分として、上場されている暗号資産も指摘。その中には時価総額上位に入る、カルダノ(ADA)やソラナ(SOL)、ポリゴン(MATIC)も含まれていました。

 

これに対しコインベース側は、暗号資産に特化した法案がないなかで訴訟は解決策にならないとし、公正なルール作りを訴えています。

 

前述の記事によれば、SECからの提訴が嫌気されてコインベースの株価(ナスダックに上場している)はこの日、前日比12%安で引けました。


資金の引き出し、ビットコインは底打ち?

 

SECの訴訟により、やはりというか、バイナンスやコインベースから資金を引き出す動きが見られました。

 

↓の記事では暗号資産分析会社Nansenのデータをもとに、提訴から24時間でバイナンスから14.3億ドル、コインベースから12.8億ドルの資金が純流出したことが書かれています。

「Coinbase, Binance Experience Over $1 Billion in Net Outflows Following SEC Lawsuit」Watcher.Guru


しかしながらビットコインやイーサリアム(ETH)の値動きをみると、コインベースの提訴後は大きく切り返しています。

 

※Trading Viewより


この動きに対しては、こちらがコインデスクのGlenn Williams氏の投稿がしっくりきました。

「なぜ、ビットコインはさらに下落しなかったのか?・・・」


記事では例として、SECがエクソンモービルを訴えたとしても原油相場が急落するわけでもなく、金の採掘企業の経営者が訴えられても金価格に影響はないというのです。


BTCやETHがコモディティと同様、必要なモノになってきたのでしょうか。

この連載の一覧
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
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第46回「ビットコイン 動かず、過去2回はその後に大波」
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第30回「悪いニュースに反応せず、アノマリーもあったとは」
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第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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