暗号資産ウォッチャー これに注目!

第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」

半値が重く、ETFが支える構図

 

代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は、2月7日13時時点では対円で633万円前後と前週(7日前)比でほぼ横ばい。BTCドルは4万2800ドル付近で推移しています。前回コラムで述べたBTC円の1月下落幅(715万から572万円)の半値戻し643.5万円を超えたところでは伸び悩み、押し戻される展開が2月に入っても続いています。

 

さて、現物ビットコインETFが米証券取引委員会(SEC)に承認されて約1カ月が経ちました。資産運用最大手のブラックロック社のiシェアーズ・ビットコイン・トラスト(IBIT)の好調さが記事になっていました。

 

「ブラックロックのビットコインETF流入額、年初来・・・」コインデスク

IBITに32億ドルの資金が向かい、2024年の流入額ベースでは全ETFのトップ5に入ったということです。ETFに絡んだビットコイン購入が相場の下値を支えています。

 

※Trading Viewより


1月は小幅高だけど、期待は翌月に?!

 

暗号資産分析サイトcoinglassによれば、BTCの1月騰落率は+0.6%と小幅な上昇に留まりました。昨年1月は40%近く上昇とかなりの差ではありますが、スタート地点が全く違うため比較にはならなさそうです。

 

参考までに1月の始値を以下に↓

BTC円 2023年 218万円、2024年599万円

BTCドル 2023年 1万6600ドル、2024年 4万2200ドル

 

1月に関しては、記録が残る2013年以降では今年で6勝6敗のタイとなりました。(上昇が勝ち)

 

これまで2月は、2014年と2020年に下落して終えただけでかなり勝率が良い月です。ビットコインや暗号資産の季節要因というものがあるのか、正直分かりません。ただし過去のデータを見る限り、期待はできそうです。

 

写真

coinglassより


つい都合の良いものだけを・・・

 

ところで、ビットコイン月次リターンを眺めながら感じたのですが、こういったデータやチャート等を参照するとき、自分に都合のよい情報だけを切り取って見てしまうことはないでしょうか。

 

私自身を振り返ると、相場が自分の持ち高(買い又は売り建て)とは反対方向に進んだとき、そのポジションを正当化する材料をつい探し始めてしまう傾向があります。ロングなのに下落したときは買い関連を、ショートで持ち上げられたときは市場の弱気に繋がるもの等です。


自分のポジションにとって都合の悪いものは、「大したことないだろう」「市場の反応は一時的なことだ」などと思い込みがちです。おそらく、相場に自分の考えを否定されたくないという心理が働いてしまうのでしょう。

 

もちろん新規にポジションを作るときは、最初に損切り(ストップロス)の水準を決めています。これまで相場で痛い目にあったときは、損切りが上手くできなかったときでした。経験則上、相場格言で最も重要なのが「見切り千両、損切り万両」だと思っています。

 

 

2000年以上も前から、そして最後に

 

「多くの人は、自分が見たいと欲することしか見ていない」、これはユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)が述べたとされる言葉です。カエサルは2000年以上前にローマ帝国の礎を築いた人物であり、「賽は投げられた」など有名な引用句を幾つも残しています。

 

「人は自分の望むものを信じたがる」というのは人間の性(さが)なのでしょう。そうであれば、その性質を知ってトレーディング(投資)に臨むというのは重要なのかもしれません。

 

投資すれば資金が常に増えるということではありません。自分のお金が増減するのですから落ち着かないことも多いでしょう。ポジションを持ちながらも相場の動きを中立的に判断できる、そういう人を目指したいものです。

 

 

中立的な見方を目指すとしながらも、ビットコイン普及の拡大が見込めそうなニュースを最後に。

「Visa、145カ国で仮想通貨出金を可能に」 コインテレグラフ 2024/1/29


「メルカリ、ビットコインで買い物を2024年に開始」コインデスク 2024/1/2


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為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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