BTC、戦略的準備金の設立で…
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は2025年3月12日21時頃、対円では1236万円前後と前週(7日前)比8.3%安、対ドルが8万26000ドル台で推移しています。
この1週間も、BTC(だけでなく暗号資産全般)は荒い動きでした。BTC円は6日につけた1388万円付近、BTCドルが9万2800ドル台を戻り高値に再び下落基調に。7日の東京午前には短時間で7%ほど急落する場面もありました。きっかけは、トランプ米大統領が署名した大統領令でした。
※Trading Viewより
トランプ政権のAI・暗号資産責任者であるデイビット・サックス氏のX(旧ツイッター)投稿によれば、米大統領は「戦略的ビットコイン準備金を設立する大統領令」に署名しました。これだけ聞くと、BTCにとってポジティブな内容に思えます。
「戦略的準備金」とは、国や企業が将来の不確実な状況や緊急事態に備えて、重要な資産を蓄えておく仕組みです。経済の安定や安全保障を目的としており、これまでだと以下のような例があります。
・エネルギー不足に備えるための石油備蓄
・通貨価値を安定させるための金(ゴールド)
・国際取引や為替市場の安定化を目的とした外貨保有など
期待し過ぎには要注意
前述したサックス暗号資産責任者によるXの投稿はこちら
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サックス氏は投稿で、この準備金は「刑事または民事の資産没収手続きで押収された連邦政府所有のビットコインで構成される」と述べています。米政府は約20万BTCを保有しているとされ、それらを売却せずに政府のデジタル資産として会計処理する方針です。
トランプ政権の暗号資産責任者は、納税者に1セントの負担もかけないと言及。政府は、没収手続きを通じて取得した資産を超えて、備蓄用に追加で資産を取得することはないと説明しました。
ビットコインの戦略的準備金=市場でビットコインをかき集めるものと考えていた層にとっては、ある意味期待を裏切られる内容だったようです。一部通信社が、米政府の追加購入なしとのニュースヘッドラインを流したことも、市場を失望売りに走らせました。
大統領令、予算中立であれば…
「戦略的ビットコイン準備金と米デジタル資産備蓄の設立」の大統領令はこちらで読むことができます。
「ESTABLISHMENT OF THE STRATEGIC BITCOIN RESERVE AND UNITED STATES DIGITAL ASSET STOCKPILE」
少しサックス氏のXでは説明不足な点があり、「予算中立であり、米国の納税者に追加負担がなければ」という条件付きで、BTC追加取得の戦略を策定できると記載されていました。
予算中立とは、政府の予算を新たに増やさず、既存の財源の範囲内で取得することです。政府が保有する他の資産を売却して、BTCを取得するような手法が考えられます。ただし、現状では実行の可能性は低いとの見方が多いようです。
戦略的ビットコイン準備金を増やすには、「政府が違法行為による押収や罰金としてBTCを受け取る場合は可能」とされ、こちらは現実味があると思われます。
BTC以外の暗号資産については、「米国デジタル資産備蓄(United States Digital Asset Stockpile)」を設立し、管理することが明記されていました。ただし政府が保有する他の暗号資産は、刑事・民事の資産没収によって取得したもののみであり、新規購入は禁止されています。
財務長官が「責任ある管理戦略」を策定することになっていますが、具体的な運用方針は今後の評価次第。BTCと違い売却は禁止されておらず、これがアルトコインの投げ売りを強めたようです。
暗号資産サミットも…
7日には暗号資産サミットがホワイトハウスで開かれ、大手取引所コインベースのCEO、リップル社CEO、BTC強気派で有名なマイケル・セイラー氏など暗号資産業界の著名人が集まりました。
主要議題は「デジタル資産規制の枠組みやステーブルコインの管理、ビットコイン準備法制の可能性」などでした。ブロックチェーン技術の活用や不正支出追跡について議論され、米国金融システムへの暗号資産統合策を模索もされたようです。
またトランプ大統領はサミットで、前政権の「暗号資産との戦争」終了を宣言し、業界への支援を再び確約しました。
「マイケル・セイラー氏、暗号資産サミットで100兆ドルの暗号資産戦略をアピール」コインデスク
こういったことも話題にはなりましたが、今回は政権と業界の顔合わせ的な会合であったようです。
サミットでの具体策の発表はなく、「期待外れ」による売りが広がりました。サミット前には3兆ドルを回復していた暗号資産の時価総額は、一時2兆4400億ドルまで縮小し、昨年の米大統領選前の水準に戻る場面がありました。
※Trading Viewより、時間足チャート
週明けから急落も頼みはやはり…
暗号資産サミットを終えた翌週も、ビットコイン相場は下げ幅を広げました。サミットの失望売りも続きましたが、トランプ関税による景気停滞への懸念が高まり、米株式相場が急落した影響も大きかったようです。
3月11日の東京午前には、BTCドルが7万6600ドル付近、BTC円は1124万円台まで売り込まれました。BTCの高値からの下落率は、対ドルで30%近く、為替の円高も影響して対円では約34%まで広がっています。
※Trading Viewより
もっとも、金融市場全般にリスク回避の巻き戻しが起きると、BTC相場も持ち直しています。
「ビットコインのクジラが買い戻しか?…」コインテレグラフ
やはり、頼るべきは「クジラ」と言われる大口投資家なのでしょうか。