暗号資産ウォッチャー これに注目!

第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」

BTC円 9月は小幅高で終える

 

代表的な暗号資産であるビットコイン(BTC)、対円での9月終値は281万2000円台でした。9月の始値が279万5000円台でしたので、月間では約0.6%の上昇率となります。数値は↓のTrading Viewのチャートを参照にしています。

※Trading View より

 

ところで、外国為替は1日の終わりをニューヨーク17時としていますが、暗号資産市場(取引所)の多くがUTC(Universal Time Coordinated、協定世界時間)を基準としています。これは暗号資産がほぼ24時間365日取引可能だからです。日本の標準時はこのUTCよりも9時間進んでいます。

 

暗号資産市場の1日のスタートをUTC0時とする場合、日本では午前9時です。9月の月足は9月1日午前9時から10月1日(土)9時直前までということですね。

 

 


9月のアノマリーはどうなった?

 

さて、【暗号資産よもやま話】第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」では、BTCの9月アノマリーについて述べました。ここでのアノマリーとは、よく当たると言われる経験則・規則性という意味で使っています。

 

暗号資産データを提供するサイトcoinglassの月間騰落率(サイトの訳では利益率)によると、2013年から21年までの9年間、9月にBTCが上昇して終えたのは2回のみ。一方、月間での下落は7回もあり、17年からは5年連続でマイナスを記録していました。

 

「9月のBTCは弱い」というアノマリー、今年はなんとか逃れることが出来たと思われたもののcoinglassサイトを見ると違いました。

 


 

↑の表では9月(September)は3.12%安となっています。どうもBTC円の月間パフォーマンスではないようです。

 

このcoinglassの他情報をみてみると、BTCと米ドル(以下、ドル)の取引について主に扱っています。また、テザー(USDT)やバイナンスUSD(BUSD)などドル資産を担保とするステーブルコインとBTCの取引情報も多そうです。

 

そうなると、3.12%の月間減少率というのもBTCとドルとの取引における騰落率と考えてよいのでしょう。

 

実際にTrading Viewで取引所別のチャートを確認してみると、COINBASEが3.15%安(始20049ドル/終19418ドル)、FTXは3.10%安(始20048ドル/終19426ドル)でした。


結局、BTCドルの9月は6年連続マイナスを記録。アノマリーは成立してしまいました。

 

BTC円の小幅高は外国為替の円安の影響を受けたのでしょう。9月のドル円は139円前後から始まり144円後半で終えています。約4%のドル高・円安でした。

 

BTC 取引は対円、だけど対ドルも

 

BTCの値動きを見る場合、対ドルと対円ではどちらに重きを置いた方が良いのでしょうか。


「Bitcoin日本語情報サイト 日本の取引所販売所」

↑金融庁にも登録されている暗号資産交換業者では、私が見た限りBTCとの現物取引ができるのは対円のみでした。対ドルの取引ができない、ならばBTCを見る上であまり意識しなくても良いのでは?とつい考えてしまいます。

 

しかしながら、暗号資産情報サイトではBTCドルの市場分析をよく見ます。これはやはりBTCとの取引では、世界的にドルやドルを担保としたステーブルコインが主要とされているのからなのでしょう。

 

 

CryptoConpareという分析サイトの10月1日時点の情報によれば、BTCと取引される法定通貨でシェア1位は8.3%のドルです。ただし全体の取引ボリュームでは、USDTが約65%、BUSDは18%のシェアと、BTCとの取引はステーブルコインが8割以上を占めています。

 

USDTやBUSDはドル資産を担保としているため、ドルとの等価交換(ドルペッグ)とされています。これらステーブルコインを法定通貨のドルと同様と考えると、1日時点ではBTC市場での対通貨取引では9割近くがドルと言ってよいでしょう。

 ※USDTについては幾つか問題があるようですが、それはまた別の機会に取り上げたいと思います。

 

なお↑の表では、全体におけるBTCと円の取引は1%以下です。やはりBTC相場の大きな流れを捉えるには、対ドルで考えたほうが良いかもしれません。

 

BTC 対ドルでは200週線の下、でも対円では


 

そのBTCドルの週足チャートをみると、200週移動平均線を下回った値動きが6週ほど続いています。同線は2018年の終わり頃から2019年前半や、2020年3月に支持線として働いたため、6月の下落時から注目されていました。

 

チャート上に重ねている黄色い線は米株主要指数の1つナスダック総合指数です。9月は月間で10.5%安とBTC以上に軟調でした。

 

米国ではインフレが想定ほど鈍化せず、金利高止まりの長期化懸念が高まっています。金利上昇により企業の調達コストが増え、ナスダック総合指数の組み入れ比率が高い「グロース(成長)株」への打撃となってしまいました。

 

週足が重要線の下、ある程度の相関性が見られるナスダック総合も弱いのであれば、BTC強気勢にとって好ましい状況ではなさそうです。

 


対ドルが重要といいながらも、最後はBTC円のチャートを見てみましょう。


為替の円安が支えとなり、週足チャートでは200週移動平均線をなんとか維持しています。10月3日から始まる週は9日(日本時間では10日9時前)まで、200日週移動平均線は267万9700円台に位置。同線の水準が守られるかが、BTCドルにも影響するかもしれません。

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為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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