暗号資産ウォッチャー これに注目!

第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」

FTXの破綻から1カ月、機関投資は前向き?!

 

暗号資産交換業大手FTXの破綻から約1カ月、市場では明るい材料も見受けられます。

 

「FTX破綻にもかかわらず、機関投資家は依然として仮想通貨に注目」コインテレグラフジャパン

 記事では、交換業ビットスタンプのデジタル資産取引プラットフォームへの機関投資家・登録数について、11月は前月比で50%以上も増加したと報じています。個人のアクティブユーザーも40%超拡大したとも述べられています。

 

前述記事でも取り上げていますが、こちら↓

「米ゴールドマン、暗号資産企業の買収・出資を模索」ロイター

米大手金融機関ゴールドマン・サックスのデジタル資産部門の責任者によれば、同社が暗号資産関連企業の買収または投資を検討していることが明らかになりました。投じる資金規模は数千万ドルとされています。


 


「野村ホールディングス子会社、暗号資産分野で2年以内の黒字化へ」クリプトタイムズ

野村ホールディングスがスイスで設立したデジタル・アセット子会社「Laser Digital Holdings AG」が3月までに増員し、2年以内の黒字化を目指すということです。冷え込んだように見えた暗号資産市場ですが、先を見据えた動きが増えつつあります。


 中央集権型、CEXへの不信

 

今回のFTX騒動により、CEX(Centralized Exchanges)と言われる暗号資産の中央集権型取引所への不信感が高まりました。CEXは企業や法人などが取引プラットフォームを運営し、顧客を管理しています

Bitcoin日本語情報サイトの「日本の取引所・販売所」←こちらのページに記載さ入れている全てがCEXです。

 

一方で取引プラットフォームの運営母体がなく、ブロックチェーン上でユーザー同士が繋がり、暗号資産の取引が直接行われるのがDEX(Decentralized Exchanges、分散型取引所)と分類づけられます。


↓は左側がDEX、右側がCEXのイメージです。


FTXグループ崩壊のきっかけは経営幹部によるずさんな企業統治でした。同社元CEOのサム・バンクマン・フリード氏は暗号資産業界の救世主のように振る舞っていましたが、その活動の元となった資金はFTXの顧客資産を勝手に流用したものでした。

 

FTX破綻について、これまでの【暗号資産よもやま話】

第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」

第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」

第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」

 

CEXでは、顧客が預けた資産(法定通貨だけでなく暗号資産も)は交換業者が管理します。口座を作ると暗号資産ごとにウォレット(公開鍵、口座番号のようなもの)が指定されますが、その秘密鍵(印鑑やパスワードのようなもの)自体は交換業者が保有しているのです。

 

その秘密鍵を悪用したのが今回のFTXです。

 

バイナンスCEOが訴えたPoRとは

 

CEXへの信頼を取り戻そうと、交換業最大手バイナンスのチャンポン・ジャオCEOは「Proof of Reserve(プルーフ・オブ・リザーブ、以下PoR)」の重要性を訴えました。


 


PoRとは文字通り準備金(reserve)の証明(proof)です。第三者(監査法人)によって行われる、独立した残高の確認となります。カストディアンが顧客のために資産を保有していることが証明できれば、交換業者の透明性を高めることに繋がります。

※カストディアンとは、投資家に代わって有価証券の保管・管理などの業務を行う機関のこと。

 

「監査法人のMazars、バイナンスが顧客のビットコインの準備金を保有していると確認」コインテレグラフジャパン

 バイナンスCEOのツイートから約1か月後となる今月7日、南アフリカの監査法人がバイナンスの顧客が保有しているBTCは101%担保されていることを確認しました。監査により、バイナンスが57万5742ビットコイン(BTC)を保有していることが証明されました。


 

↑暗号資産の価格情報サイトCoinMarketCapの取引所ページです。


「コインマーケットキャップ、仮想通貨取引所向けのプルーフ・オブ・リザーブ・トラッカーを発表」コインテレグラフジャパン

CoinMarketCapでは11月下旬から「プルーフ・オブ・リザーブ(PoR)トラッカー」という機能を追加しました。特定時点(5分ごとに更新)での交換所の流動性(総資産額、ウォレットアドレス関連の情報)をチェックすることができるようです。

「CMC Launches Proof-of-Reserves」


この「PoRトラッカー」、まだ完全には理解していませんが今後もフォローしていきたいと思います。

いずれにせよPoRが暗号業界全体に浸透すれば、世間からの信認も厚くなり、市場が冬から脱する時期が早まるかもしれません。


この連載の一覧
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
第58回「ビットコイン、売り買い材料が交錯 あのトランプ氏も心変わり?」
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第52回「ビットコイン、対円にしました!口座開設はもうお済み?」
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第46回「ビットコイン 動かず、過去2回はその後に大波」
第45回「G7は規制強化 交換業大手はカナダから日本へ」
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第43回「ビットコイン 冬は終了?欲張り過ぎには要注意」
第42回「イーサリアム 待ち時間は延びる、BTC 10カ月ぶりの高値をつけるも・・・」
第41回「ビットコイン 約10カ月ぶりの高値、信じる者は・・・」
第40回「リップル 3月は元気いっぱい、裁判の終わりが見えた?!」
第39回「当局の圧力にも負けず、BTC買い衰えず」
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第37回「まるでジェットコースター、ビットコイン 代替資産としての位置づけも」
第36回「ビットコイン とんだ雛祭りに、懸念材料は複数残る?」
第35回「ビットコイン 売り持ちファンドに資金流入、投資家の懸念を反映」
第34回「昨年6月以来の高値更新、ビットコインの上昇要因を探る」
第33回「ビットコイン とばっちり食らう、PoWには関係なし?」
第32回「ビットコイン、2月も底堅い クリスマスまでには?!」
第31回「イーサリアム、マージから4カ月半 伸び代あり?!」
第30回「悪いニュースに反応せず、アノマリーもあったとは」
第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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