暗号資産ウォッチャー これに注目!

第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」

BTC、卯年は底堅く始まる


代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は、2023年1月10日9時時点、対ドルで1万7200ドル付近と年初1万6500ドル台から底堅く推移しています。昨年の酷さを考えると、ウサギ年はまずまずのスタートと言えるかもしれません。

 

※Trading Viewより

 

2022年の値動きを簡単に振り返ると、BTCドルは4万6200ドル台で始まり、3月下旬につけた4万8200ドル近辺から11月後半には約2年ぶりの安値となる1万5500ドル割れまで売り込まれました。年末にかけてやや下げ渋るも、年の終値は1万6500ドル台と年間の下落率は約64%にも達しました。



※Trading Viewより


悪い話はまだあるが、ポジティブなことも


年始も暗号資産関連のネガティブなニュースは簡単に見つけることができました。


「フォビトークン、11%下落-レイオフや社内問題が伝えられる」コインデスク

「シルバーゲートの最悪シナリオ現実に、仮想通貨巡り懸念広がる」ブルームバーグ

 「ニューヨークの銀行、波乱の年を経て仮想通貨から撤退」コインテレグラフ

 


ただ一方で、ポジティブなニュースも目に付くようになりました


スイスのルガーノ市がビットコインだけで生活が可能になった、というニュース。

「You Can Now Live In This Swiss City Solely On Bitcoin」nasdaq

ルガーノはスイス南部のイタリア語圏の地域です。伊国境からも近く、観光地として有名です。


戦闘が続くウクライナでは、薬局がBTC払いを受け付けるという話。

「Ukrainian pharmacies enable crypto payments via Binance Pay」cointelegraph

 

他、豪州のビットコインATMに関するニュースも出ていました。

「オーストラリア、仮想通貨ATM設置台数でエルサルバドルを抜いて第4位に」

「ライトニング・ネットワーク、豪州のビットコインATMで採用」 コインテレグラフ



BTCがより身近になってきたということでしょうか?

 

また、人口2億7000万人超のインドネシアが、政府主導で2023年内に暗号資産取引所の設立を計画しているとの報道もありました。

「Indonesia to Start Crypto Exchange Ahead of Regulatory Shift」bloomberg

 

米国の雇用指標がBTCの支えに


6日に発表された米国の12月雇用統計もBTCにとってはポジティブに働きました。統計では平均時給が前年比4.6%と市場予想5.0%を下回り、賃金インフレ圧力が想定より弱まっていることが明らかに。これを受けて米金利が大幅に低下すると主要株価指数も上昇し、BTCドルも追随する形となりました。

 

ただ、6日のナスダック総合が2.8%近く上昇して終えたにもかかわらず、意外とBTCは伸びていないというイメージは残りましたが・・・。

↓のチャートはロウソク足がナスダック総合、ラインチャートは米10年債利回りです。


※Trading Viewより


今年の予測、どうなる暗号資産?


さて年始はやはり、今後1年について予測する記事が目立ちます。

 

「2023年の暗号資産:10の予測」コインデスク

昨年から続く規制強化の動きや更なる痛みはあるものの、 web3やNFT(非代替性トークン)、DAO(自律分散型取引)などの成長トレンドは継続されるという見方です。また、真にグローバルなビットコインの普及も期待されているようです。

 

The boldest bitcoin calls for 2023 are out2023年のビットコイン大胆予想が明らかに)」米CNBC

 大胆のトップには、米著名投資家でありビットコイン強気派で知られるティム・ドレイパー氏の予測「今年半ばまでにBTCドルが25万ドルに到達」が紹介されています。


逆に、英スタンダードチャータード銀行の「サプライズリスト」にも入っている「BTCドルが5000ドルまで暴落する可能性」や、世界初の新興国ファンドを運用したことで有名なマーク・モビアス氏の1万ドルまで下落とする見方にもフォーカスされていました。

 

記事によれば、BTC相場の取引量が減少しているなかでクジラと呼ばれる大口保有者が相場を支えるために介入するとの見方を示す専門家もいました。管理された強気相場により、年前半にはBTCドルの3万ドル超え、後半には5万ドルを上回るという予想です。

 

しかしながら、これだけ様々な予想を示した後にCNBCは、ある金融アナリストの言葉「ビットコイン価格を予測しようとする試みは無駄」を引用して記事を締めくくっています。


「相場は何事も起こり得る」ため、確かにそうなのかもしれませんが・・・。

 

 アルトコインが先導


さて↓は、CoinMarketCapにおけるステーブルコインを除いた暗号資産時価総額トップ5の水準です。YTD(年初来騰落率)%に注目すると、BTC以外ではリップル(XRP)がそれほど伸びていませんが、ETHは約10%、カルダノ(ADA)などは27%近くも年初から上昇しています。



卯年はアルトコイン(BTC以外の暗号資産)が跳ねて始まりました。BTCはやや出遅れてはいるものの、暗号資産市場で39%のドミナンス(シェア)を維持しています。そのBTCがアルトコインに追随するのか、暫く注意深く見守っていきたいと思います。

この連載の一覧
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
第58回「ビットコイン、売り買い材料が交錯 あのトランプ氏も心変わり?」
第57回「リップルにつれ安、8月のビットコインは?そして6カ月後までに・・・」
第56回「ビットコイン、400万円台維持 ネガティブニュースも跳ね返す」
第55回「ビットコイン、ゴールドのように羽ばたけるか ただしETFはもう少し先かも?」
第54回「Simple is Best、相場は単純に考える ところでBTCが上がらない理由は?」
第53回「ビットコイン 円高の影響、分かれたヤツは元気」
第52回「ビットコイン、対円にしました!口座開設はもうお済み?」
第51回「現物ETF 承認への期待大! ただし一旦落ち着く必要も・・・」
第50回「ビットコイン、救世主が出現! 現物ETFへの期待高まる」
第49回「BTCの占有率上昇、ただし市場が盛り上がっているわけでは・・・」
第48回「ビットコイン SECの圧力はちょっと違う、底打ち感も?!」
第47回「ビットコイン 5月は失速、でも今年中には大幅上昇?!」
第46回「ビットコイン 動かず、過去2回はその後に大波」
第45回「G7は規制強化 交換業大手はカナダから日本へ」
第44回「ビットコイン 4カ月連騰、手数料高騰が懸念?」
第43回「ビットコイン 冬は終了?欲張り過ぎには要注意」
第42回「イーサリアム 待ち時間は延びる、BTC 10カ月ぶりの高値をつけるも・・・」
第41回「ビットコイン 約10カ月ぶりの高値、信じる者は・・・」
第40回「リップル 3月は元気いっぱい、裁判の終わりが見えた?!」
第39回「当局の圧力にも負けず、BTC買い衰えず」
第38回「ビットコイン 時価総額はメタ超え、強欲な感じも・・・」
第37回「まるでジェットコースター、ビットコイン 代替資産としての位置づけも」
第36回「ビットコイン とんだ雛祭りに、懸念材料は複数残る?」
第35回「ビットコイン 売り持ちファンドに資金流入、投資家の懸念を反映」
第34回「昨年6月以来の高値更新、ビットコインの上昇要因を探る」
第33回「ビットコイン とばっちり食らう、PoWには関係なし?」
第32回「ビットコイン、2月も底堅い クリスマスまでには?!」
第31回「イーサリアム、マージから4カ月半 伸び代あり?!」
第30回「悪いニュースに反応せず、アノマリーもあったとは」
第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

小針 卓哉の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております