BTC円、8月半ば以来の高値まで急上昇
代表的な暗号資産であるビットコイン(BTC)は10月4日23時時点、対円では410万円を割り込んだ水準です。前週(7日前)と比べて約3.0%高く取引されています。
値動きを振り返ると、先週末に400万円台に乗せた後は暫く小幅な上下に留まっていました。しかしながら週明け2日から買いが強まり、抵抗帯の上限と見られていた408-410万円を上抜けに成功。そうすると、一気に8月半ば以来の高値となる427万円台まで駆け上がりました。
しかしながら相場というのは、あまりにも速すぎる値動きの後に反動が付き物です。今回も売り戻し圧力が高まり、一部取引所では406万円付近まで下落しました。ただし、節目の400万円は維持している状況です。
上げた要因は複数あり
先週のコラムでは、米長期金利の上昇や為替のドル高がBTCドルの下押し要因としました。 その後、米金利や為替の状況はそれほど変わっていませんがBTCは大幅に反発しています。
買いを強めた要因としては
・米証券取引委員会(SEC)が現物ビットコイン先物の申請者と非公開ミーティング
・ビットコイン先物で溜まったショートポジションの買い戻し
・BTCドルにとって7年ぶりの9月月間プラスで安心感が広がった。10月は強いというアノマリー。
・ソラナ(SOL)の急騰につれ高。
等など複数あるようです。
9月末には、SECが現物ビットコイン決定延期を予定より早めに発表しました。しかしながらBTCの下げは限定的であり、下値の堅さを確認したことも買い戻す動きに繋がったのでしょう。
※Trading Viewより
米議会の混乱もBTC買いに?
9月末から10月初めにかけての上昇について、「米連邦議会のゴタゴタがビットコインに資金を向かわせた」という見方も一部であるようです。
米国では先月、新会計年度の予算案を巡る協議が難航し、10月から一部政府機関が閉鎖される懸念が高まっていました。結局は「45日間有効なつなぎ予算」案が可決され閉鎖は免れましたが、先行きの不透明感は深まったままです。
国家を運営する上で核となる予算の承認が遅れる可能性がある。
それも経済規模で世界最大であり、いまだに世界のリーダーとして振る舞う米国です。
ビットコインは国家や中央銀行などに依存しないことを目的に作られたシステムです。中央集権制度が揺らげば、「個人同士が自由に送金・決済できるビットコインの魅力が高まる」という考えは間違っていないかもしれません。
イーロン・マスク氏の一言が・・・・
世界で最も有名な実業家の1人であるイーロン・マスク氏のX(旧ツイッター)での一言も、ビットコイン買いを後押ししたのかもしれません。
一部暗号資産メディアでも取り上げられていますが、Xにおいて
「What's a scam that's so normalized that we don't even realize it's a scam anymore?」
(もはや騙されていると気づかないほど常態化した(当たり前となった)詐欺は何か?)
という質問がありました。
これに対してマスク氏は、一言「Fiat currency(法定通貨)」と答えています。
※X(旧ツイッター)より
マスク氏は元々、暗号資産の支持者として知られています。同氏がオーナーのXはこの夏までに、米国7州で暗号資産を含む決済ライセンスを獲得しました。
「イーロン・マスクのX、アメリカの複数の州で暗号資産を含む決済ライセンスを取得」 コインデスク
暗号資産を取引する人たちの中には、中央集権的なものを嫌うマスク氏の信奉者も多いと聞きます。マスク氏の「法定通貨は詐欺」とするコメントは、暗号資産買い/法定通貨売りが加速したタイミングにも重なります。
刷り過ぎが問題に
法定通貨とは国家によって発行され、法律で定められた公式の通貨のことです。その国で広く使われ、税金の支払いや公共サービスに利用可能です。
法定通貨の発行量に制限がなく、ある意味では政府や中銀のさじ加減一つで幾らでもお札を刷れるということにもなります。そういった中、もし財政規律が緩んでしまうと、あっという間に国の債務膨張につながってしまう恐れがあります。
マスク氏は米国在住ですし、ここでは法定通貨は米ドルのこととして考えてみます。
世界経済のネタ帳というサイトの「G20の政府総債務残高、対GDP比ランキング」によれば
2022年1位日本の約261%には及びませんが、米国は121.68%とイタリアに次いで3番目にGDP比で政府債務残高が高い国です。
その米国の債務が直近で急速に拡大していることが話題となっています。
※zerohedgeのXより
わずか1日で債務額は2750億ドル急増し、33.44兆ドルまで膨れました。円貨だと、1ドル=149円換算で4982兆円にも達します。(半年前のデータですが)日本の借金1270兆円の4倍弱です。
”国の借金” 過去最大1270兆円余 財政状況が一段と厳しく | NHK |
米国の債務増、暗号資産にとっては・・・
米国の債務残高の膨張が止まらないなか、こういった記事も出てきました。
「Massive $275 Billion Single-Day US Debt Spike to Boost Crypto Buying?」 CCN
(1日で2750億ドルもの巨額な米債務が急増し、暗号資産の購入が促進される?
記事では、債務増が米国成長の足かせとなり同国の金融・経済が不安定な状況に陥る可能性を指摘。そういう状況の中ではビットコインなどの暗号資産が重要な役割を果たすと述べています。
ビットコインの発行量は2100万枚と決まっています。方や幾らでも発行できてしまう法定通貨。どちらの価値が上がるのか。もしかしたら、ビットコインの生みの親「サトシ・ナカモト」の思惑通りに物事は進んでいるのかもしれません。