暗号資産ウォッチャー これに注目!

第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」

BTC円、8月半ば以来の高値まで急上昇

 

代表的な暗号資産であるビットコイン(BTC)は10月4日23時時点、対円では410万円を割り込んだ水準です。前週(7日前)と比べて約3.0%高く取引されています。

 

値動きを振り返ると、先週末に400万円台に乗せた後は暫く小幅な上下に留まっていました。しかしながら週明け2日から買いが強まり、抵抗帯の上限と見られていた408-410万円を上抜けに成功。そうすると、一気に8月半ば以来の高値となる427万円台まで駆け上がりました。

 

しかしながら相場というのは、あまりにも速すぎる値動きの後に反動が付き物です。今回も売り戻し圧力が高まり、一部取引所では406万円付近まで下落しました。ただし、節目の400万円は維持している状況です。

 

上げた要因は複数あり

 

先週のコラムでは、米長期金利の上昇や為替のドル高がBTCドルの下押し要因としました。 その後、米金利や為替の状況はそれほど変わっていませんがBTCは大幅に反発しています。


買いを強めた要因としては

・米証券取引委員会(SEC)が現物ビットコイン先物の申請者と非公開ミーティング

・ビットコイン先物で溜まったショートポジションの買い戻し

・BTCドルにとって7年ぶりの9月月間プラスで安心感が広がった。10月は強いというアノマリー。

ソラナ(SOL)の急騰につれ高。

イーサリアム(ETH)先物ETFが上場

等など複数あるようです。


9月末には、SECが現物ビットコイン決定延期を予定より早めに発表しました。しかしながらBTCの下げは限定的であり、下値の堅さを確認したことも買い戻す動きに繋がったのでしょう。

 

※Trading Viewより

 

米議会の混乱もBTC買いに?


9月末から10月初めにかけての上昇について、「米連邦議会のゴタゴタがビットコインに資金を向かわせた」という見方も一部であるようです。

 

米国では先月、新会計年度の予算案を巡る協議が難航し、10月から一部政府機関が閉鎖される懸念が高まっていました。結局は「45日間有効なつなぎ予算」案が可決され閉鎖は免れましたが、先行きの不透明感は深まったままです。

 

国家を運営する上で核となる予算の承認が遅れる可能性がある。

それも経済規模で世界最大であり、いまだに世界のリーダーとして振る舞う米国です。

 

ビットコインは国家や中央銀行などに依存しないことを目的に作られたシステムです。中央集権制度が揺らげば、「個人同士が自由に送金・決済できるビットコインの魅力が高まる」という考えは間違っていないかもしれません。

 

イーロン・マスク氏の一言が・・・・

 

世界で最も有名な実業家の1人であるイーロン・マスク氏のX(旧ツイッター)での一言も、ビットコイン買いを後押ししたのかもしれません。

 

一部暗号資産メディアでも取り上げられていますが、Xにおいて

「What's a scam that's so normalized that we don't even realize it's a scam anymore?」

(もはや騙されていると気づかないほど常態化した(当たり前となった)詐欺は何か?)

という質問がありました。

 

これに対してマスク氏は、一言「Fiat currency(法定通貨)」と答えています。

 

※X(旧ツイッター)より


マスク氏は元々、暗号資産の支持者として知られています。同氏がオーナーのXはこの夏までに、米国7州で暗号資産を含む決済ライセンスを獲得しました。

「イーロン・マスクのX、アメリカの複数の州で暗号資産を含む決済ライセンスを取得」 コインデスク

 

暗号資産を取引する人たちの中には、中央集権的なものを嫌うマスク氏の信奉者も多いと聞きます。マスク氏の「法定通貨は詐欺」とするコメントは、暗号資産買い/法定通貨売りが加速したタイミングにも重なります。

 

刷り過ぎが問題に

 

法定通貨とは国家によって発行され、法律で定められた公式の通貨のことです。その国で広く使われ、税金の支払いや公共サービスに利用可能です。

 

法定通貨の発行量に制限がなく、ある意味では政府や中銀のさじ加減一つで幾らでもお札を刷れるということにもなります。そういった中、もし財政規律が緩んでしまうと、あっという間に国の債務膨張につながってしまう恐れがあります。

 

マスク氏は米国在住ですし、ここでは法定通貨は米ドルのこととして考えてみます。

 

世界経済のネタ帳というサイトの「G20の政府総債務残高、対GDP比ランキング」によれば

2022年1位日本の約261%には及びませんが、米国は121.68%とイタリアに次いで3番目にGDP比で政府債務残高が高い国です。

 

その米国の債務が直近で急速に拡大していることが話題となっています。

 

※zerohedgeのXより

 

わずか1日で債務額は2750億ドル急増し、33.44兆ドルまで膨れました。円貨だと、1ドル=149円換算で4982兆円にも達します。(半年前のデータですが)日本の借金1270兆円の4倍弱です。

”国の借金” 過去最大1270兆円余 財政状況が一段と厳しく | NHK |

 

米国の債務増、暗号資産にとっては・・・

 

米国の債務残高の膨張が止まらないなか、こういった記事も出てきました。

「Massive $275 Billion Single-Day US Debt Spike to Boost Crypto Buying?」 CCN

(1日で2750億ドルもの巨額な米債務が急増し、暗号資産の購入が促進される?


記事では、債務増が米国成長の足かせとなり同国の金融・経済が不安定な状況に陥る可能性を指摘。そういう状況の中ではビットコインなどの暗号資産が重要な役割を果たすと述べています。

 

ビットコインの発行量は2100万枚と決まっています。方や幾らでも発行できてしまう法定通貨。どちらの価値が上がるのか。もしかしたら、ビットコインの生みの親「サトシ・ナカモト」の思惑通りに物事は進んでいるのかもしれません。

この連載の一覧
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
第58回「ビットコイン、売り買い材料が交錯 あのトランプ氏も心変わり?」
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第55回「ビットコイン、ゴールドのように羽ばたけるか ただしETFはもう少し先かも?」
第54回「Simple is Best、相場は単純に考える ところでBTCが上がらない理由は?」
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第43回「ビットコイン 冬は終了?欲張り過ぎには要注意」
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第41回「ビットコイン 約10カ月ぶりの高値、信じる者は・・・」
第40回「リップル 3月は元気いっぱい、裁判の終わりが見えた?!」
第39回「当局の圧力にも負けず、BTC買い衰えず」
第38回「ビットコイン 時価総額はメタ超え、強欲な感じも・・・」
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第36回「ビットコイン とんだ雛祭りに、懸念材料は複数残る?」
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第34回「昨年6月以来の高値更新、ビットコインの上昇要因を探る」
第33回「ビットコイン とばっちり食らう、PoWには関係なし?」
第32回「ビットコイン、2月も底堅い クリスマスまでには?!」
第31回「イーサリアム、マージから4カ月半 伸び代あり?!」
第30回「悪いニュースに反応せず、アノマリーもあったとは」
第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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