暗号資産ウォッチャー これに注目!

第51回「現物ETF 承認への期待大! ただし一旦落ち着く必要も・・・」

BTC 強い、対円ではあの騒動以来の水準を回復

 

代表的な暗号資産であるビットコイン(BTC)は6月28日12時時点、対ドルでは3万400ドル台と前週比では5.7%ほど高い水準で推移しています。年初からだと8割以上の上げ幅です。

 

BTCドルは一時、4月に頭を抑えられた3万1000ドルを超えて3万1400ドル台まで上昇しました。前日比で横ばいと買いの勢いは落ち着いてきてはいますが、水準的にはまだ高いところです。

 

BTC円は先週末、一部取引所で451万円まで買われました。昨年5月にアルゴリズム型ステーブルコインのテラ(UST)と関連トークンであるルナ(LUNA)が暴落し、その影響でBTCも下落し始めていた頃の水準まで回復したことになります。

 

テラ騒動について↓

「6兆円が消えた「LUNA-UST騒動」 危ないステーブルコインの特徴」IT-mediaより

※Trading viewより

 

ドミナンスも高止まり、やはりETF期待は根強い

 

時価総額でも、暗号資産全体におけるビットコインの占有率(ドミナンス)が高止まりしたままです。一時は2021年4月以来の52%に迫りました。やはり、先週のコラムでお伝えした「米国で相次いでいる現物ビットコインETF(上場投資信託)の承認申請」が大きく影響しているのでしょう。



 ※Trading Viewより

 

↑チャートで紫色の線が示している全体の時価総額は、6月半ばの最低水準9752億ドルから1兆1770億ドルまで拡大しました。しかしながら、5月前半の1兆1960億ドルには届いていません。米証券取引委員会(SEC)による一部アルトコインへの締め付けの影響が残っている感は否めません。

 

英国のデジタル資産運用会社コインシェアーズ(CoinShares)のレポート「週間デジタル資産ファンドフロー(Digital Asset Fund Flows Weekly)」でも、

ビットコインへの流入増が示されています。

 

合計1.99億ドルの資金がデジタル資産(いわゆる暗号資産)投資商品に流入し、規模としては昨年7月以来で最大ということです。そのうちビットコイン関連が1.87億ドルと全体の9割以上を占めました。



※コインシェアーズのウエブサイトより


SEC、レバレッジ型を初承認

 

これまで米証券取引委員会(SEC)は、現物ビットコインETF申請を却下してきました。しかしながら今回は、淡い期待とかではなく、承認される可能性がかなり高いと市場は捉えているように感じます。米資産運用最大手のブラックロックが申請したというのがやはり大きいのでしょう。

 

今回のリード役である同社は昨年夏に交換所大手コインベースと提携しており、機関投資家に暗号資産の取引・管理サービスをする準備は万端であると思われます。

 

さらに、現物ビットコインETF承認への思惑を膨らませたニュースがあります。↓

SEC Approves First Leveraged Bitcoin Futures ETF」watcher.guru

(SEC、レバレッジ型ビットコイン先物ETFを初承認)

 

レバレッジとは「てこの原理」という意味であり、投資では保有資金よりも大きな金額で取引ができることです。レバレッジN倍と言われた場合、数値Nが元手の何倍かを示します。

 

前述記事では、SECが初めてレバレッジ型のビットコインETF申請を受理したという内容。投資会社「ボラティリティ・シェアーズ」が立ち上げたETFは、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のBTC先物にもとづく投資商品とされています。

 

6月27日から取引を開始された「2x Bitcoin Strategy ETF」はレバレッジ2倍。たとえば、現物1BTCの半分の投資額でも、1BTC分の値動きと同じ収益を得る(または損失を被る)ということです。

 

※てこの原理

 

レバレッジ型がOKなら現物ETFも大丈夫だろうという考えは、全くおかしくありませんね。

 

一旦、気持ちを落ち着かせてみては

 

27日にはこういったニュースが暗号資産の情報サイトで報じられました。

「Fidelity preparing to submit spot bitcoin ETF filing: Source」 THE BLOCK

(フェデリティ、現物ビットコインETFの申請を準備している-情報筋)

 

フェデリティは米国の資産運用会社であり、同社ホームページによれば運用総資産額(AUM)は4900億ドル超。この大きな運用会社も現物ビットコインETFの流れに遅れたくないようです。

 

大手も含む複数の資産運用会社が競うように現物ビットコインETFを申請しています。もしもそれらが同時に承認されるようなことになれば、ビットコイン相場どうなってしまうのでしょうか。承認そして、大幅な価格上昇への思惑も強まっています。


ただし、現物ビットコインETFについてまだ何も決まっていないのも事実です。


ここは↓の記事を読み、一旦気持ちを落ち着かせるのも必要かと。

「BlackRock Bitcoin spot ETF nod ‘unlikely in near term」 cointelegraph

(ブラックロック のビットコインETF、短期的にはありそうもない)


記事では申請却下を強く予想しているわけでもありませんが、ブラックロックの現物ビットコインETFがすぐに登場する可能性は低いという意見を取り上げています。

 

様々な意見に耳を傾けること、投資を続けるためには非常に重要です。

この連載の一覧
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
第58回「ビットコイン、売り買い材料が交錯 あのトランプ氏も心変わり?」
第57回「リップルにつれ安、8月のビットコインは?そして6カ月後までに・・・」
第56回「ビットコイン、400万円台維持 ネガティブニュースも跳ね返す」
第55回「ビットコイン、ゴールドのように羽ばたけるか ただしETFはもう少し先かも?」
第54回「Simple is Best、相場は単純に考える ところでBTCが上がらない理由は?」
第53回「ビットコイン 円高の影響、分かれたヤツは元気」
第52回「ビットコイン、対円にしました!口座開設はもうお済み?」
第51回「現物ETF 承認への期待大! ただし一旦落ち着く必要も・・・」
第50回「ビットコイン、救世主が出現! 現物ETFへの期待高まる」
第49回「BTCの占有率上昇、ただし市場が盛り上がっているわけでは・・・」
第48回「ビットコイン SECの圧力はちょっと違う、底打ち感も?!」
第47回「ビットコイン 5月は失速、でも今年中には大幅上昇?!」
第46回「ビットコイン 動かず、過去2回はその後に大波」
第45回「G7は規制強化 交換業大手はカナダから日本へ」
第44回「ビットコイン 4カ月連騰、手数料高騰が懸念?」
第43回「ビットコイン 冬は終了?欲張り過ぎには要注意」
第42回「イーサリアム 待ち時間は延びる、BTC 10カ月ぶりの高値をつけるも・・・」
第41回「ビットコイン 約10カ月ぶりの高値、信じる者は・・・」
第40回「リップル 3月は元気いっぱい、裁判の終わりが見えた?!」
第39回「当局の圧力にも負けず、BTC買い衰えず」
第38回「ビットコイン 時価総額はメタ超え、強欲な感じも・・・」
第37回「まるでジェットコースター、ビットコイン 代替資産としての位置づけも」
第36回「ビットコイン とんだ雛祭りに、懸念材料は複数残る?」
第35回「ビットコイン 売り持ちファンドに資金流入、投資家の懸念を反映」
第34回「昨年6月以来の高値更新、ビットコインの上昇要因を探る」
第33回「ビットコイン とばっちり食らう、PoWには関係なし?」
第32回「ビットコイン、2月も底堅い クリスマスまでには?!」
第31回「イーサリアム、マージから4カ月半 伸び代あり?!」
第30回「悪いニュースに反応せず、アノマリーもあったとは」
第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

小針 卓哉の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております