暗号資産ウォッチャー これに注目!

第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」

BTC円、一時は最高値から・・・

 

代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は5月8日21時頃、対円では970万円前後と前週(7日前)比では5.8%高の水準。BTCドルが6万2300ドル台で推移しています。比較対象の日が直近の安値圏だったため高いところにいますが、戻りも鈍くなりつつある印象です。

 

ゴールデンウィーク前半からの値動きを振り返ってみます。


BTC円は1015万円辺りで頭を抑えられ、5月2日早朝には882万円台と約2カ月ぶりの安値を更新しました。4月前半に記録した過去最高値1100万円から20%弱の下げ幅です。


3日からは大きく切り返し、6日には1008万円台まで持ち直しました。しかしながら一巡後は伸び悩み、1000万円割れでの推移が続いています。

 

※Trading View

 

ビットコイン、下げた要因は

 

水準は違いますが、高値からの20%下落は今年1月もありました。

第80回「ビットコイン、高値から2割下落・・・・」

この時のように、株式相場ではトレンド転換の目安の1つとされる2割の動きはビットコインにとって買い場のようです。

 

それでは、今回の下落要因を探ってみましょう。


1つは、半減期を終えて目先の材料が出尽くしたことでしょうか。1040万円辺りまで上昇後は利益確定の売りに押されていました。


また、米国で上場されている現物ビットコインETFから資金が流出したことも、相場にとってかなりの重しとなりました。暗号資産分析サイトcoinglassによれば、現物ETF全体で流出超は4月24日から7営業日連続を記録しました。


特にBTCドルが直近安値5万6500ドルをつけた米国1日には、全ての現物ビットコインETFから資金が引き出されています。10のETF合計で5億6370万ドル(1ドル=155円換算で874億円弱)と、上場された1月以来の1日あたりの流出額としては最大でした。


※現物ビットコインETFの流出入、4/24-5/7 coinglassより

 

BTC相場の地合いが弱い時、対円にとっては政府・日銀による円買いドル売り介入の影響もあったと思われます。本邦通貨当局は公式には認めていませんが、明らかに為替相場で円安是正に動いたような値動きでした。

 

為替介入(外国為替市場介入)とは 日銀HPより

 

米金利の低下が支えに?!

 

BTC相場は5月2日から下げ止まり、3日から反発しています。現物ETFに資金が戻ってきたことが1つの要因でしょう。

 

米連邦公開市場委員会(FOMC)後の定例記者会見で、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が警戒されていたほどタカ派ではありませんでした。これを受けて米金利が低下基調に転じたことが、リスク資産の買いやすさに繋がったようです。

 

3日発表された4月米雇用統計が予想より弱い内容だったことで、再び米利下げに現実味が出てきました。米金利は低下幅を広げ、BTCの買い戻しも強まりました。

 

※Investing.comより

 

4月は久しぶりの・・そして5月は鬼門?

 

さてcoinglassによれば、4月の月間騰落率は14.76%のマイナスでした。月間下落は8カ月ぶりです。昨年9月から続いた月間の連勝記録は7で途絶えてしまいした。

 

もっとも、7カ月間で1BTCの価値は2.7倍にもなり、今年第1四半期だけでも約68%上昇しています。そういった意味では、4月の下落はあくまで調整の範囲内と言えるかもしれません。

 

ただ気になるのは、2021年から2023年まで3年連続で5月は下落して終えていること。今年のように4月がマイナスだった21年と22年は続落しています。5月がBTCにとって、もしかしたら鬼門となるかもしれません。


この連載の一覧
第95回「ビットコイン、弱い米指標が助けに?! ウィスコンシン州がお買い上げ」
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
第58回「ビットコイン、売り買い材料が交錯 あのトランプ氏も心変わり?」
第57回「リップルにつれ安、8月のビットコインは?そして6カ月後までに・・・」
第56回「ビットコイン、400万円台維持 ネガティブニュースも跳ね返す」
第55回「ビットコイン、ゴールドのように羽ばたけるか ただしETFはもう少し先かも?」
第54回「Simple is Best、相場は単純に考える ところでBTCが上がらない理由は?」
第53回「ビットコイン 円高の影響、分かれたヤツは元気」
第52回「ビットコイン、対円にしました!口座開設はもうお済み?」
第51回「現物ETF 承認への期待大! ただし一旦落ち着く必要も・・・」
第50回「ビットコイン、救世主が出現! 現物ETFへの期待高まる」
第49回「BTCの占有率上昇、ただし市場が盛り上がっているわけでは・・・」
第48回「ビットコイン SECの圧力はちょっと違う、底打ち感も?!」
第47回「ビットコイン 5月は失速、でも今年中には大幅上昇?!」
第46回「ビットコイン 動かず、過去2回はその後に大波」
第45回「G7は規制強化 交換業大手はカナダから日本へ」
第44回「ビットコイン 4カ月連騰、手数料高騰が懸念?」
第43回「ビットコイン 冬は終了?欲張り過ぎには要注意」
第42回「イーサリアム 待ち時間は延びる、BTC 10カ月ぶりの高値をつけるも・・・」
第41回「ビットコイン 約10カ月ぶりの高値、信じる者は・・・」
第40回「リップル 3月は元気いっぱい、裁判の終わりが見えた?!」
第39回「当局の圧力にも負けず、BTC買い衰えず」
第38回「ビットコイン 時価総額はメタ超え、強欲な感じも・・・」
第37回「まるでジェットコースター、ビットコイン 代替資産としての位置づけも」
第36回「ビットコイン とんだ雛祭りに、懸念材料は複数残る?」
第35回「ビットコイン 売り持ちファンドに資金流入、投資家の懸念を反映」
第34回「昨年6月以来の高値更新、ビットコインの上昇要因を探る」
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第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
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第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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