転落の兆候は昨年11月から
暗号資産(仮想通貨)市場で代表的なビットコイン(BTC)。7月19日時点で1BTCは302万円あたりで取引されています。昨年11月に記録した史上最高値779万円台からだと、6割を超える下げ幅です。
※出所:Trading Viewより
【暗号資産よもやま話】第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」では6月の急落を「えらいこと」とし、そのきっかけを5月に起きた「テラUSDの暴落」としました。
ただ実は、ビットコイン(暗号資産全体とも言えます)が転げ落ち始めたのは、チャートのようにテラUSDの半年前からでした。今年1月には1BTCは400万円を一時割り込み、その後3月下旬には595万円辺りまで反発して希望の光が見えたように思いましたが、そこが明るく輝いた最後でした。
ビットコインと値動きが似てる?
ここでまたチャートの画像、こちら何の値動きだと思いますか?
※出所:Trading Viewより
これは米国株式の主要指数の1つであるナスダック総合指数の価格推移です。世界最大のベンチャー企業向け株式市場「ナスダック」が算出する同指数は、ハイテクやIT関連銘柄の組み入れ比率が高いことで知られています。
米国株の主要指数といえば、他にダウ平均やS&P500などがありますね。「いまから投資」でも、ニューヨーク株式市場に関する情報を配信しています。#米国株のタグでチェックしてみてください。
ナスダック総合に話を戻すと、この指数は高い成長が見込める「グロース(成長)株」が多いのが特徴です。一般的にグロース株は金利上昇の打撃を大きく受けやすいと言われいます。もともと先の成長を織り込み割高な側面がある分、金利水準が上がると投資の旨味が減ってしまい、金利高⇒グロース株売りという構図になりやすいようです。
ナスダック総合のチャートが右肩下がりな時期は、米国の金利が上昇傾向だったことが影響していました。ところでナスダック総合の動き、ビットコインと似ていると思いませんか?
金融政策の180度転換が・・・・
日本でも頻繁にニュースで取り上げられているように、世界的な物価高が問題となっています。モノの値段が上がり続ける「インフレ」の上昇ペースが速まったのは、コロナ禍に取られた「積極的な財政拡大・金融緩和政策」の反動、供給ひっ迫によるモノ不足、労働市場の変化など様々な要因が絡み合っていました。
そこにロシアのウクライナ侵攻が追い打ちをかけ、米国の6月インフレ率は40年7カ月ぶりという水準まで上がっています。
米国の中央銀行制度の中心的な機関である米連邦準備理事会(FRB、中央銀行制度の中心的な機関)は、モノの値段が全体的に上がり始めた当初、インフレは一時的との楽観的な見方をしていました。しかしながらその後、自分たちの見立て違いを認めたてインフレを抑制するため政策金利の引き上げに走っています。
コロナ禍の超金融緩和で借り入れコストを低く抑えられていたとき、グロース株は多くの恩恵を受けていました。しかしながら米金融政策の方針が180度転換されると金利が上昇し、その影響をもろに受けたのもグロース株です。↑のナスダック総合チャートの昨年11月からの下落が打撃の度合いを示しています。
金利上昇、バブルが弾け
さてコロナ禍では、米国だけでなく主要各国が取った前例のない財政拡大や金融緩和、いわゆるばら撒きにより世の中にはお金がかなり余った状態となりました。
リスク資産と言われている市場に向かった余剰資金は、株式だけでなく暗号資産にも流れ込みました。そのためビットコインだけでなくアルトコインも急騰し、暗号資産相場はバブルの様相となりました。
そして今、FRBを始めとする主要中央銀行はインフレ抑制を優先しています(日本銀行は違いますが・・・)。金融引き締めが実施されたことでお金の流れが逆流し、過度なレバレッジ取引も解消され、暗号資産バブルは弾けてしまいました。
※ レバレッジ取引とは、担保資金を元手にその何倍もの額面で取引すること。
来週はFOMC、ナスダック総合に底打ちでれば
さて来週の米国では、26-27日と米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれます。FRBメンバーと地区連銀総裁が集まり金融政策を決定する会合です。現状は3,5,6月に続いて4会合連続の利上げは確実とされ、予想の引き上げ幅は0.75%(一部では1.00%)と大きな幅が有力視されています。
注目は今後の金融引き締めペースでしょう。
一部では、来年半ば以降は米金融政策が利下げに転じるという見方も出始めているようです。インフレ抑制の見通しが高まればその可能性もあるのでしょうが、まずは今年の利上げペースが緩やかになるのかを気にしたいと思います。22年の残りのFOMCは9,11,12月と3回です。
今回のFOMCで金利上昇が落ち着くような材料が示されるようであれば、ナスダック総合にも投資資金が本格的に戻ってくるとの期待が沸き上がってきます。もしナスダック総合の底打ち感が強まれば、ビットコインとナスダック総合の相関性の高さから考えるとビットコイン相場にとっても朗報と言えるかもしれません。
ビットコインは2009年(丑年)に誕生し、国や中央銀行に管理されない「自由」が大きな売りでした。しかし干支が一回りした今、米国の金融政策は無視できない状況となっています。