暗号資産ウォッチャー これに注目!

第111回「ビットコイン、夏バテか? 残暑も厳しく 曲がり屋とされるあの人は」

 BTC、夏バテ?

 

代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は9月4日19時時点で、対円では823万円台と前週(7日前)のほぼ同時刻と比べて約5%低下した水準で取引されています。BTCドルは5万6600ドル台での値動きです。

 

この一週間、暗号資産相場は総じて上値の重い展開でした。先週コラムでも触れたトンコイン(TON)は7日前比で16%の下落率、ソラナ(SOL)も12%の下落率を記録しました。

 

CoinMarketCapより 対ドル

 

BTCも対円では900万円、対ドルでは6万ドルが強いレジスタンスとして働き、売り優勢となりました。月間の騰落率も対ドルで8.6%下落と、8月としては3年連続のマイナスで終了。2013年からだと8月は4勝8敗と、どうも夏バテ(残暑バテ?)しやすいようです。

 

更にBTCドルの9月については、昨年は3.9%の月間プラスでしたが、それ以前は2017年から6連敗。昨年までで3勝8敗と大きく負け越しています。ただし10月の反発はかなり大きいことが救いです。

 

暗号資産分析サイトcoionglassの表を見ても↓、BTCから資金は「第3四半期の後半に流出し、第4四半期に回帰」という流れになっているのかもしれません。


 


※coinglassより

 

このところ米レーバーデー明けは・・・

 

米国では9月の第1月曜日がレーバーデーの祝日であり、土日を含めて3連休。労働者の功績を称えるための祝日は、夏の終わりを象徴する日と言われています。金融市場では、投資家が夏休みから帰ってくるのがレーバーデー明けともされています。

 

レーバーデーと米株相場の関係について、興味深い投稿をXで見つけました。それによれば、2017年から23年までの7年連続、米株主要3指数の1つS&P500はレーバーデー明けでは下落して1日を終えていました。最後にプラスだったのは2016年であり、オバマ大統領の任期最後の年です。

 ※XのBespokeより

 

今年は2日がレーバーデーでした。翌3日の米株式市場は、S&P500が119.47ポイント(2.12%)安と大きく売られました。レーバーデー明け連敗は8まで伸びています。他、ダウ平均は1.51%安、ナスダック総合に至っては3.26%安と更に軟調でした。

 

8月のS&P500の月間騰落率は2.28%高であり、9月3日の下げで前月分をほぼ吐き出したことなります。ナスダック総合に至っては、8月の0.65%高から一気にマイナスに沈みました。

 

弱い米経済指標を受けてリセッション(景気後退)懸念が高まったことや、今や株式相場の中心となった半導体エヌビディアが急落した影響を受けたようです。投資家の不安心理を示すVIX指数も前週末の15.00ポイントから20.72ポイントに上昇しました。

 

年初来の上昇率はS&P500とナスダック総合それぞれが20%を上回っており、大騒ぎすることではないかもしれません。しかしながら翌日の日本株が暴落したように、金融市場はリスク回避ムードが一気に広がりました。

 

BTC、無視できず・・・

 

株式市場の値動きを取上げたのは、暗号資産にとっても無視できないからです。今や既存の金融市場の枠組みに取り込まれたと言えるビットコイン(BTC)は、他リスク資産の動向に左右されることが多々あります。

 

地合い弱いまま8月を終えたBTC相場にとって、株の軟調さは打撃となりました。

 

こういう時に限って、弱気な記事が目につきます。

「ビットコイン、悲観的シナリオでは米利下げ後に20%下落の可能性・・・」コインデスク

「ビットコイン、11万ドル上昇の前に4万ドル以下の下落か・・・」コインテレグラフ 


「仮想通貨投資商品 先週には3億500万ドルの流出・・・」コインテレグラフ

 

あの人の考えは今・・・


米投資番組「Mad Money」の人気司会者で、ジム・クレイマー氏という世界でも指折りの著名な金融評論家がいます。このクレイマー氏、ビットコインの見通しについて頻繁に意見を変えることで知られています。


あるXの投稿によれば、クレイマー氏はBTCや暗号資産に対してベアリッシュ(弱気)転じたようです。


実は悪い話というわけではありません。


というのも、暗号資産について彼の予測は外れることが多いと言われています。自信満々で話すため外れた時に目立つのかもしれませんが、彼の発言を逆指標として利用するトレーディング戦略もあります。


相場格言「曲がり屋に向かえ」が働くか、注目されます。

この連載の一覧
第112回「ビットコイン、伸び悩み ファンドから資金流出 昨年の暗号資産詐欺のトレンドは?」
第111回「ビットコイン、夏バテか? 残暑も厳しく 曲がり屋とされるあの人は」
第110回「ビットコイン、上値トライは失敗 チャットアプリ騒動が影響?」
第109回「暗号資産税制、隣の芝は青く見え過ぎた 1年以上保有すると・・・」
第108回「ビットコイン、米インフレ減速も上昇の勢いは・・・相場って難しい 米投資銀行が現物ETFを所有」
第107回「ビットコイン、夏バテ気味 リスク回避の流れに逆らえず」
第106回「ビットコイン、失速するも月間ではプラス維持 トランプ氏がビットコイン大国を掲げる」
第105回「ビットコイン、分散化が強さ 米大統領選の影響はより不透明に」
第104回「ビットコイン、大幅反発はトランプ氏のおかげ? イーサリアムもついに!」
第103回「BTC、2月以来の安値更新 独政府やMt.Goxなど売り材料目立つ ただし一巡後は持ち直す」
第102回「ビットコイン、半値戻しまで 日本の投資家は暗号資産に興味あり?!」
第101回「ビットコイン、週明けに売り強まる マウントゴックスがついに?!」
第100回「ビットコイン、ダブルトップ形成で下落?! アルトコインの影響も無視できず」
第99回「ビットコイン、対円では最高値更新も・・・ 米イベントで右往左往」
第98回「ビットコイン、ハッキングもなんのその こんどは豪とタイが!」
第97回「ビットコイン、占有率が下がり気味・・・ 現物イーサETFの取引は?!」
第96回「ビットコイン、対円では最高値更新 ETHもついに?!」
第95回「ビットコイン、弱い米指標が助けに?! ウィスコンシン州がお買い上げ」
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
第58回「ビットコイン、売り買い材料が交錯 あのトランプ氏も心変わり?」
第57回「リップルにつれ安、8月のビットコインは?そして6カ月後までに・・・」
第56回「ビットコイン、400万円台維持 ネガティブニュースも跳ね返す」
第55回「ビットコイン、ゴールドのように羽ばたけるか ただしETFはもう少し先かも?」
第54回「Simple is Best、相場は単純に考える ところでBTCが上がらない理由は?」
第53回「ビットコイン 円高の影響、分かれたヤツは元気」
第52回「ビットコイン、対円にしました!口座開設はもうお済み?」
第51回「現物ETF 承認への期待大! ただし一旦落ち着く必要も・・・」
第50回「ビットコイン、救世主が出現! 現物ETFへの期待高まる」
第49回「BTCの占有率上昇、ただし市場が盛り上がっているわけでは・・・」
第48回「ビットコイン SECの圧力はちょっと違う、底打ち感も?!」
第47回「ビットコイン 5月は失速、でも今年中には大幅上昇?!」
第46回「ビットコイン 動かず、過去2回はその後に大波」
第45回「G7は規制強化 交換業大手はカナダから日本へ」
第44回「ビットコイン 4カ月連騰、手数料高騰が懸念?」
第43回「ビットコイン 冬は終了?欲張り過ぎには要注意」
第42回「イーサリアム 待ち時間は延びる、BTC 10カ月ぶりの高値をつけるも・・・」
第41回「ビットコイン 約10カ月ぶりの高値、信じる者は・・・」
第40回「リップル 3月は元気いっぱい、裁判の終わりが見えた?!」
第39回「当局の圧力にも負けず、BTC買い衰えず」
第38回「ビットコイン 時価総額はメタ超え、強欲な感じも・・・」
第37回「まるでジェットコースター、ビットコイン 代替資産としての位置づけも」
第36回「ビットコイン とんだ雛祭りに、懸念材料は複数残る?」
第35回「ビットコイン 売り持ちファンドに資金流入、投資家の懸念を反映」
第34回「昨年6月以来の高値更新、ビットコインの上昇要因を探る」
第33回「ビットコイン とばっちり食らう、PoWには関係なし?」
第32回「ビットコイン、2月も底堅い クリスマスまでには?!」
第31回「イーサリアム、マージから4カ月半 伸び代あり?!」
第30回「悪いニュースに反応せず、アノマリーもあったとは」
第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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