暗号資産ウォッチャー これに注目!

第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」

年初から荒い値動き、話題の中心は・・・


代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は2024年1月10日20時時点では661万円台と、前回のコラム執筆時(12月27日23時半過ぎ)から約7.5%上昇した水準で推移しています。

 

昨年のBTC円は217万円付近からスタートとし、結局176%の上昇率を記録して終えました。2024年元旦の日本時間9時(UTC、世界協定時刻0時)は599万円前後から始まり、そこからだと既に10%の年初来騰落率です。


 

※BTCと他商品の上昇率の比較、Trading Viewより

 

底堅いビットコイン相場ですが、じつは年初から結構荒い値動きとなっています。市場の話題の中心は昨年後半と変わらず、米大手運用会社が相次いで申請した現物ビットコイン上場投資信託(ETF)に関してです。

 

3日には、米証券取引委員会(SEC)が主要な証券取引所関係者とミーティングをしており、10数件ある現物ビットコインETF申請の一部、または全てを承認しようとしている前向きな兆候とする記事も見受けられました。

 

「SEC, stock exchange officials meet ahead of potential spot bitcoin ETF approval」米FOX BUSINESS

(SECと証券取引所の関係者が、スポットビットコインETFの承認に先立ち会合を開く)

 

しかしながらこの日、BTC円は645万円付近から590万円割れまで大きく値を下げてしまいます。暗号資産サービスプロバイダーが、SECは今月、全ての現物ビットコインETFの上場申請を却下すると予想したことがきっかけのようです。

 「SECはビットコイン現物ETF申請を却下すると予想:マトリックスポート」コインデスク

 

理由の1つとしてはやはり、ゲンスラ―SEC委員長が米国における暗号資産を容認していないことを挙げています。


 


現物ビットコインETF、老若男女も?!

 

BTC相場は3日に下落したものの意外とアッサリと切り返し、対円では5日に640万円前後まで回復。数日以内に現物ETFが承認されるとの期待感は根強かったようです。


「ビットコインETFは莫大なビットコイン取引の火付け役となる」コインデスク

 承認されると暗号資産市場に投資資金が殺到するとの見方を示す記事です。老若男女の一般投資家からの需要があり、ETF発行者はビットコインの購入に追われるだろうと述べています。

 

ETF販売に向けて発行元も、資金をより多く集めようと必死なようです。

「ビットコインETFの「フォームS-1」最終修正が提出される」コインテレグラフ

 取引手数料を申請当初より引き下げる修正案が、複数の資産運用会社からSECに提出されたとしています。現物ビットコインETFを巡る手数料戦争が始まったようだ、と記事で言及されています。

 

フェイクニュースで右往左往、待つのが得策?

 

10日の日本時間早朝、670万円を超えたところで推移していたビットコイン(BTC)円は一時690万円まで一気に値を上げました。きっかけは、米証券取引委員会(SEC)のX(旧ツイッター)アカウントで「現物ETFを承認した」と投稿されたことです。

 

しかしその後、コメントはアカウントが乗っ取られたことによるフェイクニュースだということが判明し、BTC円は650万円付近まで急落。

「米SECアカウントに不正アクセス-ビットコインETF承認と偽投稿」Bloomberg

 

もっとも、承認が却下されたわけでもないため、一巡後は再び底堅い動きとなっています。

※Trading Viewより


一連の動きでは、買った人も売った人も痛い目にあったようです。以下の記事では、約5000万ドルのロングと3600万ドルのショートが先物市場で清算されたと述べています。

 「Fake Bitcoin ETF Approval Tweet Causes $90M in Liquidations」CoinDesk

(偽のビットコインETF承認ツイートで9000万ドルの清算金発生)

 

やはりポジションは回転させず、買ってじっと待つのが良いのでしょうか。

「マイクロストラテジー、ビットコイン上昇で2024年にすでに約8億ドルの含み益」コインテレグラフ


※追記(1月11日10時30分)

日本時間11日早朝(米10日夕方)、米証券取引委員会(SEC)は現物ビットコインに連動する上場投資信託(ETF)11本を承認したと発表しました。一部ETFは米11日から取引が開始されると見込まれています。ビットコイン(BTC)円は日本時間8時台に695万円まで上昇し、その後利食いの売りで680万円割れまで下押ししています。

この連載の一覧
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
第58回「ビットコイン、売り買い材料が交錯 あのトランプ氏も心変わり?」
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第49回「BTCの占有率上昇、ただし市場が盛り上がっているわけでは・・・」
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第47回「ビットコイン 5月は失速、でも今年中には大幅上昇?!」
第46回「ビットコイン 動かず、過去2回はその後に大波」
第45回「G7は規制強化 交換業大手はカナダから日本へ」
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第42回「イーサリアム 待ち時間は延びる、BTC 10カ月ぶりの高値をつけるも・・・」
第41回「ビットコイン 約10カ月ぶりの高値、信じる者は・・・」
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第36回「ビットコイン とんだ雛祭りに、懸念材料は複数残る?」
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第33回「ビットコイン とばっちり食らう、PoWには関係なし?」
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第31回「イーサリアム、マージから4カ月半 伸び代あり?!」
第30回「悪いニュースに反応せず、アノマリーもあったとは」
第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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